手記

一日目。午前八時、家を出ます。凛々しい顔も作り終えました。何を着れば格好付くかはわかりませんでした。もう鏡は見たくありません。階段を降ります。ポストから新聞を取ります。普段読まない新聞は何から読めばいいのかわかりません。一面の小見出しだけを何度も目で追いながら駅へと向かいました。雪の影響で遅れている電車に乗りました。今日も繁華街で降ります。
二日目。午前八時、家を出ます。凛々しい顔も作り終えました。何を着れば格好付くかはわかりませんでした。もう鏡は見たくありません。階段を降ります。新聞を読む振りはやめました。駅へと向かいます。電車は定刻より二分遅れていました。今日も繁華街で降ります。
三日目。午前八時、家を出ます。凛々しい顔も作り終えました。何を着れば格好付くかはわかりませんでした。もう鏡は見たくありません。階段を降ります。新聞は読みませんがポストは確認します。何も入っていませんでした。駅へ向かいます。乗車ドアは毎日変えています。今日も繁華街で降ります。
四日目。午前八時、家を出ます。凛々しい顔も作り終えました。何を着れば格好付くかはわかりませんでした。もう鏡は見たくありません。階段を降ります。ポスト。駅へ向かいます。定期券の期日が近づいていました。ドアは昨日と同じです。今日も繁華街で降ります。
五日目。午前八時、家を出ます。凛々しい顔も作り終えました。何を着れば格好付くかはわかりませんでした。もう鏡は見たくありません。階段を降ります。今日はいないことを思い出しました。
六日目。午前八時、家を出ます。凛々しい顔も作り終えました。何を着れば格好付くかはわかりませんでした。もう鏡は見たくありません。階段を降ります。ポストは見ませんでした。駅へ急ぎます。いつもより早い電車に乗りました。今日も繁華街の駅で待っています。
僕は幸せです。

手記

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  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-02-16

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