豪快部長のお礼
「ちょっといいか」
いつも大声の部長が何故か小声だった。
無駄に豪快な部長だが部下に気前がいい。
今日も飲み会後、俺と高田をラーメン屋に連れてきた。
「ワハハ、高田君、奥さん元気かぁ?」
「俺の名前は川田でまだ独身です。覚えて下さい」
いい加減な部長に、酔った勢いで突っ込む。
三人で大笑いした。
部長が小声で話しかけてきたのは高田がトイレで席を立った時だ。
「どうしたんですか?」
「実は金がない。貸してくれ」
何のことはない。会社に財布を忘れてきたらしい。
今回は俺が全額出すと主張したが部長は譲らない。
翌朝、机の上にお金とお礼のつもりかタバコが置いてあった。
ただし俺ではなく高田の机で、かつタバコは吸わないんだけど。
(了)
豪快部長のお礼