僕はその時から心の中に

僕は 僕の過去の記憶の入り口に いつのまににか

憤怒の形相の守護神を 置いてしまったようだ

少しでも過去の扉が開かれようとしたりすると

彼が猛然と立ち塞がり 大きな怒鳴り声をあげながら 

バーンと扉を閉めてしまう

僕はその憤怒尊に 優しく囁いた 

「もう、大丈夫ですよ。中に入っても昔のように

命を絶とうと想ったり、気が狂いそうになったり

人に会うのが恐くなったりもうしませんから。」

でも彼は憤怒の形相のままで、大きく顔を横に動かし

紅い火焔を吐きながら耳を劈く様な大声で

=ダメだあ~~~!!!お前はまだ、あの時のままだあ~~~

あの時とちっとも変ってはおらぬわあ~~~!!!=

そう叫んで僕の胸を真っ赤な手のひらで

現在へと押し戻そうとする

でもいまの自分は過去の結果存在しているのだから

過去を断ち切ることは 封印することは出来ない

でもまだ僕の心の中には あの時の辛さや哀しさや、

奈落の底に引きずり込まれるような 絶望の日々を

思い出すことに対する恐怖があり それが

憤怒尊を作り出している 原因なのかもしれない

彼が 優しい寂静尊の慈愛に満ちた笑顔に変わり

その頑丈な鋼鉄の扉とともに 消えてくれるのは

いつの日のことだろう

僕は 今日もそんなことを考えながら

ただ前だけを 未来だけを見据えて

懸命に 生きて行こうと している

僕はその時から心の中に

僕はその時から心の中に

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-02-16

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