チョコレートは苦く、涙は甘い
口どけはとろけるようで、後味はにがく、
ミルフィーユみたいに崩れやすい。
あなたは恋の名前を知っていますか?
「頑張ってね! わたし応援してるから」
わたしはチョコレートの入った箱を持って赤面している親友に笑いかけた。
いや、〝上手に笑えている〟はず。
本当は応援なんてしてないくせに いい子ぶりっ子。
嘘が上手くなるたびに、私の心は今にも悲鳴をあげそうになっていく。
気づけ、ばか。
楽しそうに話す彼に、胸の中でつぶやいた。私の想いなんて知らんぷりで君はずるい。
私なんかと話していいの? 彼女と一緒にいなくていいの?
ひねくれた想いばかりが膨らんでいって、私が私の知らないものへ変わっていく。
親友と彼が一緒に帰るようになったなんて、もう、知ってるんだよ。
だから期待なんかさせないでよ。
無邪気な笑顔もいじわるだけど優しい君も、今は全部あの子のもの。
私は今、どんな顔してる?
ああ、嫌、嫌だよ。
もう苦しくて……消えてしまいたい。
嫌いになる努力も無駄で、今もあなたが好きでたまらなくて。
指先からすり抜けていくのは止められない。
それでも傍に居られたら、なんて
あなたのために流した千の涙は、儚いほど甘い。
チョコレートは苦く、涙は甘い