僕の隣は変人です。

好きなところと言われてもよくわからない。

いいところと言われても正直考えてしまう。

じゃあなぜ彼女を好きになったのかといわれても、わからない。

気づいたときには好きになっていたから。


ただ・・・・自信をもって言えることがあります。



僕の隣の彼女は・・・・・変人です。

隣の席の女の子

「おはよう。花園。」


「・・・・・・・・・・」

「あ、あの・・・花園?」

「・・・今日はあなたとはお話してはいけないと星は告げているのです。」



ほ、星?

何で星が関係しているんだ?



「今日は何の遊び?花園。」


「・・・・・・・・星占い。」



星占い・・・・・

またなんか変なものに興味を示したな・・・


俺の名前は鳴瀬川 涼太

いたって平凡な高校2年生。

でもって・・・この今星占いによって俺と口をきいてくれないのが、同じく高校2年で、同じクラスの隣の席の、

花園 鈴里


ぶっちゃけ言って、『変人』

ふと気づくといつも何かをしていて、

正直言うと、オカルト好き。

でも本人は自分を正常という。



「で、なんで、俺と花園は話しちゃいけないの?」

「・・・・・私の星座は蠍座。貴方の星座は乙女座。今日の私達の相性は最悪。話せば私は今日返却されるテストの点が・・・」

「そりゃ俺の責任じゃなくて、花園の努力不足。」

「ギクッ・・・・・・そ、そんなことないのです。」



おいおい・・・

ギクッて・・・ギクッて声に出てたぞ・・・

ビンゴかよ・・・俺を巻き込むなよ・・・



「と、とにかく・・・私のテストの点が悪かったら貴方のせいですから。」



マジかよ・・・・



ぷいっとそっぽを向いてしまった花園にため息をつきつつ席に着く。

しばらくすると、一時限目の授業開始のチャイムが鳴る。



「えー、あー。うん。じゃあ古典のテスト返すぞー。出席番号順に取りこーい。」



"テスト"の言葉にピクッと花園が反応して


「ぅぅぅぅうぁぁあ・・・・・・・」



と頭を抱えて呻き出す。



「鳴瀬川。おぉ・・・中々いい点数じゃないか。」

「ありがとうございます。」



お。やったね。90点。


「花園ー。」

「ハッ・・・!?うぅ・・・」



ブスッとした顔で席を立ちテスト用紙を受け取りにいく。



「花園ー・・・先生は感動するよ。」


そう言って花園にテストを返す。


「・・・・・・」

「どうやったらそんな点が取れるのかと思うと・・・・」


悪かったんだな・・・。



「花園・・・何点だったの?」

「・・・・・30点」



ギリギリじゃん・・・・


「うぅぅぅ・・・」

「だ、大丈夫だよ花園。ギリギリ赤点まぬがれたし・・・」

「こうなったら・・・・あの先生をこの藁人形で・・・」

「呪うな!!!こ、古典なら俺が教えてあげるから。」



藁人形片手に怪しげな笑みを浮かべる彼女を必死でなだめる。


てか・・・・どっから持ってきたんだよその人形・・・。



「・・・・わかるのです。あの先生は私にとって不幸の象徴。出来ることならここで始末してしまいたいのですが。そうですか。わかりました。貴方がそんなに私に古典を教えたいと言うなら今回はあのものを見逃しましょう。」


「あ、ありがとう。」



あはははは・・・・


とりあえず良かった・・・のかな。


結局、その後も花園の藁人形大作戦は続き、俺はそれを止める。

その繰り返しだった。




「そんな・・・そんな馬鹿げた話があるというのですか・・・・」

「まぁ、仕方ないよな。花園。現実を受け止めろ。」

「・・・・・嫌です。おかしいです。なぜ貴方はそんなに点数が良いのに私は全て30点なのですか?・・・・わかりました。貴方が私の点数を奪ったのですね。」



いやいやいやいやいや!!!


「なわけあるかー!この結果は俺の努力の結晶だから!?」


「む・・・・・・。知ってますよ。冗談ですよ。本気にするなんてバカじゃないですか。こんな冗談猿でもわかりますよ。」


この小娘は・・・・・


「逆に、花園のそのテストは猿でも取れる点数だけどね。」


その言葉にピクッと花園は反応して



「ほぉ・・・・言ってくれますね。」



そう言って彼女が取り出したのは・・・・・


藁人形。



「すんません!全て俺が悪いです。猿は俺です。申し訳ございませんでした!」


あわてて土下座をすると、花園はふぅっとため息をついて、


「わかれば良いのです。では、私は帰ります。さよなら。」


「え?あ、あぁ。じゃあな花園。」



手を振るも彼女手を振るどころか振り向きもせずスタスタと帰って行った。

やっぱ変人だよ、あの子は・・・・


「きょーもおっつかれぃ!!涼太!」

「いって!!けほっ。武蔵。お疲れってなにが?」


後ろからど突かれて思わずむせそうになる。

こいつは俺の幼馴染の近江 武蔵


特徴は・・・・とにかくテンションが高い。


「何が・・・って!!あのポーカーフェイスちゃんのお世話だよ!!」


ポーカーフェイスちゃん?


「誰だよそれ・・・」

「ポーカーフェイスちゃんって言ったら一人しかいねっしょ!!!花園 鈴里のことだよ!」



花園?


「なんで花園がそんなセンスないあだ名なんだよ。」

「えー?だってあいついっつも無表情じゃん!!おまけに、オカルト好き。いつも変なことしてるし、ぶっちゃけ、頭おかし」


ダンッ!!!!


シンと静まり返る教室。



俺は気づけば机を叩いていた。


勝手に口が動き出す。


「花園は無表情なんかじゃないよ。ちゃんと花園見てない奴が、そんなふざけた名前つけてるほうが頭おかしいと俺は思うよ。」



「え・・・・あ、ごめん。涼太・・・」


俺は、何を言った・・・

まずい。これはあらぬ誤解を受けるパターンだ。



女子がこそこそと話を始める。

「ねぇ、りょーたくんってさぁ・・・花園さんが好きだったりしてぇ?」

「えぇ!嘘!ショックぅ!狙ってたのにぃ。」


やっぱり。誤解されてる。



「と、とにかく!そういうことだから!!人を見た目で判断しちゃいかんと俺は思うのだよ!!!!じゃ、じゃあな!!!」


俺はそのまま教室を飛び出した。

大丈夫

教室を飛びたして、速歩きで下駄箱へ向かう。


あー。もう、明日から教室入りにくいし、

でも・・・花園があんな風に言われるの許せなかった。

確かにあの子は変だけどでも・・・


そう考えながら自分のクラスの下駄箱を曲がろうとすると


「うわっ!!」

「はぅ・・・・!」



花園だった。

隠れるようにしていたことから、何と無く、わかった。



「聞いていたんだな。」



「・・・・・・・」

彼女は何も言わなかった。

代わりに、ゆっくりと頷いた。


「そっか。ごめんな。余計なこと言って。」



ふるふると彼女は左右に首を振る。

そしてゆっくりと閉ざしていた口を開く



「・・・・・・・ほっといてくれれば良かったんです。」

「え?」



彼女は俺の方をまっすぐ見る。



「・・・・私なんか庇ってあなたは馬鹿ですか。」



・・・この小娘はっ!!!


「なっ!!!俺は!」

「馬鹿です。アホです。私なんか庇ったりして・・・・あなたは・・・・馬鹿。」



なんで俺こんなに言われてんだろ・・・・



「でも・・・・・・・・」


彼女はそこで言葉が止まった、

何かを言いたそうだけど、いいずらそう。

ここで何?って聞くときっと、

「煩いです。待つってことも出来ないのですかあなたは・・・犬以下ですね。」


なんて言われそうだから、俺は黙って彼女の言葉の続きを聞くことにした。



「でも・・・・・・あ、・・・あり、がと。」


ドキン・・・


始めて言われた彼女からの感謝の言葉。


差し込んだ夕日に照らされた彼女の頬は・・・うっすらだが、紅く染まっていた。





「おはよう。花園。」


「・・・・・・・・・・・・・・・」


あれ・・・?

無視・・・・



「また、星占いがダメだったのか・・・?」


「・・・・・・・・・・・」


これも無視・・・・

ってことは違うのか。


花園はガタッと静かに席を立って教室から出ていった。



あれ・・・・なんか俺・・・・避けられてる的な感じか・・・?


偶然いや、そんなわけ・・・

そうだよ。大体、花園変わってるところあるし。

気まぐれだよな。きっと。

すぐいつもみたく。



「あなたと話すとあほが移るのですよ。」


とか言い出すんだろ。




そう思っていたのに・・・・・


次の時間も



「花園。」

「・・・・・・・・・・・」



無視。


その次の時間も


「は、花園!!」

「・・・・・・・・・・・・」



無視。



な、な、何でだよ!!!!



俺なんかしたっけ!?

やっぱ昨日のが原因・・・


にしてもあからさますぎだろ・・・・



こりゃなんかあるな・・・・・・・



6時限目の選択授業が終わり、教室に入ろうとすると。



「ぬっ?ハッ・・・・!!!」

「うわっ!は、花園!!ちょ!待てって!!」



俺と目が合うなり走り出す花園。

やっぱ避けてんじゃん!!!!



俺はその後を追いかける。


が・・・・



「はやっ!!?見失った!」





「・・・・・・・・・・・よし。」



あの人の姿は見えない。


「・・・・・・変人・・・・か・・・」


私はただ好きなことをしているだけなのに。


皆にだって興味とか趣味があるのと同じなのに。



「皆アホなのですよ。占いなんてみんな信じてる癖に。オカルト馬鹿にする割には自分たちも幽霊信じてる癖に。」



猿よりアホです。

でも・・・・そんな私にあの人は話しかけてくれた。

怖がることなく、皆と同じように・・・



でも・・・・迷惑はかけたくない。

やっと仲良くなれるかもって思ったのに・・・


「まぁ・・・いいか。」

寂しくなんてない。

悲しくなんてない

だって・・・



「独りなんて・・・・いつものこ・・・・・」


「花園みーつけたっ!!!!!」

「はぅっ!?」





俺を見るや否やあたふたと逃げ出そうとする

が、もう、その手にはかからない。


「逃げるなー!!」

「っ!!!・・・・離してください。猿以下の分際で私に触ろうなんて・・・あほですか?」


この・・・小娘・・・・



「わかった!触らないから!!何で逃げるのか理由を教えて。」

「別に逃げてなんていません。」

「じゃあ・・・何で目をそらすの?」

「・・・・そ、それは・・・・」


無理やり目を合わそうとしても交されてしまう。

どうして?俺は何か悪いことした?

いや何もしてない。

じゃあ・・・どうして?


「・・・・・ほかの人に見られたら・・・・まずいんじゃないですか?」

「え?」



他の人に?


「どういうこと?」


首をかしげると花園はふいっとそっぽを向いて走り去っていった。




―ほかのひとに見られたらまずいんじゃないですか?―




あの時の花園の瞳は・・・・どこか悲しそうだった。


だけどその言葉の意味は分からなくて・・・・・


「なんなんだよ・・・・」





「・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・・・・・。」


帰りのSH(ショートホームルーム)はお互いに気まずくて言葉をかわすどころか、目すら合わせようとはしない。


「おい・・・涼太・・・・」

「あ?なんだよ武蔵?」


後ろから背中を突かれて振り返る。


「お前、今日ポーカーちゃんと全然話してないのな」

「それがなに?てかそのあだ名やめろよ。」



花園を相変わらず失礼極まりないあだ名で呼ぶのにイラつきながらも、俺は武蔵と話した。



「いやいや。俺はそれが正解だと思うぜ?お前、普通にかっこいいし、運動神経抜群で頭もいいし。結構女子に人気なんだぜ?」

「は?意味が分からないのだけど?」



急にわけのわからないことを言い出す武蔵に俺は首をかしげる。


すると武蔵の隣の席の女子高橋美咲が横から口を挟んでくる



「だーかーらぁ!鳴瀬川君は、花園さんとお話ししないほうがいいってことを武蔵君は言いたいのー」





後ろの二人が彼に何かを話しているのがかすかに聞こえる。

(・・・・SH中なのにおしゃべりなんて・・・・アホですか・・・)

と言いたいところだけど。私もつい昨日までは彼とお話していたわけであって何も言えないのだけれど・・・



「は?意味が分からないのだけど?」


急に彼の口調がきつくなる。

そして私の後ろの席の高橋美咲が



「だーかーらぁ!鳴瀬川君は花園さんとお話ししないほうがいいってことを武蔵君はいいたいのー」


私の・・・話・・・・・

あぁ、いつものことですか。

はい。わかってます。

もう聞きなれてきた言葉です。


「何でそんなこと言うの?」


彼は二人に問いかける。


「そんなん決まってんじゃん!花園鈴里は変人だし。」

「いつも鳴瀬川君にひどいこと言うし。」

「クラスの奴らにも気持ちがられてるし」

「花園さんとお話しすると、呪われるっていわれてるしー」


大丈夫。いつも言われてきたこと。

言われてきたこと・・・・だけど・・・

もう・・・それ以上言わないで。


そんなこと言ったら・・・・ほんとにもう彼は私に話しかけてくれない・・・

また、独りになってしまう・・・


「・・・っ・・・・・」


とっさに耳を塞ぐ

両の手に力を入れて何も聞こえないように強く耳を塞ぐ。

それでも聞こえる声。



「花園鈴里といたら涼太・・・お前の株落ち・・・・・・・」

「うるせぇよ・・・・・花園花園って・・・・」


「ぇ・・・・・・・」


ふわっと私を包み込む暖かな感触。

優しいお日様のような香り・・・

私は彼の腕に包まれてた。


「もう大丈夫だよ。」




花園が俺を避ける理由が分かった。


花園は知ってた。自分がなんて言われてきたのかも。

俺がなんて言われていたのかも。

俺のこと思ってずっとあんな態度とってたんだ。

なのに俺はそんなことも気付かなかったなんて・・・・


両耳を塞いで小刻みに震える小さな肩をとっさに抱きしめた。

目を見開く彼女といきなりの出来事に驚きを隠せないクラスメイト。


「もう大丈夫だよ。」


そう言うと彼女の目から大粒の涙が溢れてきた。

俺はそれを隠すようにまた抱きしめる。



「りょ・・・・涼太!?」

「や、やだ!!鳴瀬川君!?」



「花園が君らに何した?何か迷惑かけるようなことした?」



花園はただ自分のしたいことをしてただけ。

それが少し変わっていただけ。



「花園は気持ち悪い?花園と話すと呪われる?何それ?ばっかじゃないの?」


「だっていつも変なことしてるし気持ち悪いじゃんかよ!!」

「それにいつも無表情だし、感情表現ってのがまるでないし・・・」


「そんなん、皆がひどいこと言ってんのを知ってるからだよ!!」


本当のことを知っているから笑うに笑えなかった。

そうなんだよね。花園・・・・


「それに!!!株とかそんなん俺知らないし!!!俺は花園は変人だとは思ったことはあるけれども!!」

「ぇ・・・・」



そこで花園は俯いてた顔をあげて大きな瞳でこちらをじっと見てた。



「とは思ったけれど、気持ち悪いとか、感情ないとか、そんなの思ったことないから!!花園は普通の女の子!!」


だから・・・・


「花園のこと悪く言ったら俺許さないから!!」



「・・・・・・・涼太・・・・・おまえ・・・ほんとに花園鈴里が好きなのか・・・・」



え・・・・・・・

俺が花園を好き?



「なななな!!!なわけあるかー!!!」

「もういいです。それ以上言ったら殴りますよ。」


花園の涙はいつの間にか止まっていて、いつもの花園に戻っていた。


「お騒がせしてすみませんでした。」



そう一言残して花園は教室から出ていった。



「ま、待って!!花園!!俺も帰る!!」


花園の後を追いかけるように俺も教室を後にした。




「待ってよ!!花園!!!」


走る彼女の腕を掴み、息を整える。


「・・・・・・・・ですか・・・・あなたは。」

「え?」



小さな声でつぶやいたため、うまく聞き取れずもう一度聞く。

彼女はふいっと目をそらしつつ今度はハッキリと言った。



「馬鹿なんですか?あなたは。」



馬鹿……?


「お、俺なんかした?もし、なんかしたなら謝るし。」



そう言うと花園は首を左右に大きくふる。



「あなたは何も悪くない。」


そう言って彼女はうつむいた。

これには何か訳がありそうだ・・・


「俺でよければ話してよ。役に立てるかはわからないけど・・・・・」


役に立てるかはわからない。

でも、これだけは言える。



「大丈夫。俺は花園の味方だよ。」



ピクッと肩を震わせた花園は、小さな拳を握りしめ


「・・・同情のつもりですか・・・・」

「同情なんてしてないよ。」


震える声に優しく答える。



「私なんて放っておけば良かったんです。」

「どうして・・・・?」

「っ・・・だから!」



彼女はうつむいた顔をあげキッと睨みつけてきた。



「私なんかと話してると、あなた、嫌われますよ!?いい加減気付いたらどうですか!私なんて放っておけばいい!独りなんて慣れてる!だから・・・・・」



そこで彼女の言葉はとまる。



「花園・・・泣かないで・・・」



泣いていた。大粒の涙が頬を滑り落ちる。

小さな子どもみたいに肩を大きく上下させ、制服の袖でゴシゴシと荒々しく目をこする。



「うる・・・さいです・・・あなたのくせに!・・・私は・・・私は・・・」



「嬉しかったの・・・・」



消え入りそうな声で言った最後の一言に俺は目を見開いた。


嬉しかった


声は小さかったけど、確かに彼女はそういった。



「気持ち悪がられているのは知ってました。私は別にオカルトが好きとかそういうのじゃなくて・・・ただ、好きなことをしていた。それだけ。最初は軽く聞き流せた。でも・・・・」



そこで彼女は小さな拳をぐっと握りしめた。


「だんだん、話してくれる人もいなくなって・・・・私は独りになったの。」





それがどんなに悲しくて、虚しかったか・・・・


ヒトなんてそんなもの。


周りの意見に簡単に流される。


哀れな生き物・・・・そう自分に言い聞かせてた。


でも・・・・



「あなたは違いました・・・・」

「え?」


そう・・・・この人は違った。




「あなたは・・・・私を怖がりもせずに笑いかけてくれた。」



わたしのやることを全く否定しなかった。



「だから・・・・怖かった・・・・・昨日・・・・」




花園は俯き、小さな肩を再び震わせる。



「昨日・・・皆があなたに言ってた・・・”私と関わるな”って・・・・」


関わるな?・・・・昨日武蔵たちが花園を馬鹿にしてたときか・・・



「あなたは否定してくれた。すごく嬉しかった・・・でも、同時に怖かった。また、独りになること。あなたに迷惑をかけていること。」


「俺は別に・・・」

「私は、あなたに迷惑かけるくらいなら・・・独りでかまわない。もう、誰かに裏切られるのは怖い・・・・」


そっか・・・・花園は怖かったんだ。

不安だったんだ。

昔、大好きな友達に裏切られたように、俺もまた、花園から離れていくかもしれないのが・・・・


「大丈夫。俺は花園を裏切らないよ。」

「え?」



首をかしげる彼女の頭をそっと撫でる。



「裏切るわけないじゃん!!だって、俺、花園といてすごく楽しいもん。毎日が。」

「たのしい・・・?」

「うん!だから、俺は花園を裏切らない。花園を悪く言うやつがいたら、俺が許さない。」



「俺が花園を守るよ。」




俺が花園を守るよ


裏表もないまっすぐな言葉。

この人なら信じれる。

信じていいんだ。

いや、信じたい。

そう、思った。


「・・・・・・あなたに、お願いがあります。」

「ん?何??」



私が欲しかったもの・・・・


「私と友達になってください・・・・」


「・・・・・・・・・・・・」


彼は何も言わない。

困らせた?



「いや、あの・・・今のは・・・・」


「・・・・・っぷ!!あははははは!!!」



急に笑い出す彼に私は目を見開く。


「何がおかしいんですか?」

「いあや、ごめん。ちょっと笑っちゃって・・・だって、友達とかもうとっくに俺思ってたから。」

「え?」


とっく?既にってこと?


「よく漫画とかでもいうけどさ、友達って、気づいたらなってるもんなんだよ?花園。」



気づいたときにはもう・・・・


そっか・・・・もう・・・


「友達だったんだ………」

花園は何者

「おはよう!!花園!!」

「・・・・・・おはよう・・・・」



ぎりぎり聞き取れるくらいの声のボリュームで返される挨拶。

相変わらずムスッとしているけど、こうして返事を返してくれるのがすごく嬉しい。


花園の文句や悪口を言うやつ
は少なくなった。

気のせいかもしれないけど、花園は前より笑うようになった気がする。



「花園、今日の小テストの勉強した?」

「っ!!?・・・・・・小テスト・・・・・・」



あー・・・この感じは・・・・・



「忘れてたんだね。小テストの存在」

「ううううう・・・・・」



頭を抱え込む彼女。



「こうなったら・・・・この藁人形で・・・・・」

「うわぁぁぁ!!やめてやめて!!!そんな物騒なものを普通に出しちゃダメ!!!しょ、小テストの範囲教えてあげるから!!ね!!」

「・・・・・・仕方ないですね・・・あなたがどうしてもというなら、今回はやめるとしましょう・・・・」



そう言って彼女は藁人形を制服の裏ポケットにしまう。



おいおい・・・いつも持ち歩いてるってことかよ・・・



結局俺が丁寧に教えてあげた甲斐があってか、花園は小テストで追試を受けることはなくなった。



「良かったね花園!!」

「・・・・何がですか・・・・」

「何がって・・・小テストだよ!!追試じゃなかったんでしょ?」

「う・・・・・ま、まぁ。でも別に貴方にお礼なんて言いません。第一私は教えてなんてお願いしてないですし。」



む・・・素直じゃない・・・


「・・・ありがとう。」

「え?」

「な、何も言ってませんし。教えるなら早く教えてください。」


ぷいっとそっぽを向いて、ノートとにらめっこを始める。



「・・・ノート逆さ・・・」

「・・・!!わ、わざとにきまっているじゃないですか!!」


同じクラスになって数日。

まだ、花園の行動に謎があったり、どんな子なのかはまだ曖昧だけれど・・・



この子は俺たちと変わらない普通の女の子であって、ただちょっと人見知りでうまく自分の感情が表に出せない子だっていうのは分かってきた。



そしてこの前の騒ぎをきっかけに花園のことを陰で悪く言うやつは少なくなってきた。


まぁ、良く思っていない奴らはいるみたいだけど。



(そもそも何でそんなに花園が周りから敵視されなきゃいけないんだ?花園は何もしていないのに。・・・まぁ、オカルト好きって面で変人扱いしていた俺も同罪か・・・)


「・・・なんですか。私の顔に何かついてるんですか?」

「え?あ、い、いや!ごめん!そんなつもりはなかったんだけど・・・」



花園は首を傾げてまたノートとにらめっこを始めた。



それを俺はまた見つめる。


「花園ってさ、まつ毛長いよね。」

「?まぁ、よく言われます。両親が長かったんじゃないですか?」

「遺伝かぁ。じゃあ花園のお母さんは美人さんなんだね。」

「え?何でですか?」

「だって花園可愛いし・・・・・・」



そこで俺の言葉は止まった。

目をぱちくりさせる花園。

数秒後、お互いの顔が真っ赤になる。


「な、何バカなこと言ってるんですか。あ、アホですか!新手のナンパですか!」

「ご、ごめん!」



お互いに俯く。




「・・・うわ・・・見て武蔵。」
「あ?なんだよ美咲・・・お!?」

「花園鈴里が赤くなってる。」




可愛い・・・そんなこと初めて言われた。

ど、どう反応したらいいのか・・・

でも・・・


(嫌な感じはしない・・・)



トクン、トクンと私の鼓動はしばらく鳴りやむことはなかった。









「花園おはよー。」


「・・・おはようございます。」


しばらくの沈黙の後に花園はいつも返事を返す。

そしてふいっと目を逸らすんだ。



「花園今日は何を見てるの?」

「・・・魔法陣です。」



魔法陣?



「魔法陣って、あのよくアニメとかに出てくる魔法使いが魔法使うときに出てくるあれ?」

「まぁ、それですね。私が見ているのは召喚系の魔法陣です。」


召喚系?


花園の本をのぞき込むとそこには悪魔召喚など不気味なものの召喚に関する魔法陣の本だった。



「悪魔って・・・まさかやろうなんて思ってないよね?」

「これをやらずにいれますか。」



で、ですよね。花園ならそう答えると思ったよ。


「でも確かこれって霊感とかそんな感じの人がやらないと危ないんじゃない?自己暗示にかかったりとか・・・」

「自己暗示?そんな可愛いものじゃないですよ。ホントに憑依されたり体を乗っ取られたりします。」



え・・・突っ込んでいいのかな?そこまで知ってて何でやろうとするのか・・・



「霊感とか霊力のほうなら問題ないのです。」

「え?花園霊感とかあるの?」

「言ってませんでしたか?」



いやいやいやいや!!


「初耳だよ!」

「まぁ、聞かれませんでしたし。」


確かに聞かなかったけども!


「ふぅ…まぁ、言ったところで信じる人もいませんし。しょうがない。ついてきてください。」


そう言って花園は俺の手を掴んだ。



「え?」

「次の授業はサボります。」


そう言って彼女は俺の腕をグイグイと引っ張って教室を出ていった。





「花園さん………ここって……」

「本校有名の開かずの間です。」



ですよね!?


花園に連れてこられたのは七不思議の一つでもある開かずの間。


なんでも異世界と通じてるとかなんとか。



「なんでここなの!?」

「そりゃここは霊力が滲み出てますし。」

「霊力とか見えるの?」

「まぁ、見える人は少ないですが私はみえます。」

僕の隣は変人です。

僕の隣は変人です。

  • 小説
  • 短編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-02-16

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  1. 隣の席の女の子
  2. 大丈夫
  3. 花園は何者