The world is…

The world is…

ピィーッ
リモコンの電源ボタンを押し、エアコンを切る。
食べ残しのカップラーメンの臭いがツンとした。
18度に冷やした4畳半の部屋で僕は布団にくるまりエアコンを持った右手を布団から出したまま再び固まった。
10分後、携帯のバイブが5~6回鳴ったところで再び、のそりのそりと動き出す。
怠惰に打ち勝つように布団を勢いよく剥ぎ取り、チェ・ゲバラの顔が大きくプリントされたよれよれのTシャツを颯爽と着て、そろそろ臭いが気になるダメージジーンズを履き、サンサンと輝く太陽が眩しい外へと出る。
ガッチャン。ギィー。
年季の入ったアパートの二階から本日初の太陽を拝む。
太陽の光を手でかざし、薄めで睨む青の空。寝ぼけ眼には効果てきめんだ。

――暑い。それにしても。四方八方から蝉が泣き叫ぶ。
夏、これはまさしく夏。蝉に負けじと夏休み中の子供達がわーっと叫びながら遊んでいる。
薄っぺらな財布の中身を覗き見た僕は心の中でわーっと泣き叫ぶ。隣の部屋のおっさんはわーっと軍歌を叫び歌う。
それぞれの全く別の思いがこもった「わーっ」は大群のセミの鳴き声にかき消されていく。
人間はどれ一つとっても自然の力には勝てやしない。などと思いつつ、財布の中身を今一度確認する。
しかしそれにしても一体、どうなってる。4000円しかないとは。否、4000円しかないというのは理に適っている。
何故なら僕はどうして4000円しかないのかということを知っているからだ。それは僕の不摂生が招いた至極当然の結果なのだから。
しかしそれが分かっているのにも関わらず「一体どうなっている」などと呟いた。それは僕のエゴイストの極致たらしめる発言だ。
待ち合わせの場所へ行こう。早く、欲しい。早く、早く。体はそわそわする。心が疼く。アレが無いと、僕はもうシラフのままでは生きていけない。
僕は駆け足で駅近くにある、くたびれた神社へと向かう。
真夏の日差しが僕をねばねばにさせる。僕の汗に塗れたチェ・ゲバラは少し貧相に見えるかもしれない。ねばっとまとわり付くこれが嫌で夏はいつも裸でいたいと思う。
たまに裸のおっさんが町を彷徨いているが羨ましいといつも思う。僕ももっと人目を気にせずに生きたいものだ。それはきっと自由だろう。
明日食べるための金が無いことも、ねばねばにする不愉快も、アレさえあれば全て忘れさせてくれる。全身ねばねば塗れの僕は息を切らしてやっとの思いで誰も寄り付かないほどに色あせた神社へと到着する。
急ぎはすれど、既に遅刻なので奴はいた。澄ました顔をして大木にもたれ掛り携帯をイジっていた奴は僕に気付き声を掛ける。
「遅いよ」
僕はその声を遮るかのように声を荒げていう。
「4000円しかないけど3錠欲しい」
奴は澄ました顔から気色ばんだ顔になり、言った。
「俺はツケはしてない。1錠3000円だ」
僕は嘆願する。
「頼むよ。今まできっちり払ってきたじゃないか。僕は今まで優良な客だったろう?たまには我儘きいてくれよ。バイトクビになって金無いんだ。でもアレが無いとバイトをやる気もしない。そうなるともう金が無いから買えなくなるじゃないか」
僕は泣きそうになりながら奴の服にしがみ付いて言った。奴は少したじろいだ。
「分かった、分かった。今結構手元に余っているから、今回だけだからな」
奴がズボンの後ろポケットから出した3つのアルミチャック袋をすかさず奪い取り、代わりに3000円を奴の手に握りしめさせた。
そしてそのうちの1つの袋をこじ開けその中にあった白くて丸い、小さな錠剤を口の中に放り込んだ。奴はからかうかのように聞く。
「良い気分か?」
僕は少し威嚇した口調で言った。
「あぁ、20分後にはこんな白黒映画みたいに味気の無い世界とはオサラバさ。カラフルでジェットコースターばりに吸い込まれるほどの衝撃ある世界に浸るよ」
僕は何か今までの怒りがフツフツと湧いてきた。
居酒屋で酒に酔った連れがおっさんに喧嘩を吹っかけて殴りかかろうとしたところに割って入った僕がその連れにおもいっきり殴られたこと、仕事が遅いという理由だけでバイトがクビになったこと、由美に昨日別れ話を切り出されたこと。度重なる不幸を思い返し、怒りのエネルギーが内から火を噴いた。
残りの2つも袋から取り出し口の中に放り込んだ。
「おいおい、そりゃ過剰摂取ってやつだぜ。俺は知らんよ」
と奴は冷笑した。
僕は突拍子もなく走り出した。神社を抜け、駆け出した。走り出して5分後、耳鳴りらしきものがしてきた。
ィーンという音は鳴り止まず、次第にその耳鳴りらしきものは大きくなる。見えないが近くにある線路から電車が勢い良く通過する。
ガタゴトッガタゴトッという音と耳鳴りが共鳴する。電車が通過した後もガタゴトの音と耳鳴りの音は同じ速度で、同じペースで、同じ音量で鳴り響く。

ィーン ガタゴトッガタゴトッ

太陽の光を浴びた閑静な住宅街は平和な日本の象徴だ。それはとても穏やかな気持ちにさせてくれる。僕はその平和のシンボルの住宅街を風になって、駆け抜ける。
走っていると何処かのバカ犬が僕の走る足音にビクついてワウワウッと吠えてきた。ワウワウッという音も耳鳴りと電車の音と共に鳴り響いてくれる。

ィーン ガタゴトッガタゴトッ ワウワウッ

音達は愉快に鳴り続ける。どの音も喜びに溢れている。僕は住宅街を走る。ただ走る。
「ヨッシャァ!」
二階建てのアパートを通り過ぎた時に野球中継を観ているのであろうそこの住人から歓喜の声が聴こえた。続けざまにそのアパートのポスト前で「ア~ァ」と欠伸をするおっさん。

ィーン ガタゴトッガタゴトッ ワウワウッ ヨッシャァ! ア~ァ

5つの音たちは楽しそうに一斉に鳴る。そしてその音たちはただの音ではなく、お互いが意識をし合い、お互いの特徴を掴み合い徐々に音楽として形造り始めた。
それは僕の意識とは別に、完全に彼らは意識を持っていた。
住宅街を抜け、長い商店街を走り始めた頃には、彼らの奏楽は素晴らしく成長し、8ビートを刻むその演奏はそんじょそこらの高校のブラスバンドとはレベルを一線を画するほどの腕前だ。
僕は最高のブラスバンドを手に入れた。他の周囲の音は聴こえなくなり彼らがこの世界の音をまるで支配したかのようだった。
僕は最高の気分だった。何処まででも走れる気がした。世界の色が鮮やかに変色していく。青から緑へ。緑から紫へ。
僕はいつの間にか長い長い河川敷を走っていた。昼なのに信じられないぐらいでかい夕焼けがこの世界を赤く染め始めた。
それはまるで美しいを通り越して、何故か滑稽に思えた。笑いが止まらない。そして夕焼けにバッと虹降りかかった時に滑稽を通り越し美しくなっていた。
次は感動の涙が止まらない。僕の目から零れ落ちる涙は真珠のように輝いていた。液状の真珠と言っても過言ではないだろう。
我がブラスバンドは16ビートを刻みだした。世界は加速する。それに合わせて僕の足も速くなる。
我がブラスバンドが一体何処から鳴り響いているのだろうかとふと考えた。
その時に音の出だしが明らかに、あの今となっては世界を飲み込むほどに膨張した夕日からだと分かった。
前方にある夕日をマジマジと見つめた。すると夕日は驚くほど大きな口を開けていることに気づいた。あの口の中からブラスバンドの演奏が聴こえていたのか。
そんなことに気付いていなかった自分がなんだかおかしくて爆笑した。そしてこんなにも長い間走り続けているのにも関わらず、全く息が乱れていない僕は超人だと自覚した。
そら、見てみろよ僕の世界。嫌なことなんて一つも無い。ここには感動と笑いしかない。
そら、見てみろよ僕の世界。義務と責任で拘束されたセピア色の世界に住む憐れな奴隷たち。僕の世界ではやりたくないことなんてしなくていい。むしろ、やりたいことしか出来ないんだ。
河川敷の草花達は夕日の口から奏でるブラスバンド達の奏楽に合わせて左右に揺れ動く。


――どれほどの時間が経ったのだろうか。
世界は相変わらず派手にカラフルで夕日は緑、黄色、青、と色々な色へと移り変わりゆく。
ブラスバンド(夕日が歌っているだけなのか、或いはブラスバンド達に意識があるのか、既に良く分からない)も相変わらず素晴らしいメロディを奏でている。
しかし、少々飽きてきた。次のステップに行きたいところだが。などと考え出してすぐに、後ろから幼女の可愛らしい声が聴こえてきた。
「とうたん、とうたん」
そう、細くつたない声で言いながら、後ろからトテテッと追いかけてくる3歳ほどの可愛い幼女がすぐ後ろにいた。その幼女は驚くほど小さく15センチほどだった。
初めはか細い声だったが、その声は次第に大きくなりいつの間にかブラスバンドの音を完全に飲み込むほどの声量になっていた。そのうえエコーがかかり、まるでハウリングをしているかのように聴こえる。
走りながら、また後ろを振り向くと幼女は15メートルもあるかのように見えた。大きさがいまいち掴めない。自分自身が小さくなったり大きくなったりしているような気もした。
次のステップに移ったとワクワクした。いや、正直に言うとこの世界にはもうウンザリとしていた。
そのうえ少し恐怖も覚えていた。目的も意味も秩序も無く、ただの無法地帯だと感じ始めていた。
気付いたことがある。

この世界には愛が無い。
それは世界に、というよりも人間に最も必要な要素でありそれが無い世界とは一体。背筋がゾッとした。しかし、そう思いたくなかった。
もしそうだと気付いてしまうと、ここはおそらく地獄になってしまう。だから相変わらず笑っていた。僕が気付いたことに彼らに悟らせないために。この世界は愉快だと思い込むように努力した。

突如夕日が「キャハハハハ」と甲高い狂った女のような声で笑いだした。それは完全に僕を嘲る笑いだった。
ブラスバンドもそれぞれの音で嘲弄する。ブラスバンドの美しいメロディは崩壊し、耳につんざく不快音と変わり果てていた。
幼女は幼女で後ろから追いかけてきながらその大きさの実態は未だにいまいち掴めずにいて、僕のことをバカにしたような言い方で「とうたん、とうたん」と叫んでいる。
奴らに僕の心の動きを気付かれたのだ。もう駄目だ。全てが恐ろしくなり逃げるように走っていた。
しかし何処までいっても河川敷は終わらないし夕日は沈まないし、少女は追いかけてくる。足元にはいつの間にかムカデとミミズの大軍勢が地を埋め尽くしていた。
そして夕日は黒かった。世界はその黒で染まっていた。しかし夜のように暗いのではなく、まるで全てを見せつけているかのように明るかった。
奴らは僕を殺すのではなく、きっと僕を永遠に苦しめるのだ。この完全にイカれた世界が永遠に続くなんで想像しただけでも発狂しそうだ。
いや、気が狂えるなら狂いたい。そして何も分からなくなりたい。僕は恐ろしくて声をあげて子供のように泣き叫びながら懇願した。

「ごめんなさい。僕が間違っていました。お母さんたすけて。神様、本当の世界に戻してください」
しかしその声はブラスバンドと幼女と夕日のけたたましい笑い声によって完全にかき消された。僕は全てを後悔した。しかし、もう後の祭り。
後ろを振り返ると幼女は確かに10メートルほどの巨人となりその顔は皮膚の色が緑に変色し、溶け出し、溶けた皮膚が地面にボトボトと落ちていた。
骨や臓器が剥き出しとなりこの世のものとは思えないほどに気色の悪い笑みを浮かべて可愛らしい声は親父が痰を吐き出す時の「カーッ」というあの不愉快な音をそのまま声にしたようにして「とうたん、とうたん」と叫んでいた。
その幼女、否、元幼女、今怪物の物体に羽交い締めにされ僕は狂ったように泣き叫び暴れた。緑の粘り気のある液体がまとわりつく。その液体は死体が腐ったような臭いを放つ。
絶望、絶望、また絶望。

何時間と暴れただろうか。ふと真っ暗になり、辺りは静寂に包まれた。これほど無音に安堵したことはない。そしてパッと場面が変わる。
木造のくたびれた校舎の二階から校門が見える窓の外を眺めている僕がそこにはいた。

とちょうどその時、種類は分からないが何かの白い花びらが一つ、ふわふわと空中に漂っていた。僕はこの場面を知っている。それは確かにあった過去の現実。その記憶。
花びらは意思があるわけではなく、ただそのまま重力という自然の法則に従って地面にゆっくりと、優しく着地した。その儚い美しさはとても形容し難いものがあった。余りにも美しく思わず溜め息が出た。
おそらく、この花びらが空中に漂い、地面に着地した一連の流れを知っているのは世界中で僕だけだ。それがなんだかとても悲しかった。僕はそれを誰かと見て、同じように感動をしたかったのに。この世界は美しい流れがたくさんある。
悲しいのはそのほとんどが誰の目にも留まることなく過ぎ去り、この世界から消え去っていくことだ。儚いからこそ人の目には止まらない。しかし儚いからこそ美しさがある。
もどかしい現実。悲しいことではあるが、しかし確かに愛がある世界。闇があり光がある。ぬくもりがあるのは他者の存在のおかげだ。
世界は儚く残酷であるが、僕以外の誰かがいるからこそ、僕以外の全てを超越した創造者がいるからこそ、その中に愛という普遍的な美しさがある。
あの世界には愛が無い故に希望は無い。ただ僕を嘲り肉体的に、精神的にひたすら苦痛を与えるのち。
それはただ一言、地獄と言う。願わくば、もうあの世界には戻りたくない。
ブレザーの男子生徒達がふざけあって家と帰っていく。僕は机で頬杖をつきしばらくその光景を眺めている。
両手で体を支えながら僕の机にもたれかかる後ろ姿の女子生徒がいる。教室には僕とその女子生徒の二人しかいない。
友達以上という意識が芽生え始めた二人には心地よい、甘酸っぱい胸の痛みに満たされていた。
「卒業、しちゃうね」
僕は頬杖をつき、窓を眺めなたまましばらくの沈黙の後答える。

「」

喋ろうとしたところで全ての音が消えた。全てが白黒になり音の無い世界で僕の口は動いている。僕の口から出た言葉を聞いた由美は満面の笑みに変わる。
この世界が永遠に続くのなら、僕は全てを捨てても良い。そう思ったほどの美しい日だった。

テレビの電源を消したかのようにヒュンッと全てが消えた。また急に暗闇と静寂に包まれた。
ぼんやりと、ぼんやりと、新しい世界が現れる。
頭がぼうっとしあまり何も考えられない。全体の輪郭が徐々にはっきりとしてきた。

この世界は病室のベッドだった。あぁ。安堵の声が漏れた。
僕は現実の愛のある世界へ戻ってこれたのだ。右手に温もりを感じた。
由美が微笑をして僕のほうを見つめていた。由美と美しいものをたくさん見たい。
由美は僕に優しく一言声をかけた。

「おかえり」

僕はその言葉を聴いた瞬間青ざめた。まるであたかも僕が地獄の世界から帰ってきたのを知るかのような言い様ではないか。
しかし現実の彼女がそんなことを知るよしもない。すなわち、まだここは僕が創り出したイカれた地獄の世界。
やはり、この世界から抜け出すには奴等の隙を伺い、死ぬしかない。由美(に似た僕の妄想の中の怪物)が何かを喋りながら後ろを向いてリンゴを剥き出した。

チャンス。
おそらく、病室の窓は開けることが出来ないようになってるはず。
現実でもそうだったと思うがこの妄想の世界では僕を閉じ込めるのに必至だからなおさらのこと。
僕は突然もの凄い勢いで病室に備え付けのTVを窓ガラスに投げつけガラスをぶち破り、そしてそのままテレビと一緒に空へとダイビングした。
重力の法則に従い地面へと真っ逆さまに落ちてる瞬間、はっとした。この感覚はあまりにもリアリティがありすぎる。
もしや現実だったのでは。そういえば昔由美に話したことがある。
「アレをやると別の世界にいっちゃうんだよね。良い感じにトリップすると最高なんだけど、バッドトリップていうのに入ると地獄みたいになる時があるんだ。そのトリップはあまりに も怖くて死にたくなるんだよ。早く現実に帰って来れるように祈るしかないんだよなぁ」

由美はあの時の会話を思い出して「おかえり」と言ったのではないのか。
可能性は大いにあり得る。などと考えてももうどうしようも出来ないじゃないか。この状態こそまさに覆水盆に帰らず。
うーん、と考えても仕方がない。地面に激突した時に全ては分かる。この高さならまず間違いなく助からない。
僕の世界にしろ現実の世界にしろいずれにしろ激突した後に暗闇になる。その後永遠の闇なら、現実。また場面が切り替わるならば僕の世界。
さあ、どっちだ。どっちも嫌だ。


ズカンッ
と重い、重い、衝撃。口からオエッと何かがいっぱい出た。体が変な方向に曲がっている。
物事はいつも思い通りにいかない。即死だと思っていたのに、まさかまだ生きているなんて。しかしこの痛みの感覚、ほぼ間違いなく現実だ。
体は動かない。息がヒュウヒュウなっている。目の前に脳髄らしきものが少量散乱している。なんと自分の脳ミソをこの目で見ることになるなんて夢にも思わなかった。
人間の生命力はこんなにもしぶといものだったのか。人間は脆いようで強い。強いようで脆い。なんにしろ、もうお仕舞いだ。
死ぬしかない。 ということはこのまま、ずっと闇?
なんて虚しい人生だったのだろう。意識が朦朧としてきた。死の間際にはスローモーションになる時が或いは、あるというのは本当だ。
思えば、罪深い人生だった。良く考えると度重なる不幸は全て自分が蒔いた種じゃないか。それをあたかも人のせいにして、責任転嫁して。恥ずかしい。

そういえば今日、由美が十字架のシルバーのネックレスを付けていたのがやけに印象的だった。昔友達にクリスチャンがいた。
そいつが言うにはなんでもイエス・キリストは2000年前に無実にも関わらず十字架にかかったらしい。十字架というのはその象徴だとか。
全人類の罪の購いのためだとか。それを信じるだけで天国に行けると聞いた。自分のために死んでくれた神様なら信じたいな。
それに天国行けるっていうなら思いもよらぬ大逆転のチャンスじゃないか。困った時の神頼みとはまさに今。
こんな僕が天国に行けるのは気が引けるけど、この完膚なきまでの絶望的状況の最後のチャンスだ。僕は心の中で強く祈った。

(神様、僕の罪のためにごめんなさい。ありがとう。天国連れてってください。)

意識がもう駄目みたいで何も考えられなくなってきた。
意識を保つのが疲れてき、目を閉じようとしたまさにその時、僕のすぐ目の前に白い花びらが一つ、ふわっと着地した。
心臓は止まっているが胸が熱くなった。それはただ一つ、愛を感じた。
涙が一粒流れ、頬をつたい、アスファルトに吸収された。

そしてフェードアウト。



暗闇、でもしばらくしたら光。きっと。

The world is…

The world is…

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-01-31

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