家族の法則
ぼくがお父さんの本当の子供じゃないっていう噂は、あっという間に一年二組のクラス中に広まった。噂、じゃなくて本当の事なんだけれど…
ぼくのお父さんはぼくが四歳の時にぼくのお母さんと再婚した人。ぼくは本当のお父さんがどんな人なのか知らないけれど、多分本当のお父さんよりも、今のお父さんは本当のお父さんだと思う。優しくて面白くて頼りになるお父さん。休みの日には一緒に遊んでくれるし、サッカーだって教えてもらった。
親友のタケル君はそんなぼくのお父さんの事をいつもうらやましがっていた。匠君のお父さんは優しくていいなぁ、いつも遊んでくれていいなぁって。
ぼくはお父さんが本当のお父さんじゃない事をこの学校に転校してきてからは誰にも話してなかったから、タケル君に自慢したくなった。
「ぼくのお父さんは本当のお父さんじゃないけど、とっても優しいお父さんなんだよ。すごいでしょ?でもみんなには秘密だよ」
それを聞いたタケル君は何も言わなかった。何も言わないかわりにどうやらみんなに話してしまったみたいだ。
クラスのみんなはぼくのお父さんがぼくの本当のお父さんじゃないって噂が広がってからは、なんだかいつもコソコソ、クスクスし始めた。タケル君もぼくと仲良くしてくれなくなった。お父さんが本当のお父さんじゃないってそんなにいけない事なの?
タケル君に秘密の話しをして一週間くらいたったある日、学校から帰ったぼくにお母さんが言った。
「今日スーパーで匠の同じクラスの愛菜ちゃんのお母さんに会ったんだけど、匠君のお母さんは再婚されてたんですね、って言われちゃった。大きなお世話よね。匠は何かイヤな思いしてない?大丈夫?」
それを聞いてぼくは何だが涙が出て来て、タケル君に秘密だよって言って話した事、クラス中にその事が広がってしまった事をお母さんに話した。お母さんは黙って話しを聞いてくれて、引っ越ししてきた時に話しておけば良かったかな、ごめんね匠。そう言ってぼくを抱きしめてくれた。
「秘密だよって言ったのに、タケル君みんなに話すなんてずるいよ…」
「仕方ないわね、みんな秘密の話しが大好きだからね」お母さんは笑った。
その夜はお父さんは残業で遅くまで帰って来なかったからぼくは先に眠ってしまったけれど、眠る前にぼくは神様にお願いした。ぼくをお父さんの本当の子供にしてくださいって。
神様へのお願いが届いたか確認するために次の日の朝、まだイビキをかいて寝てるお父さんにぼくは抱きついた。お父さんはうお、ってビックリして、匠か〜ビックリしたよ。と眠そうに笑う。
「ぼく、お父さんの本当の子供になれたかな?」
「ん?何言ってんだよ、最初からお父さんの本当の子供だろ?」そう言いながらお父さんはぼくを思い切りコチョコチョとくすぐった。ぼくはくすぐったくて嬉しくて思い切り笑った。
ぼくはその日の昼休みに校庭のすみっこにタケル君を呼び出した。
「ぼく、話してないから!みんなには話してない!話したのはぼくのお母さんだけだから…」タケル君は泣き出しそうになっていた。
「…本当の事だから別にいいんだ。ぼくのお父さんはぼくの本当のお父さんじゃないけど、本当のお父さんみたいにすごく優しいから。それにぼくの事をすごく大好きなんだ。でも恥ずかしいからみんなには秘密だよ?」
家族の法則