病室での再会
祖父が昏睡状態となった。
家族交代で病室に宿泊し看護することにした。
大好きだった祖父の顔を近くで見ると、
目元には大きなホクロがあったのだと気づく。
祖父の担当となった看護師を見て驚いた。
かつての片思いの女性だったのだ。 彼女の方は気づかない。
それからも何度か声を掛けようかと思ったが
どうしても勇気が出なかった。
ある夜、彼女が病室を出て行こうとする時
「男だろう、しっかりせんか!」
ベットの祖父の声を聞いた気がした。
「僕を覚えてますか」と声をかけると、彼女は嬉しそうな笑顔で
「うん。佐藤君だよね」
その後、祖父は亡くなったが、彼女とは交際を続け結婚した。
数年後、男の子が生まれる。 赤ん坊の目元にはホクロがあった。
(了)
病室での再会