憂鬱電車

憂鬱電車

 会社サボろうか?
 孤独で憂鬱な職場の事を考え、俺は足が重かった。
 それでも否応なしに人波に押され超満員満車に押し込まれる。

 痛い! 足を踏まれた。が謝罪の声がない。.
 イラッとして隣を見ると女性だった。
 懸命に唇を動かし目で謝っていた。

 そうか、声が出ない病気なんだと気が付く。

 ある駅に停車すると、彼女はドアに向かうが
 満員だからなかなか進めないでいた。
 乗客たちは彼女の様子に無関心だ。
 このままでは彼女は降りられない。
「通してあげて下さーい」
 自分でも驚くほど自然に、俺は声を出していた。
 皆が道を開け、彼女はなんとか出口にたどり着くことができた。

 動き出した電車に揺られながら、
 俺は少しだけ晴れやかな気分になっていた。 
(了)

憂鬱電車

憂鬱電車

話相手もいない孤独な職場に向かう俺に起きた小さな出来事。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-02-13

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