呼んでくれますか。

様々な存在がひしめき合う街中で
様々な名詞が呼び交うこの世界で

僕は一体何なのだろうか。

僕は存在しているかな。

今日も僕はするりと人の間をすり抜ける。

あたたかな。

___春

僕が一人ぼっちで生まれた日

僕には居場所というのがないのです。

「ねえねえ!遊ぼうよ!」
「うん!いいよ! 玲くん今日は何しようか!」

今日は玲(れい)くんが手を引いて
いつもの川原にいったんだ

玲くんはいつも僕を連れ出すんだ
かくれんぼ 鬼ごっこ サッカー バドミントン

色んなことを玲くんから教えて貰った

「明日は、どうしようか!」

僕は明日も玲くんと遊ぶんだ
僕の手と違って暖かいこの手を握って帰るんだ



でも、ぼくには帰る場所がないのです。
ふらりふらふら、また朝を迎えるんだ

色んなものを通り抜けて 人の間を通り抜けて

夜の街をビルから見下ろして 朝日を見るんだ

玲くんはまた僕を見つけてくれるんだろう
なぜだか場所がわかる玲くん

今日は玲くんを迎えに行ってみようか!
きっと、彼は笑って手を引いてくれるのだ



「また明日!!!」

その言葉に 絶対なんてないんだ

玲くんのおうちはひんやりしていたんだ。

真っ黒に塗りつぶされていたんだ。

その中にまっしろな綺麗なところに
玲くんは寝ていたんだ。


今日はどこにいこうか?
川原にする?
それとも、初めて出会ったあのビルにする?
あと、公園もいいよね



"「明日はなにしようか!」"


「玲くん、またあの公園にいこうよ」


ブランコ 砂場 上り棒 すべり台 。


ぼくの後を点々と地面が水玉模様を作り出す
止まらないんだ
この素敵な地面の模様をきみに。

いつまでも公園に降り続いた雨。

玲くん、玲くん、。僕はまた明日も待ってるからね。


あたたかい手の玲くんは
今日はなんだか冷たかったんだ。

記録

___夏

僕達の冒険の記録は
太陽に焦がされたそんな日

今日も今日とて、熱い……
僕は今、とある学校のプールに向かってます

「あーづーいー」
なんでこうも暑いんだろう ふざけてる

「もう無理 帰りたい」

いや、帰るのもめんどくさい
というかプールのが近いや。あつい。


僕がなんでこんな日に
プールにむかってるのかというと。


「よぉ!やっと来たかー!おせーぞ!」


こいつのせいだ。


「あー、あづ。ひっつくな よっかかるな」

「お前ってひんやりして夏には最適だよなー」
人の話をききやしない。

「あ、爽(そう)!あいつきたー?」
「おう!こいつほんと天然冷却。ひんやりー」

……あちぃー

爽(そう)と要(かなめ)のせいで僕は
こんなとこに来ている

……爽やか の 爽 のくせに 全然爽やかでも
なんでもない、むしろ暑苦しい

「あ、おまえ今すげー失礼なこと思ったろ」

ついでに鋭い。

「あはは、そりゃ爽がそんなあつくるしーくひっついてりゃ、思うだろ! それとも……

ま、まさか ソッチの!!!(笑)」

「ちげーよ!」

要はちなみに女の子だ。
でも正直言ってしまうと、女と思えな……

シュッ

「ははっ 何かあたしに言いたいことあんの?」

あぶねー、顔の横すれすれに拳が
いつの間にかきていた。

「なんでもないでーす。」

「相変わらずだな、要」

別に僕は彼らと同じ学校というわけではない
そんな僕がこいつらに会ったのは
水の透き通った綺麗な川原だ。

「おし! 今日はこいつふまえて泳ぐぞー!」
「っていうことで!」

「「おりゃーああ」」

僕の体が傾いた そしてきらきらと光る水面に

「っち。 そーはいくか!」

どーせ落ちるなら

グイッ「「え?」」


ざっばあああああああん


液体の中でもがく僕ら
手の引っ張り合いだ

「げほっ」
「はぁ、はぁ」
「ざまーみろっ」

「ちょ。お前、卑怯だぞ!」
「あたしまで落とすか!」

「へっ 落ちるなら一緒のがいいとおもってな!」

ま、単純に落としてやろうと思ったけどな。

「ちくしょー、やられたー」
「ぷっ ほんと、あんたにはやられたわ!」


空に散らばる光のつぶ
太陽に反射していくつもの色を織り成す水面

「明日は、森のとこの神社いこうぜ!」
「あー、確かに涼しいし!いいかもね!」
「神社とか、しぶいなー」

まだ始まったばかりなのにもう明日の話


頭からすべて水に濡れても気にしない
髪の毛からしたたる雫は
あの爽やかからかけ離れた爽でさえも
きらきらと輝かせ
女らしさもないあの要を
別人のように女の子らしさを感じた

バシャッ
「「お前、今失礼なこと考えただろ!」」

「けほっ 二人でそれはないだろー!」
どうせ事実なんだし

また新たに空に光のつぶが飛び交った


……水面が赤とオレンジに染まる頃に
僕たちも真っ赤に染まりながら
色のついた水から出た

「もう、びっしょびょだー」
「あー、楽しかった! 爽沈めたりすんの!」
「要! お前俺を殺す気か!!」
「爽のこと沈めちゃえばよかったのにー(笑」

僕たちの後ろにはいくつもの水跡
それは反射して僕たちの道の様に光っていた

「そんじゃ、明日は神社集合な!」
「おーけー!!」

明日は神社
今日はプール
昨日は公園
一昨日は爽の秘密の場所
1週間前は遊園地
2週間前は川原

僕たちの記録は太陽に焦がされた
何も無くなった訳じゃない
焦がされた記録は太陽と一緒に輝いたんだ


神社の次はどこに彼らと行こうか

帰る場所はない僕だけど
集まれる場所はある僕なんだ。



そして、神社で僕は待ってるんだ。

様々な色をなしてつもる

__秋

落ち葉のように
僕の願いも落ちて山となる


僕はまたふらりふらりと
あの学校のプールに来たんだ

もちろん、入ってるのは
茶色に枯れた葉っぱだけだけどね

「あー、さむ。さつまいも……買おうかなー」



もうすぐ冬がくるのだろう
雪は降るだろうか
そしたら、もっと寒くなるのか


「寒いのは やだなー。」

上着に手を入れて またふらりふらり


ふらりふらふら



焼き芋片手に足が向かったのは
もう誰も寒くて近寄らない
よりいっそう綺麗な川原



「「あー、さむ」」


……?


「あれ、こんな時期に
こんなとこくる人いんだ?」

少し離れたところに人が居た

「そーいうあなたも、もの好きだね」

なんとなく。年も近いだろうと感じた

そして、なんとなく。懐かしい



「なぁ。なんであんたはここに来たの?」
「悪い? 何となくだよ、何となく」

そう、なんとなく なんだよ。

「そ。まぁそういうあたしもか。」

ここにきて相手の性別がはっきりした
別に僕が目悪いとかそんなんじゃなくて
全体的にボーイッシュなんだよ わかりずらい

「あ?今女だったのかって思ったな?」

「……ははは。……睨むなよ」

「帽子の中に髪の毛しまってんだよ、ほら」

心外だとばかりに、帽子をとったそいつ
秋の色とりどりの背景にとてもはえる黒髪

「へー、結構違うんだ?」
「まぁね! てかこれでもだめだったら……
完璧に飛び蹴りしてたわ。」

なんでこう、僕の会う人は暴力的なんだか…

「立ってないでお互い座らない?」
「あー、そうだね。よいっしょ」

川の近くで二人して腰を下ろした

「今更だけど、焼き芋おいしそう!」
もう、下さい とばかりに見てくるもんだから
仕方なく口をつけてない反対側を割ってあげた

「普通、初対面でそれ言うか(笑」
「うるさいなー、……うん、うまい!」

もごもごと口を動かしながら川を見つめる

無言なのに、初対面なのになんだか居やすいんだ


「ね、あたしとどっかで会ったことある?」
「……新手のナンパ?」
「……あんたナンパするならそこらの犬ナンパする」

「「……ぷ。はははは」」

なんだか馬鹿らしくなった

「んで、さっきの答えだけど
多分会ったことはないと思うよ」

僕には定位置というものもないからね。
ほとんど一度きりの場所のが多い

「そっか、でもなんか懐かしいんだよなー」

どこか遠くを見てる彼女を見て
僕もなんだか懐かしい気持ちになった

「僕もそれ思った」
「おおー、すごい偶然ー」



そう、なんとなく なんとなく
つらつらと話していたんだ

寒いはずなのに

なんだか暖かかったんだ


「さて。そろそろ帰ろうかね! ほれっ」

茜色に二人で染まり
多くの赤トンボが飛び始めた時
不意に彼女は立ち上がって
手を差し出してきた

「普通、逆じゃない?」

そんなの気にするなー と笑いながら
僕の手をとった

「うあー、つめたー!」
「悪かったな! あんたは人間カイロだね」

繋いだ手は、なんだか熱く感じた
そして、やっぱり懐かしくて…

離れた時にとても寒く感じたんだ


「そうそう、あたしはね!
蓮華(れんげ)ていうの!」

突然の自己紹介

「そんで、あんたの名前は!」

ビクッと少しだけ反応してしてしまった
名前を聞かれるの自体、久しぶりだったんだ

「……無い…いや、内緒(笑」

「そっか、 いつか教えてね!!」

夕焼けに負けないくらいの
明るい笑顔

でも、僕には教える 名前 が無いんだ。

「いつか、ね」

「それに!あたしだけ教えるとかなんかいやだ!」

「意味わかんないし」
「とりあえず、教えたんだから!呼べ!」

命令かよ。


すっかり夕日も地面に吸い込まれる頃に
やっと僕らは動き出した

「んじゃ、また会えたらねー!」
「どーせ明日も蓮華いそうだけど」
「あんたもな!!!」


僕らの影はどこまでも伸びていった


まだどこか懐かしさを感じながら手を振った


秋の葉が色づく様に、
僕の中で今まで無かった色が着いた
その一枚のオレンジに染まった葉は
いつか、落ちていくのだろう


僕に名前をください。


願いの山となり積もる

僕のねがい

___冬

僕の中で積もる光(ゆき)
もう、静かに過ぎてゆくはずだったのに
溶けることのない冬の日



もうすっかり街も真っ白になって
前よりも寒さが厳しくなった

「あああ、寒いー、何度も思うけど
冬なんて、寝ていたい……」

ふらりふらふら

本当に秋とか冬とか僕にとって厳しすぎる

「あー、寒い」

それでもなんとなく向ってしまったのは
もう随分と黒ずんで
校舎もぼろぼろになった学校だ

あのプールはもう夏でも使われないのだろう

「あー、もったいな。」
プールは荒れてひびまで入っているけど
それでも今は雪化粧で真っ白になってる

こういう時に時間の流れを感じる

「神社なんて今ないもんなー。」

校門を出た所で人が佇んでた

「ん?なんか俺に用?」
「あー、いや なんでもない」

それだけ言ってすれ違い
去ろうとした時

「なぁ、お前ここの卒業生?」
「違うよ」
「そっか、悪かったな!気にしないでくれ」

ほんの数分、いや、数秒の会話

僕はまたふらりふらふらと
イルミネーションで着飾った街を通った

変わったものもあれば
変わらないものもある

「さむっ」
マフラーに顔を埋める

心に残る 何か を気のせいとして。
無かったものとして
ぼくはまたするりと、人の間をすり抜ける

公園も真っ白になっていて
何もないんじゃないかと思う

そこにまた人が居た

ただ僕の様にぼーっと公園を見つめる女の人

「ん? あんたもぼーっとしに来たの?」

気づいたときには彼女はこちらを向いていた

「今日はたまたまだよ」
「そっか。」
「あんたはいつも居るの?」
その人の横顔を見ながら問うと
こちらを向いて 困ったように笑った

「最近ね、なんとなく気になって」

そうしてまた公園を見つめる彼女
僕は別れの言葉を言ってその公園を離れた

あの公園は、要や爽がよく木登りしていた所だ
「……また久々に思い出したな……」


そう。あの公園も高い木が無くなって
僕の登った木も消えていた


ほんの少しのさみしさを
また、気のせいと思いながら


たどり着いたのは

また来てしまったのは

端に氷を張って 光を反射させる川原

「相変わらず、だね。僕も……」


さすがに冷たくて座れないけど
僕はただ、じっと光る川を見つめる


「なぁ、お前珍しいな!」

不意に声をかけられてびっくりした
暴れる心臓を抑えながら振り向くと
同い年くらいの男がいた

「なにが?」
「こんな寒いのに川原とか!!」

「それは、あんたもでしょ(笑)」

なんだか、少しだけ懐かしい気がした

「なぁ、名前なんてーの! 俺はね、里玖(りく)!」

「僕の名前はね、内緒」

相変わらず名前を持たない僕だから。

もう望みを忘れた僕

「ふーん。お前あのときも
教えてくんなかったよなー」

「は?」

人間違いってやつかな。うわー

「ったく。いつからこんなになったのか」
お兄さん、悲しい! とか良くわからない事を
言い出した里玖。

「いや、里玖と初対面だし」
うん、僕の記憶力そこまで悪くない

「まったく、ここまで言っても気づかないのな」

……? 僕にどうしろっていうんだ。

「いや、僕は…」
「玲(れい)」

……「は?」

「気づけバカ野郎! 玲だよ!玲!」
「……霊?」
「ちげーよ!!そっちじゃないっての!」

霊……じゃなかった 玲……?
昔ここで遊んだ、いつも暖かい手の…。
「…玲?」
「ん」

「いや、玲はこんな性格じゃなかった」
「おいおい、それはお前もだろう!」
「あー、お互い様か……てか何で…」

そうだ、玲なはずがない
ノリで忘れそうになったけど。

「ここに来て、お前見てやっとすっきりした
最近断片的な記憶が流れたりとか
そんなんしててさ、そんでここ来た訳なんだけど」

「前世っていうやつか、転生?」
「似たようなもんだろうな」

これだけ時間が流れればそういうのも
…そういう奇跡もあるのか

「あの時も最期までお前の名前呼べなかったし」
「いや、何ていうか ごめん。」

名前のない僕はやっぱり
関わるべきじゃなかったんだ。

「別にお前のせいなんかじゃない
俺はお前とここで遊べてすんごい楽しかった!」
「僕も、玲と遊んで楽しかった」

初めて、初めて手を繋いだんだ。
あたたかさを、くれたんだよ

「でも、俺はこんだけ見た目も変わったりしたし
確かに転生なんて有り得ない事に
なってるけど、それ以上に…お前は全く変わってない」

小さい頃の話のはずなのに
なんでこんなにもハッキリいえるのかが
僕は不思議だった

「何でそう思ったの?
僕達、結構小さかっただろ?」
「…蓮華。」

は?何であの人の名前が?

「…だーかーらー! ここで会った女も
俺だったんだよ!!」

少しだけ拗ねたように
そっぽを向きながら言った玲

「え、えええええ…2回も…しかも女…」

じゃあ、あの、懐かしさは、
ああ、なるほど。…なんかショックだ
「ショックだ」
「俺もだ。」

「それで、蓮華も玲ってことはわかったけど…」
「あの時会った時の姿、変わってないだろ」

そうか、蓮華と会った時にはもう。

「んで、お前はなんで名前を教えてくれないんだ
それに、変わらない事も」

「あー、まさか。転生とか玲とか
本当にびっくりした。」
「だから…」

まさかさ、言うなんて事になるとはね。

「僕はね、これ以上年はとらないんだ。
生まれた年が玲と会った年
それが僕の始まり……」

白い息を空に吐きながら呟く
一つ一つ伝えられるように。

「どうして僕が生まれたのかわからない
でも僕には帰る場所はないし
目的地も、無いんだ。
いくら子供といっても中身は少し発達してて
独り ていうのは理解してた。

そんな時にね玲が僕を見つけて
手をひっぱってくれたんだ」

「ああ、どこかのビル。
廃墟みたいなとこに遊びで入ったら
お前がぼーっと立ってたんだっけな」

玲は少し遠い所を見るように言葉を繋いだ

「うん。あの時はびっくりした」
そう、ぽつりと呟くと
玲も 俺もお化けだと思った と呟いた

「それで初めて、人の暖かさ知ったんだ
その後はお前と沢山遊んで…
それで……」

「俺は事故で死んだ。」
「ごめん」
「次謝ったらしめるからな!」

といって玲は笑った

「ありがとな。

……それからまたふらふらと過した。
僕はね、見えるけど 見えない存在なんだ」

「……幽霊てきな?」
「たぶん、違う
でも限られた人でしか見えないんだと思う
実体もね、ある様で やっぱり無いんだ
おかげで夏はあいつらに冷えピタ扱いされるし」

「あー、お前冷たいもんなー。
無いっていうのはわかんねぇけど」

「僕は基本的に人を通り抜けられるし
建物とかもすり抜けていくことも出来る」

ほらっ
と、近くの木に手を通す

「おお、まじか。
見えるから触れるのか!」
と子供の頃のように手を繋がれた

「相変わらずの冷たさだなー」

といって玲は離した

「で、そんな僕にも玲以外に仲良くなった
奴らとかいるんだけど、やっぱり
時間の流れ、というか。結局離れるんだよなー」

その時なぜか頬に冷たいものが伝った
なんでだろうか もう今更だというのに。

「僕は、きっとまた…見送るんだ…」
そう。楽しい時間なんてものはあっという間

「僕には、教える名前もないんだよ」
ここにきて、玲は少しだけ目を開いた
きっと教えてはいけない とかなんとかって
予想していたんだろう。

「僕ね一回だけ、本当に望んだ事あるんだ」

”名前が欲しい”

「玲に、名前聞かれた時にさ…思ったんだ」

”僕”を、呼んで欲しい

初めて思ったんだ

「でも、僕はみんなと、ちがうから。
だから名前がないんだ」

「なに、しんみりしてんだよ!」
冬の寒ささえも吹き飛ばすような笑顔でいった

「お前は今どうおもってんだ!」

今までの話なんて、ものともせず
笑って聞いてきた言葉に
心の中に積もった何かが少しずつ…。
何かが色づいて落ちていった

ストン っと中心に収まった



「僕は…。名前が、ほしい。

色んな人に呼んで…ほしい。

僕の…存在が、ほしい…。」

ずっと諦めていたんだ

仕方ないと

ずっと望んでいたんだ

僕を表すコトバを。


「じゃあ。記念すべき友達一号の俺が
名前付けてやるよ!!」
「…は?」

僕は犬猫じゃないんだかんな!!?

「ちょ、変な名前はや……」

「紬(つむぎ)」

「…………!!!」

僕は、犬猫じゃないけど。
「どうよ! 色んな時代を紬ぐ人、
色んな人を繋げる人!
ぴったりじゃね?」

……なんだかとても嬉しいかったんだ。


「つ、むぎ……紬……
うん、仕方ないからそうするよ(笑」

「相変わらず素直じゃねーなー
ま、改めてよろしくな! 紬 !」

その瞬間、何かが僕の中を通り抜けていった

それは何かを無くした
喪失感 のようで

それは何かに満たされた
幸福感 のようで

どくん

と心臓が脈うったんだ。

今まで仮だったものが
何かに変わったような、そんな感覚

ひたすらぼーっと、感覚をたぐり寄せてると

「おーい、大丈夫か?」
と、玲が手をひっぱった

これも小さい頃、よく玲がやっていた

懐かしいな、と考えていた時だ

「お、おい! お前! あったけーぞ!」
「え?」

よくよく片手を掴んだり
頬を触ったりしてみた

「あ、あったかい……」

さっきまで冷たかった僕の手は
玲や、爽や、要のように暖かかった

それを確認した途端に、涙が止まらなかった
なんで どうして なんて疑問よりも

名前をもらった嬉しさ

名前を呼ばれた嬉しさ

暖かな手の嬉しさ

”僕”という存在が初めて見つけられた嬉しさ

「つ、紬!泣くなって!」

「しょ、しょーがないだろ!」

涙は二人してくしゃみするまで
止まることは無かった

「ううー さむ! なんで冬の川原で3時間!」
「さみぃ、僕なんて頬とか何か固まってる!」

寒いはずなのに、なぜだか
とっても暖かかったんだ。

「なぁ、紬。もしかしたら俺の予想だけど
他のやつらも転生して……たり(笑」
「いや、まさかぁー」

「「あははは、まさかー」」

「ある気しかしねぇや。」
「そういえば、なんか懐かしいと
思うことはあったな……」

「じゃあ、会えるって!
俺もその友達にあってみてーし!」

「僕も、なんとなく会える気する
流れる時間の中でまた。」
「まー、とりあえずいいたいのは」

「「蓮華の時に恋愛とか
なんなくてよかったあああ!」」

川原で二人して笑った

「本当に、可能性としては無いわけでは
無かったわけだろ?」
「いや、僕は玲みたいなのタイプじゃ……」
「ちげーよ! 女だった時だから関係ねぇし!
記憶なかったし!」

ああ、記憶なくても……女らしさの無いとこは
玲の影響だったんだなあ…。

「きっと、いつまで経っても友達だったよ」

なんとなく、そんな気がしたんだ。

「なぁ、改めて今回は 里玖 として
よろしくな!」
「ああ、こちらこそ!またよろしくな」


時間が許す限り。


またバカ騒ぎしようか。


「今度はどこいくか!!」


積もった雪は溶けて
新たな命を産んでいく

一番さむくて
一番優しい冬の日のこと。



"-end-"

呼んでくれますか。

お疲れ様です。
まろMAYUです!

初めて字数で 短編 いきました!
ここまで目を通して下さった方に
ありがとうございます!

今回、分かりにくいところが
あったと思いますが 解説やらはしません
補足すると、あの子の寿命は永久的でした
みんなが転生をしてしまうくらいの年月
とてもとても長い時間だったのです。


春は始まりの季節というけれど
独りで進む寂しい季節だと
私は思ったので、なるべく
冬を暖かい季節として扱ってみました!

この子に存在は無かったのです
名前というのはとても大切で
個々の存在を表すものだと
考えたのでこの空想物語を書きました!
少しでも気に入って頂けたら幸い。
あの子の物語はこれからですが、
皆さんがそれぞれ ハッピーエンド
やバットエンド の物語想像してください


最後に、文頭の太字を繋げると
少しだけコトバになるようにしました
【暖かな記録
様々な色をなしてつもる僕のねがい】
この物語そのものを表す言葉になればと
思いながら書きおわりました!

長くてごめんなさい!
ありがとうございました!

呼んでくれますか。

あなたの名前はなんですか? 僕には名前がありません。 __ 「名前、なんていうの?」「秘密だよ」 誰かに呼ばれたくて。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-02-21

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. あたたかな。
  2. 記録
  3. 様々な色をなしてつもる
  4. 僕のねがい