社長なんて
「で、話ってなんだ?」
いつもの居酒屋で同期の真田と飲んでいた。
「実はビックリさせたい話がある」
真田が二ヤリと笑った。
「子会社社長を、希望する若手社員から選ぶって話は知ってるな?」
「ああ」
「応募して最終選考に残った」
「えっ!」
真田は確かに仕事ができるが、まさか社長とは――。
驚く俺の様子に真田は満足気だった。
「今日人事部長が漏らしてくれた。九分九厘決まりだ」
勝ち誇ったような顔で真田は続けた。
「やっぱり男はさ、頂点を目指すべきだろ?」
数日後、子会社社長が発表された。
しかしそれは真田ではなく、彼の元部下の高松だった。
その夜、居酒屋で俺は真田の悪酔いにつき合わされていた。
「社長なんてさ、想像するより給料安いんだぜ。
責任ばかり重くて、いいことなんてないんだ。
だいだい社長なんて・・・・・・」
真田の話はその後も、延々と嫌になるほど続いた。
(了)
社長なんて