夏の風 三部作

風という題材を連想してふくらまして、色々出てきた言葉を盛り込んで話しを作るという妙な練習?を思いつきやってみたら、なにやらおかしな事に…。

とりあえず頑張って三つ作った、二度とやらないと思う。

 蝉の鳴き声が聞こえる。開いてる窓から強い日差しが差し込んで、時々レースのカーテンが揺れる。全身が汗ばみ寝ころんでいる布団は汗で少し湿っている。エアコンでも使えば多少はマシなのかもしれないけれど、起きて窓を閉めてリモコンを探して押す気にはならなかった。こんな日差しにも負けず蝉達は輪唱を続けている。

 夏の日に全くだらけきった状態で、日が傾くのを待ったいた。今日は近くの神社で祭りがあるらしいので、夕方には出かけるのだが、支度らしい支度もする気も起きず、敷きっぱなしの布団から動けずにいた。どれぐらいこうしているのだろうか、仰向けで見える世界は天井と、網戸も無い少し開いたベランダの窓と頼りなく揺れるレースのカーテンだけだった。

 気がつくと眠っていたようだった。日は傾き少しだけ涼しくなった。自然と重力から体が解放されて勢いつけて起きあがる。そのまま出かけるには汗をかきすぎているので、浴槽にお湯を貯める事にした。夏場でも暑い風呂に入るのは日本人ぐらいかもしれない。水風呂は一見して体が冷えるように思えるが、実際には水に入る事で体温が下がるのを防ぐために、体は熱を出すので余計に暑くなる。まぁ細かい理由など無くても暑い風呂に入った後は気持ち良いのだ。

 風呂上がりに扇風機で体を冷やしながら、出かける準備をする。開いてる窓からは太鼓の音や盆踊りの音を聞いて自然と心が躍る。出かける目当ては、盆踊りでも浴衣でも無くかき氷である。縁日で夕暮れに食べるかき氷欲しさに、サンダルを引っかけ財布を持って外へ出ると夕暮れの涼しい風が吹いてきた。

 祭囃子に呼ばれて神社には子供も大人もお年寄りも関係なくにぎわっていた。いくつになっても祭りは楽しい。目当てのかき氷の出店があった。カップいっぱいの氷にシロップがかけられて、その上にたっぷりと練乳がかけられた。出店のオヤジに代金を払って氷を受け取る。

 盆踊りを向こうに見ながら、手にした氷に突き刺さったスプーンで氷をすくって口へと運ぶ、氷の冷たさとシロップ練乳が口の中でとけて広がっていく。鼻から冷気が抜けて頭に突き刺すような痛みが走る。言葉にならないうめき声をだしながら、かき氷を食べながら夏を涼む事ができる日常を、シロップのかかった氷と共に夏の夜の風に吹かれながら噛みしめるのだった。

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 湯船につかり熱いお湯が勢いよく蛇口から流れ出ているのじっと見る。でっかい風呂に入ると普段家での窮屈な浴槽とは違って自由に手足が伸ばせる、当然ながら人に迷惑のかからない程度にではあるが、銭湯の良さの一つには広さがあり、そしてこの勢いよくでるお湯もその一つだ。ただ音を立て流れ出るお湯を見るだけでなにやら気持ちが良いのだ。

 その昔は家に風呂が付いてるのは一つのステータスで、家に風呂があるって事は珍しい事だったが、普及してくるとあることに気づく、そう狭いのだ。手足を折りたたんで入る様が何とも侘びしく貧しい気持ちにさせる。疲れをとる為に入るのに窮屈な湯船に体を押し込めて入るんだから余計に疲れて、何の為に入るのかわからなくなる。しかもお湯もせせこましく使わないと月末大変慌てる事になる。斯くしてお湯になったり水になったりしながら水は汚れてく、そんな中に手足を折りたたんで入るんだからこんな馬鹿らしい話はない。

 そんな事から小銭を握って昔のように銭湯に行く、そりゃ家族からは『もったいない』だなんて言われるが、手前が稼いだ銭をどう使おうが俺の勝手とばかりにこうして銭湯に通っている。たまには家の風呂にも入るが、やっぱり風呂は広い方が良い。

 そんなこんなで風呂上がりに牛乳飲んで肩にタオルかけて帰る最中に出店が並んでた。夏ともなればどこでも縁日を開いて、テキ屋が店を並べている。涼みがてらに覗いてくとかき氷を売っていたので、みぞれを買ってベンチに腰掛け食べる事にした。

 今日はちょっとした贅沢な夕涼みになった。今も昔も変わらず夕暮れ時には涼しい風が吹いてくる。時代は変われど、変わらないものってのもある。そんな事を考えながら、溶け出した氷水をすすりながら家へと歩き出す。

 夏の風呂上がりで火照った体に、今日一番の涼しい風が吹き付けた。

「こりゃ涼しいねぇ」

 夜の風はこれからとばかりに優しく吹き続けるのであった。


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 なぜ私は風呂に入っているのだろうか、なぜ私はかき氷を食べているのだろうか、私自身への疑問は尽きない。浴槽になみなみと張られたお湯につかりながら私はかき氷を食べているのだ。夏の暑さにやられたといえば、それなりに収まりもつくだろうが、決して暑さで頭がおかしくなった訳でも無ければ、後頭部を強打した訳でもない。事実としてお風呂に入りながら私はかき氷を食べているのだ。

 涼しい訳でも気持ち良い事でもない。しかし厳然として私は冷たい氷を口に運びながら、お湯で体を温められているのだ。いわば矛盾した状況を手にした氷が溶け出す事が物語っていた。湯船から立ち上がる熱気が手にした氷を溶かしてく、今や氷は水へと完全に変貌せん勢いで変化していく。

 本来ならこれには理由が添えられるべきである。そう理由が必要なのだ。だから私は説明しなければならない、そして語るべきなのである。そうあれは私が風呂に入ろうと思った時、ふと冷凍庫のかき氷が食べたくなったのだ。しかしかき氷を食べると浴槽に張ったお湯は溢れ出し、無駄にお湯を捨てる事になる。されとてお風呂上がりにかき氷を食べている時間は無いのだ。そこでかき氷を手に持ちお風呂に入ったのだ。

 幸いにもかき氷は勢いよく溶け出し、非常に食べやすくなり時間は短縮できた。食べ終わったカップは洗う事もできて、もしかしたら再利用の可能性も出てきたのだ。

 取り急ぎ風呂をあがり服を着て出かける。現代社会は実にあわただしく時間もない。かき氷を風呂場で食べるほどなのだから、どれだけあわただしいかは容易に推察できるはずだ。

 待ち合わせの時間が近づいてくる。しかし目的地の駅は遠い。携帯電話のアドレスを開いたり閉じたりしながら、被害の少ない言い訳を考える。これだけネットが発達しているのだから、言い訳全集とか無いものだろうか、そんな事を考えている内に待ち合わせの時間が迫ってくる。

『私臨月だから破水したので遅れる』

 待たせている友人にメールを送り、目的地に着くのを待った。席が空いたので座る事にした。

 …気がつけば眠っていた。目的の場所はすでに通り過ぎ携帯には嵐の様な着信履歴とメールが来ていた。どうやら怒っているようだが、私にはどうする事もできない。電車は終点で折り返すところまで着ていた。そのまま折り返し目的地へと向かう事にした。

 しかし妙な事に電車が遅い。それもそのはず快速は普通になっていた。慌てて乗り換えて目的地へと向かう。駅が近づき…なぜか通りすぎた。どうやら新快速に乗っていたようだ。また折り返して向かう。

 祈るような気持ちで向かったが、そこにはもう誰もいなかった。送られてきた最後のメールには『ふざこるな!』と微妙にキータッチのたりない内容が書かれていた。

『ごまんなさい』私も彼女に習いキータッチの足りない謝罪文を返信した。

 街頭に呆然と立つ私に車のクラクションと夏の涼しくて気持ちいい風が吹いてきた。

夏の風 三部作

こんな作品誰が読むんだ!

そんな声が聞こえてきそうです。蝉が鳴いてたり鈴虫が鳴いていたらごまかせそうなものの、残念ながら何も鳴いてないので、お叱りの声が丸聞こえです。

関係ないですが

あれ松虫が鳴いているって歌を、つい最近まで

荒れ松虫という虫だと思ってました。

馬鹿ですね、ええ、馬鹿です。

松虫はチンチロチンチロ鳴かねーよ!

荒れ松虫はそんな妙な鳴き声なんだろ!

そうだって言ってくれよ!

信じたくないんだ!

20年も信じてたんだぜ!いまさら違うってそりゃねーよ!

なぁ、嘘だって言ってくれ!お願いだから!


…すいません、つい取り乱してしまいました。

えーと何でしたっけ?

「こよくあご」「そまよもうで」でしたっけ?

…何の事かわからない?

失礼、ここまで読んでくださってありがとうございます→「こよくあご」

それではまた読んでもられると嬉しいです→「そまよもうで」

と言う略称だったのです。

驚かせてしまってもうしわけありません。

決して頭のネジがねじ切れている訳でも無く、配線が短絡してショートしてる訳でも

ましてや天然の人でも無いです。

…おそらく。

と言うわけで「こよくあご」「そまよもうで」サヨナラー♪

夏の風 三部作

ひとつのお題を連想して膨らまして、全部の語を盛り込んでみた練習品。最後以外は頑張ったつもり。

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2010-10-09

Copyrighted
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