SS01 だカラ
女の子は、男の人が背負う大きなリュックの中味が知りたくてたまらなかった。
「あの中味って何かしら?」
「大きいよねぇ」
「大して重くはなさそうだけどな」
皆が指さす先を歩くのは、高さ、直径共一メートル超の巨大な円柱状のリュックを背負った男の人だ。
「ねぇ、ねぇ、この中に何が入ってるの?」
「失礼でしょ」母親が諌めるのも構わず、女の子は彼の腰の辺りに纏わり付いた。
足を止めて、目線を合わせるように屈んだ彼は、意味あり気な笑みを浮かべて背中のそれに目を向けた。
「知りたい?」
「うん」
「じゃあ、君にだけ特別に見せてあげる。だけど絶対誰にも話しちゃダメだよ」
彼は女の子が頷き返すのを確かめてから、後ろ手に伸ばした右腕でそっとジッパを引き下ろし、「どうぞ」と中を覗くように促した。
思わず声を上げそうになり、両手で口を塞いだ女の子。
彼は唇に人差し指を一本立てて、周囲に視線を走らせた。
「約束は守ってくれなちゃ」彼はジッパを戻しながら念を押し、呆気に取られる少女の頭をふわりと撫でた。
「なんでしゃべっちゃいけないの? なんで? なんで?」彼女にはまったく理由が分からない。
だって中味はカラッポで、何にも入っていないんだから。
すると今にも吹き出しそうな彼が耳元に近付いた。
「目には何も見えないけれど、中には”謎”が詰まってるんだ。
だから君も、他の人も皆、不思議そうにこっちを見詰めてただろう?」
SS01 だカラ