海と魔法

海と魔法

貴方が、この碧色を

「綺麗」だなんて笑うから


僕はこの広い碧を
貴方だけのものにしてあげたくて

胡散臭い神様にもらった魔法を使って、
僕はこの小さなガラス玉に、

その大きな海を閉じ込めたんだ。

ガラス玉の中で、
ゆらゆら揺れる、深い碧。

「ほら、見て!」
君だけの海だ。


伝えようと、貴方のほうを見てみると、


そこには、誰もいなかった。

不意に頭を過ったのは、
『代償』という、その言葉。

僕の手のなかで
ちゃぽん と音を立てるガラス玉。
揺れ続ける深い碧のその中心には
眠っているあなたの姿がある。


貴方に見て、微笑ってほしかったのに

もうどうしようもないんだ。

海だったその枯れた大地に、
雫がひとつ、染み込んでいった。

海と魔法

海と魔法

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-02-01

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