ABYSS BLOOD
天の叫(裂け)び プロローグ
100年前の話である。
人は魔術と科学を使い繁栄し、国と国による小さな争いがあった世界。
しかしそれでも多くものが大なり小なり、自らの幸せを掴み平和に生きていた世界。
だがそんな平穏は不吉な予兆とともに壊れ始めた。
この世界の天空の片隅に突如として巨大な黒い裂け目が生まれたのである。
いきなり現れたそれは世界のどこからでも見ることができ、それまで人間が生み出してきた魔術・科学そのどちらを使っても裂け目に干渉することができなかった。
その裂け目が現れて幾日が経った頃、さらに事態は急変することとなる。
裂け目から黒い雪が降り注いだのだ。
しかしその雪は決して降り積もることはなかった。
なぜならば黒い雪は地上に落ちたと同時に変異を起こし留まることをしなかったためである。
その姿は人々が古来から伝えてきた神話の幻想種や鬼などといったものに姿かたちを変え人々を襲い始めたのである。
人々はそれを『EF』と呼称し、以来その謎の存在と戦い続けることとなった。
『EF』との戦いに人類は苦戦しながらも生き延びていた。
だが黒い雪が降り注ぎ『EF』を生む空の裂け目が消えない限り『EF』が完全に消えることはない。
空に開かれた裂け目を人々は憎悪と畏怖の念を込めてこう呼んだ・・・。
―――アビス、と―――
ABYSS BLOOD