ひとり娘と父

ひとり娘と父

 私は目の前の男を睨まずにいられなかった。
 二十五年前の絢香の父のように。

 あの日、私は彼女の父親と対座していた。
 絢香は、病気で母を亡くして以来父親と二人きりで暮らしてきたのだ。
 「娘さんと結婚させてください」
  父親は私を睨みつけた。

 「養子になれる男以外の結婚は認めない」
 だが、私も家庭の事情でそれはできなかった。

 「娘さんの幸福を本当に願うなら、彼女の幸福だけを考えるべきです」
 若かった私は相手を睨み返し、偉そうなことを言った。
 しかし結局、絢香は私よりたった一人の父親を選んだ。

 そして今、私のひとり娘の陽菜を奪いに男が現れた。
 「翔君とにらめっこしてる場合じゃない。 陽菜が遅刻するよ!」
 妻が私の頭を引っぱたいた。 
  (了)
 

ひとり娘と父

ひとり娘と父

「娘さんと結婚させてください」 父親は私を睨みつけた~

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更新日
登録日
2014-02-13

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