 
リストラ通告
 リストラの噂はあったが自分は関係ないと思っていた。
 だが人事役員の言葉に日下部は頭を殴られる思いだった。
 「小さなミスで部下の女子社員を人前で罵倒したらしいね?」
 「罵倒だなんて」
 「彼女はショックで拒食症になったそうだよ」
 「……」
 「次だ。君は部下発案の稟議書を、自分の企画のように捺印を貰って回ったそうだな」
 「そんな誤解です」
 「悪気はないのだろうが、君の思慮不足が若い社員のやる気を奪ってたんだよ」
 「……」
 「君には退職してもらいたい」
 「そんな!」
 日下部は妻の書いた創作小説を途中まで読み、顔をあげた。
 「お前が拒食症になったのは知らなかった。とにかく部下の気持ちを大切にするよ。リストラされたくないからね……」     (了)
リストラ通告
 
