朱鞠内湖
いま何処にいるの?
風がそよぐ湖岸沿いのプロムナード
君の声が携帯電話から聞こえ
読みかけの文庫本にしおりを挟む
落ち葉の気配を感じながら
二人で漂った季節はずれの湖面
冷たい波が二人をすり抜け
君の優しさだけがぬくもりだった
ボートを漕いでみたいときみ
心もとない低い空が湖水に映って
バランスを取りながらすれ違うと
淡いボンベイサファイアの香りがした
遠い世界へ行きたいときみ
揺れつづける波に戸惑いながら
きみのとび色の瞳に
答えを出せず目を閉じた
いつか再会したいときみ
残り少ない陽射しの光と影
白い貝殻が封印されたガラス瓶
乗り手のいないボートたち
朱鞠内湖