テーマ短編 失われし芋鳩
この作品は、とある場所でテーマを募り、集まったものを強引に使用して短編小説を作ろう、という企画により制作したものです。ネタ、手抜き等々ございますが、予めご了承ください。
お題は「 バナナ王国 カニの王様 幸福 悲劇 希望 山芋の鳩 」です。
楽しんでいただければ幸いです。
盗ノ章
本来、夕飯というものは、家族が仕事や学校から帰宅し、全員で食卓に並ぶ料理をつつきながら、楽しく会話を交わす、いわば「一家団欒」ときである。しかし、ディナーで、しかも、カニの王様とも呼ばれるズワイガニを前にしているにも関わらず、バナナ王国国王、ゴリンラァを取り巻く雰囲気はとても重苦しいものであった。それは周辺にいた近衛兵が緊張で失神するほどであった。その雰囲気の元凶、ゴリンラァはそれまで閉じていた口をゆっくりと開いた。
「我が王国で大切に保管されていた宝物、山芋の鳩が、何者かによって盜まれた。これを解決できる者はいるか。」
その一言に、その場を取り巻く雰囲気に更に重圧が増す。そもそも、山芋の鳩を保管していた宝物庫は何重にも張り巡らされた防御結界と探索魔法で本来抜け穴などというものは存在しないはずである。しかし、敵はそれをやすやすと突破し、少なくとも数百人の同僚を撃破しているのだ。その場にいる全員が沈黙するのも無理はない。国を守りたいという意志と、我が身を危険に晒したくはない、という相反するものを内に抱え、兵たちは葛藤していた。彼らの心が不安と恐怖によって支配され、国が内部から崩壊するのは、もはや時間の問題であった。しかし、その不安を、恐怖を、彼らが最も信頼する国王の言葉が打ち破った。
「誰もいないか…。ならば私が行こう。」
その場にいた誰もが驚愕した。そして思い出した。バナナ王国が蜂起した頃、周囲の国から侵攻され、その度に滅亡の危機を迎え、そこで感じた絶望を。そんな時、いつも民の最後の希望となり、単独で傷ついた民を庇いながら戦い抜いた国王の姿を。兵士たちは思った。この人だけに重荷を背負わせるわけはいけないと。そして、こんな所で自分たちが諦めたことで起こる悲劇は絶対に民に押し付けてはいけないものなのだと。そして、兵士たちは口を揃えて言った。
「私達も行きます。行かせてください。」
と。それを見て、言葉以上の意思を感じ取った国王ゴリンラァは豪快に笑って答えた。
「よし、ならば共に行こう。我らの国の明るい未来へ。」
と。
黒幕はその話を聞いていた。
「ならば、相応の覚悟で迎えてやろう。バナナ王国の猛き者どもよ。」
その呟きは、周囲の歓声に呑まれ、消えていった…
次回予告!!
覚悟を決めたゴリンラァ達とその動きを影(?)から観察し、ほくそ笑む謎の黒幕!希望と絶望、惨劇と悲劇、信頼と裏切り、様々な思惑に呑み込まれそうになるゴリンラァたちは山芋の鳩を取り戻すことが出来るのか!
次回、迷ノ章 お楽しみに!
んなことあるかも!
テーマ短編 失われし芋鳩
いかがでしたでしょうか。
無茶振りが過ぎるんだよ、と、言ってやりたいレベルのお題で、だいぶゴリ押しにゴリ押しを重ねましたが、なんとか、形にできました。
こんなことをやってみるのもたまにはいいかもしれません。たまには。
アホらしい描写もたくさんあると思いますが、それも含めて楽しんでいただけたなら幸いです。
ゴリゴリにゴリ押ししたのであとがきも書くことがありませんね。というわけで、この辺りで筆を置かせていただきます。
では、またの機会に。