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四十六







 胸の辺りまで,これ以上は伸びない丈のお喋り。行ったきりの風に押されてさらに低くなるのがさわさわと前に伸びて,ずっと帰って来ないのは草の名前を置き去りにする,ふさふさの尾と行く景色。追い越せないもくもくの形は私が知らないクリームのようで厚くて空を覆っている。漏れて光は向こうに降ったら,こっちに来ようかと思案して,さっき通り過ぎた高台の住処の誰かを探している,そんな風に見られる。そこにいる誰かにはさっき出会って来た。いっときの歓待を受けて,キャラメルを一個貰った。袋とともに,缶は要らないと言ってみて,見送られるときのオウムにはいろいろと異なる「またおいでよ。」を言ってくれた。
 口に含んでいない事実とともに,ポケットの中に入れない手には乾いた風味と落として来た殻,食べなかった種に明かさなかった話,人差し指を前に出してウィンクする母のようなおおらかさは私の何処かに眠っているのか,それとも帽子を被せてくれた父のシルエットのような強さが守ってくれているのか,かつて二人を前にして,私が答えた「答え」を知らない。だから二人は止まったままだった,海が見える私たちのお家に赤い屋根の前で走る犬がこっちを見ていて,上着を必要としなかった季節。活き活きとした陽射しに合わせて大きな樹がたくさん鳴いて,歩ける私のずっと上で,空を飛べる乗り物が高く高くと飛んでいた。
 観測器(のようなもの)の使い方,その記録。煎じつめた香りの強い飲み物は飲まないで,面白い符合に喜ぶ運転手は,きっとバスみたいなものも運転する。
 鬱蒼と囲まれる森は,この字型を守るために勉めて,水生を説く湖が写生を求めて長く潜ることを意識していた。それからふさふさに振られる尾は,目印のようにここを伝えて離れて行かない。私の収めた髪が歩くリズムにイチ,ニと肩を叩く。小麦色に戻って来ない,一面の柔らかさに巻いたストールが絡まらない。擦れる靴下,地面は硬くも整えられて,続く目的地を足首に教える。踏んづけた,トウモロコシはここに無いはずだった。
 隠れん坊を光と見つけて,大きな声を飲み込んで。
 にんまりは,あの頃から得意だったはずだ,抱っこをせがむより歩くことを好きで選んだ私と父の畑では届かない。青い風景の深呼吸に助けられて,はじける,レモンの色の今みたいに。
 ここを伝えて,ふさふさの,尾が振り返ってこちらを見て,私が進んでその黒い目を覗き込んで離さなかったら距離が縮まる。その種族の違い,でも出会ったここで初めて会えた,歳月よりも近いもの。水先案内人より相応しい言い方を見つけるまでに目的地に着いたりしなければいいのに,わがままに慣れないままでもいいのに。
「確か三段,だったかな。」
 待っててくれた,車内の荷物にいうことを聞かせて飛び越えて着地した,アスファルトが暑くて大変だった,あの頃には帰って乗れる。自転車より早い気持ちで飛び立つのだ,風を味方に飲み物を持って,カゴがあったらいいのにと,望みと不満をない交ぜにして。覚えた走りを,見せ付けずにする。
 きっと私がもう帽子を脱いで,顔を上げてから二人の間を拾い抜ける,母と一人できっと人差し指を外すのは顔を見せた父の前で,それを渡すためになるか,それとも顔を,見せ合わせないための工夫になるから。
 初めて撫でた背中の感触,それに私は忘れない。
 小さい声について来る,開くのが得意そうな乗降口は待つことには慣れているのだった。陽気な季節を降ろして,私は帽子を押さえる。風はまた踊る,胸に届かない丈が靡く。






 
 


 

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-02-10

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