真っ赤なマニキュア

 いちばん積極的だったのは、小学生の頃かしら。授業ではよく発表して、答えるたびにほめられた。でも、それってとっても目立つでしょう?だからわたしは、普通に、みんなといっしょになろうとしたの。

 結局、わたしは人には言いにくい中学、高校時代をすごしてしまった。それでもなんとか大学に入ったわたしは、みんなといっしょを目指したがために失ったものの大きさに、少しずつではあるのだけれど気づきはじめていたの。一度気づいてしまうと、気になっちゃうものじゃない?そう。わたし、気になっちゃって。それでわたしは日々、人とちがうことを求めるようになったの。

 手はじめに靴を変えてみた。これは単なる偶然で、人とちがうことを求めて靴を買いに行ったわけではないのだけれど。気に入ったデザインの靴は4色あって、そのうちの2色で悩んでいた。ひとつは合わせやすい無難な色。もうひとつは爪先が黄色でほかが青の、ちょっと合わせにくいけれどおしゃれな色。冒険するのはやっぱりちょっとこわかったけれど、わたしは黄色と青の靴を選んだ。その靴を履きだしてからわたしは、自分で言うのもなんだけれど、とっても明るくなったと思うの。わたしはきっとみんなが選ばない方の靴を選んで、しかもそれを履きこなしているわっていう誇らしさが、少なからずあったのね。

次にお化粧を。アイシャドウは今までの地味な茶色なんかじゃなくて、まるで海の深いところのような青に。目元はリキッドアイライナーでぱっちり。口は深紅の口紅で。こんな風にばっちりお化粧したら、なんだかわたしだけおしゃれをしているような、特別な気分になったの。でもね、もっともっと、わたしは特別になりたかった。こんなものじゃないの。こんなものでは満足できないの。わたしがどれだけ我慢をしてきたと思っているの?靴やお化粧だけで、満足できるわけないじゃない。でも、どうすれば満たされるのか、わたしはわからなかった。

 ふと思い立って、マニキュアをぬった。吸い込まれそうな、挑戦的な赤。マニキュアって、手のお化粧でしょう?だから手を使うたびに見ることができる。これだ、と思ったわ。手を見るたびに、わたしは強くなれる。わたしを強くするものは、自信だったから。とっても嬉しくなっちゃって、爪を見つめながらふふっと笑っちゃうくらいよ。

 でもね、まだ、わたしは見せていないの。いちばん見て欲しい人にね。早く見せればいいじゃないって思うでしょう?じゃあ、片想いって言ったらわかるかしら。わたしったら、外見はとっても積極的になったのに、内見はとっても臆病なの。真っ赤なマニキュアが、そろそろ力を貸してくれるんじゃないかしらって、ちょっとだけ期待しているの。

真っ赤なマニキュア

真っ赤なマニキュア

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-02-17

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