1:蝶、生まれ変わる
あの頃私はちっぽけだった
ただ這うことしか出来ず 敵から逃げ 草を食み 雨に打たれた
それから私はとても眠くなったので
きっと何者にも見つからない所を探し
おそらく永遠と思える眠りについた
そして わたしは とけた
目を覚ますとやけに身体が湿っている
雨でも降ったのかな?
辺りは時が停止したかのように静かでちょっと不気味だ
そっと葉っぱの裏側から顔を覗かせる
???
ふと視界に黒いくだの様なものが現れてビクつく
不思議なことにこのくだの様なものは私の意志で動かせるようだ
ところで 先ほど目が覚めた時から身体が羽のように軽い
まるで生まれ変わったみたいに…
1:2
不思議なことは今までにも沢山あった
けれど 自らの身体に疑問を感じたことなど一度も無かった
今までなら とにかくはその場所を離れることで問題を避けて来た
だからこそ現在こうして居られるのだと思う
経験則に従い 私は居心地の良い黄緑色の葉裏を諦め
右へ2つ 下に3つ 葉から葉へ伝い
ツルツルとして なんだかわくわくする香りの漂う葉に 辿り着いた
相変わらずこの長いくだは視界に映り 私の気を散らしてくれている
危険は無いか 辺りを見渡す
そこらの枝や茎の節々にアブラムシが居る他
鳥の羽ばたきやさえずりも聴こえない
真っ白な入道雲を受け入れる大きな青い空を見上げ
いつも見てきた風景となんら変わらないものを感じた
1:蝶、生まれ変わる