白衣の同級生

白衣の同級生

 手術同意のサインをするか? 
 しかし万が一、失敗ということはないのだろうか?
 子供の頃からヤンチャで怖いもの知らずだった俺だが
 手術をするのは、さすがに不安だった。

「心配いりませんよ」看護師が言った。
「平崎先生は心臓外科の名医なんですよ」
 紹介された白衣の医者は静かに会釈した。
 ふと、医者の顔と名前が記憶のどこかに引っかかったような気がした。

 そして手術当日。
 手術室で麻酔注射を打たれた俺の耳元で、心臓外科医が囁いた。
「覚えてないんでしょうね? 小学校で同級生だった平崎ですよ」
 なんとなく記憶が蘇ってきたが、うまく言葉にできなかった。  
「苛めた側が忘れても、苛められた側はいつまでも忘れられないものなんですよ」
  麻酔で意識が遠くなっていく俺の目に、
  同級生の心臓外科医がマスクの下で笑っているように見えた。
(了)

白衣の同級生

白衣の同級生

ふと、医者の顔と名前が記憶のどこかに引っかかったような気がした。背筋が寒くなるミニホラー。

  • 小説
  • 掌編
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-02-22

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