泡になってさようなら
うたプリで嶺藍です。
嶺藍です。
「嶺二、本当にいいの?」
「なーに不安そうな顔してんのアイアイ!大丈夫だって!」
駆け落ちしよう。嶺二がそんなことを言い出したのはボクたちの人気が出始めた頃だった。
どうして?やっとアイドルになれたんだよ?嶺二は歌が好きなんだよね?
ボクの理解能力は追いつかなかった。
「ねえ藍。僕はね、君のために歌えればそれでよかったんだ。僕の歌で君を、ロボットじゃなく、人間にしてあげられる。そう思ってたんだ。だけどスターリッシュのみんなに出会って、ユニットとしての活動も人気がではじめて、君はどんどん人間になっていった。」
「僕以外の作った藍なんて、いらない。」
そう言った嶺二の目はどこまでも深く、海の底の様だった。
「それじゃあ明日、この場所で。待ってるから。」
「うん。また明日ね、嶺二。」
ボクは嶺二と別れた後、海へ向かった。ボクの中のプログラムが向かう場所を教えてくれるようだった。
「ボクはね、嶺二。キミがいればそれだけでよかったんだ。キミが歌って、笑っていてくれればそれだけでボクは他には何もいらないくらい幸せだったんだよ。」
「…人魚姫は最後まで王子様を愛していたから殺せないで泡になったんだよね。でもね人魚姫、キミは愚かだよ。例え濁ったとしても、最期にうつるのが自分ならそれでいいじゃない。ボクは、どんなに濁ってしまったキミも愛し続けるよ。」
「ごめんね人魚姫。ボクは王子様と一緒に泡になるよ。どうやらボクの王子様は魔女だったみたい。ボクを人間にしてくれる、唯一の存在。」
…
「藍、行こうか。」
ボクたちは逃げ出した。世界から、音楽から、そして世間一般でいう幸せから。
だけどそれでいい。ボクの世界にはたった一人しかいらないから。
さようなら世界。そして、はじめましてボクらの世界。
泡になってさようなら