家出少女

家出少女

主人公:鈴木沙紀

未完です。ぼちぼち書いていきます。

 私はその日、家出をする事に決めた。
理由は親が嫌いなのではなく、何も出来ない自分にうんざりしたからである。
特に自慢できる特技もなく(関節は鳴らせる)、友人も多いわけじゃない。いや、少ない。
性格が捻くれていて人が寄ってこないのだ。人と顔をあわせるとつい睨んだり嫌味を言ってしまう。
学校の成績も中の下。家には、勉強の出来る姉と弟が居る。この家族にはこの姉弟で十分じゃないか。
姉や弟が家に帰ると、テストや成績のいい結果の話題で盛り上がるが、私の成績は褒められるものではない。
あまりに同じ事を繰り返しすぎて私は気付いてしまったのだ。この家に自分は不必要だ。
居なくなっても、私も先月からもう15歳だ。そこまで心配はされないだろう。きっと、ギリギリ一人で生きていける年だ。
そうして、私は家出する今日の晩に備えて支度をする事に決めた。

 人にばれないように家出する方法を考えた。とりあえず学校に行って、・・・家に帰らなかったらいいじゃん。
うん、それでいいじゃん。よし、決定だ。
学校に持っていく物の中にひっそりと携帯、PSP、緑色のヘッドホンを隠して入れた。
これがないと流石に生きていけない。自分でも子供だと思った。
いつも通り何も変わらず、普通に学校に行くのだ。帰り道から家出少女なのだ。
きっと最後の中学校だ。楽しく終わりたい。
短く行って来ますと言って、返事が返って来ないまま何を思ったかエレベーターではなく23階の階段から駆け下りていった。


 学校もすでに6時限目となった。しかし、どうもバッグに入ってる携帯やpspが気になって仕方が無い。
なんといっても、学校に持ってきてはいけない物なのだ。
入っていたら怒られるものベスト3には入るであろう携帯とゲームを同時に持ってきているのだ。
バッグを探られる事なんてないのに、変に緊張してしまう。
 「鈴木、おい大丈夫か?」
 先生の声に体全体が跳ねるほど驚いた。咄嗟に声がした方を向くと、自分とは違う方向を向いている。
先生が見ている方向には同じクラスの鈴木アキが居た。名前が似ていると昔から私とからかわれていた子だ。
 「・・・いじょ、ぶ、です」
 クラス全員が大丈夫じゃないだろ、と心の中でつっこんだであろうその返事に、先生は保健室に連れて行くことに決めたらしい。
 「誰か、連れて行ってやってくれ」
 皆が先生から目をそらしたのが分かった。そういう私も、そらしたのだが。
 「おい、鈴木が行けよ。名前にてるんだしさ」
 クラスのお調子者の言葉にクラスメイトが笑った。
いつものパターンだ。
嫌だけどもうこの空気になると行くしかない。
私は鈴木アキの元へ行き、保健室につれていってやることにした。


 保健室は少し教室から遠い。早く終わらせたい私はなるべく早歩きで目的地へ向かう。
横でぐったりしている鈴木アキは、クラスの中で一番暗い女子だ。顔立ちはいいのだが、
いつも無口だし、負のオーラを醸し出している所為で一部の女子に虐めを受けている。しかし成績は良いのだ。
自分と似ている名前の人間が優等生だと、しかも顔が良いとなると少し嫌な気分だ。

 「・・・すずきさん」
 ん?何か聞こえたような気がした。ふと鈴木アキの方を向くと、立ち止まっている。
 「何やってんの。早く。」
 呼んでもそこから動こうとしない。ふざけているのか?それとも歩けないほど具合が悪いのか。
 「ちょっと、どうしたんって。おい。早くって。」
 強く言うと、ゆっくり歩き出した。それでももじもじしていて、何か言いたそうだ。
 「・・・すずきさ、あの、すいません、わたしかえります・・・・・」
 
 あ?

 怖がらせようとして出した声も吃驚し過ぎて上手く出なかった。
鈴木アキはというと、また小さくすいませんと言って具合が悪そうに正門の方へと歩き出した。
 「ちょっと!待ってって!おい!」
 つい肩を強く掴むと、鈴木アキが酷く挙動不審になった。なんか、今の状況が全然把握できなくてムカムカしてきた。一発コイツを殴ってやろうかと思ったけどそれはちょっとないな。
 「帰って良いけど、ちゃんと説明してよ。なんか意味不でムカつくんだけど。」
 「えっあ、えっとあのー・・すいませ、とりあえず、えっとあの、えっと・・・」
 「キョドってんじゃねーよ、早く。」
 「わ、私もう家に帰らないつもりで学校に来てて、今がチャンスだから、もうどこか遠くへ行こうかと・・・」
 鈴木アキのと言葉にキョトンとしていると、ハッと顔を真っ赤にして彼女は言葉を続けた。
 「あ、す、すいませんっ、!イキナリこんな事言っても意味分からないですよね、・・・」
 「いや。なに、家出ってこと・・・?」
 ぽかんと口をあけていた自分に気付き、マヌケな顔を無理矢理戻した。
 「そ、そうです・・・それで、あの緊張しちゃって、お腹が痛くなって・・・すいませんでした」
 そういいながらお腹をさする鈴木アキ。美容院に行ってないのか?髪の毛が異様に伸びている。髪をもっとちゃんとしたら、見た目の暗さも減少するのに。綺麗に髪を結んだら、それはもう可愛い事だろう。いや、こんな関係ないことばかり考えているのは何故だ。つまり鈴木アキは自分と同じことを考えていたと。
 「いや、私も今日家出するつもりだし。」
 「え・・・」
 鈴木アキの表情が一瞬明るくなった気がした。同志が居たとなるとやはりどんな人間だとしても嬉しいのだろう。それとも、これを切欠に仲良くなれると思っているのか?
 「あ、あの、一人では心細くて・・・い、一緒に失踪、し、しませんか、私と」
 そんなのごめんだ。と言いたい所だが、実は私もかなり不安なのだ。朝は勝手に盛り上がっていたが、その時が近付くにつれて段々罪悪感や不安を感じるようになってきた。それを考えると、コイツと一緒に行動した方が共犯者が居て罪悪感など消えていくだろう。更にコイツは優等生だ。なにかと役に立ちそうだ。
ここまで考えるのに約0.5秒。私の答えは既に決まっていた。
 「いいよ。これからよろしく。」

家出少女

家出少女

未完です。ぼちぼち書いていきます。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-11-02

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