海と魔法
貴方が、この碧色を
「綺麗」だなんて笑うから
僕はこの広い碧を
貴方だけのものにしてあげたくて
胡散臭い神様にもらった魔法を使って、
僕はこの小さなガラス玉に、
その大きな海を閉じ込めたんだ。
ガラス玉の中で、
ゆらゆら揺れる、深い碧。
「ほら、見て!」
君だけの海だ。
伝えようと、貴方のほうを見てみると、
そこには、誰もいなかった。
不意に頭を過ったのは、
『代償』という、その言葉。
僕の手のなかで
ちゃぽん と音を立てるガラス玉。
揺れ続ける深い碧のその中心には
眠っているあなたの姿がある。
貴方に見て、微笑ってほしかったのに
もうどうしようもないんだ。
海だったその枯れた大地に、
雫がひとつ、染み込んでいった。
海と魔法