報われないシンデレラと王子様
王子様
城を目の前にしたがどうすれば良いのかわからない。一時の感情に任せて出て行ってしまったが夜会に参加する勇気すらないのだ。
(幸せになりたくないのかい?)
魔法使いの言葉を思い出す。
(ここで行かなきゃ来た意味が無い。)
「行かなきゃ…!」
意を決して扉を開ける。
シャンデリアの眩しさに目をすぼめてしまう。目が慣れてきたところで最初に視界に入ったのはステージに座っている王子様とその隣にいるお姫様だ。とても幸せそうに会話をしている。
私は激しく嫉妬してしまう。何をしにここまで来たのかわからない。
(…悔しい。恥ずかしい。私はどうしてここまで来たのだろう。これ以上惨めな思いをするなら…)
帰ろう。そう思った時、私の耳に舞曲が聞こえてくる。そして目の前で沢山の男女がダンスをし始める。その光景に涙が出そうになったが私に目的を与えてくれた。
(そうだ…あの時のワルツを弾こう。)
私は一目散にピアノの前に行く。そしてピアノを弾いている男性に言う。
「私にピアノを弾かせていただけないでしょうか?」
「良いですよ、レディ。」
男性は紳士に席を譲ってくれた。
他のみなさんには申し訳ないが私の独断でワルツを弾く。最初こそ戸惑ったようだが周りは私に合わせてくれる。
(懐かしいなぁ…あの時王子様と踊ったワルツ。王子様は覚えているだろうか?いや、覚えていてもいなくても構わない。どうせこの心はあなたには届かないのだから。…でもこのワルツが、ピアノが王子様の耳に入っているのなら…私はそれだけで幸せです。)
ピアノに込めた思いが会場を呑み込み静まり返っていくのがわかる。
(あぁ…もうすぐ曲が終わってしまう。これであなたの顔を見ることもないのですね…王子様、大好きです。)
最後の一音と鐘の音が重なる。拍手と賞賛の声が響き渡る。お辞儀をして急いで城を出る。もう12時の鐘はなってしまったのだ。
(やり残したことはない。お姉様が帰る前に家に居なくては。ガラスの靴もしっかりと履いて…さよなら、王子様。)
目には少しだけ涙が溜まっていたと思う。魔法は解けかけ、ドレスが消えかかったとき
「シンデレラ!」
突然かけられた声。振り返るとそこに居たのは王子様だった。自然と涙が出てしまう。
「王子様…!来てくださって私はとても嬉しいです!私の気持ちが少しでも届いたのだと思うと…涙が…でも…」
もう魔法は解けてしまった。着古した服に裸足。ありのままの姿である。
「君は、先日村で会ったワルツの…」
「はい。私は田舎暮らしのただの娘です。そんな私でもあなたに会えてあなたを慕うことができて…とても幸せです!」
私は最後に告げる。そして王子様の目の前から姿を消す。
「王子様、お幸せに。…大好きです!」
おわり
報われないシンデレラと王子様
やっと完結することができました…小説は結構大変です。身分違いの恋というのも悪くありませんが現実うまくいくものではありません。結局王子様とは結ばれなかったですかシンデレラが幸せだと言っているのだからそれでいいんです。幸せは人それぞれです。
ありがとうごさいました!