振り向かせたい
好きな人がいる。
ある日、窓辺に降り立った小人が私に言った。
『どんな夢を叶えたい?』
私は迷わずに
『好きな人を振り向かせたい』
と答えた。
小人は満足そうに頷いてケケッと笑って消えた。
きっと私は好きな人に振り向いてもらえるようになったんだ。
明日からはもう少しアピールしてみよう。
朝になり登校し好きな人が廊下を歩いているのを見つけた。
小走りで近づき、制服の裾をぎゅっと握ってみる。
握ったところから制服は腐り徐々に着ている本人も腐り始めた。
じわりじわりと腐っていき、私の目の前で好きな人が朽ち果てた。
誰もが動きを止め私と朽ち果てたそれを交互に見た。
背後からケケッと聞こえて私の視界は暗転した。
振り向かせたい