スマッシュ!The king of ping pong ~3~

スマッシュ!The king of ping pong ~3~

市内大会に参加した努は、10年に1人の天才「獅子渡」の試合をかいま見た。
そしてアナウンスは、努の試合を告げる。

選手たちとその応援の声が体育館を満たしている。 努ははち切れそうな体育館に足を踏み入れた。
スタンドには各校の横断幕がつけられている。輝光中の横断幕もあった。 

努は自分の台につくと、バッグの中から何やらごそごそと取り出した。 努はそれを額に巻き、後頭部で蝶結びをした。鉢巻きであった。
「あいつ、なんで鉢巻きなんかつけてんだぁ?」 スタンドにいる輝光中学校や周りの中学校の選手は努を見ると半笑いでそんな会話をしていた。
「お前、何それ?」後ろから同級生に声をかけられた。 4番手、「小林瞬」 。  努は振り向き、仕切りの向こうがわの小林に、自慢げに答えた。
「トレードマーク。」   

努のサービスでゲームは開始した。 高くあげられたボールはラケットを伝い、相手コートに送り込まれる。
努は強烈な上回転サービスを放った。相手はヌルい返球。すかさず逆サイドに回り込む努。  
音高く、努のスマッシュは決まった。

セット数3-0  努のストレート勝ちであった。
努がスタンドに戻ると、先輩たちや同級生に大げさな祝福をされた。「そんな、まだ一回戦ですよ?」 「相手は3年だぞ!実力もそこそこだった・・・ストレート勝ちはなかなかできない。」 「やっぱりお前はすごいな。」 「よっ 期待の新星!」 努は嬉しかった。 今まで父と自分でしか確かめることが出来なかった卓球の面白さを分かち合える仲間が、ここにいたことが。
その後努は順調に勝ち進み、輝光中2年の中で残っているのは、努だけになっていた。 そして、次の相手はエース来宮だった。
ロビーでトーナメント表を確認すると、角のソファに腰かけた。 春とは言え、4試合すれば 必然的に汗が垂れてくる。
体育館の熱気から間逃れるために、しばらくロビーにいることにしたのだ。

しばらく涼んでいると階段から電がおりてくるのが見えた。 電はソファに近づくと、努の隣にどっかりと腰を下ろした。
「次は来宮だな。」  「ハイ。 先輩は 獅子渡ですね・・・。」  「あぁ、なんとか頑張ってみるよ。」

会話が途切れると、電はふぅとため息をつき、また話を始めた。
「努は、何であそこまでして卓球部に入りたかったんだ?」  「それはもちろん、卓球が大好きだから ですよ。」 「小学校からやってたのか?」
「ハイ。父と家で練習してました。」 「お前、父さん選手か何かか?」 「ええ。数年前までアカデミーで戦っていました。」
「アカデミー・・・ まさか、  お前、父さんの名前は?」 「青羽流星。」  電の表情が豹変した。  「マジかよ! 青羽流星って結構有名な選手じゃん!」
「はは、そんなに驚かないで下さいよ。」  「うわぁ、すげぇなぁ。 だからお前そんなに強いのかぁ・・・」
「轟木先輩は、どうして卓球やってるんですか?」 「もちろん卓球が好きなのもそうだけど・・・・」
と、電が言いかけた時、アナウンスが入った。「準決勝に出場する選手は集合してください。」
電と努は顔を見合わせ、立ち上がった。
 「勝とうな。」        「ハイ。決勝で会いましょうね。」

スマッシュ!The king of ping pong ~3~

スマッシュ!The king of ping pong ~3~

卓球をこよなく愛する少年「青羽努」が、卓球を通して様々なライバルたちと出会い、成長していく。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-02-10

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