7.「 」
???「前編」
???「"みっちゃん"、なんかおかしくない?」
みっちゃん「え? なにが? どうしたの"まいこ"」
まいこ「いやどうしたのって、すごく真っ暗じゃない」
みっちゃん「え? どゆこと? 真っ暗?」
まいこ「いやいや、真っ暗だよ。ほら、今私何してるかわかる?」
みっちゃん「何してるのまいこ、全然わからないよ」
まいこ「……みっちゃんも何も見えてないんだ」
みっちゃん「そういえば」
まいこ「ん? どうかした?」
みっちゃん「なんか世界が真っ暗じゃん!」
まいこ「だから言ってるよね、私」
みっちゃん「やばいよどうするの! なんで?」
まいこ「さぁ? 何がなにやら私にもさっぱりだよ」
みっちゃん「何が何やらさっぱり……?」
みっちゃん「そうだ! こうしよう! みっちゃんは両手で、まいこの肩を持つと、揺さぶった!」
まいこ「……え? あ、え?」
みっちゃん「どうかな! 私今見えないけど、すごくまいこを揺さぶってるよ!」
まいこ「わかったわかった! 知ってるわかるよすごい揺れてるからやめて」
みっちゃん「ほんと? すごい! なんでだろ! 不思議!」
まいこ「ちょ、だからやめてって……」
まいこ「あー、えっと、私はそうみっちゃんをなだめると、みっちゃんは揺さぶるのをやめた」
みっちゃん「おお! 体が勝手に止まったよ! 止める気なんてなかったのに」
まいこ「つっこまないよ……」
まいこ「だいたいわかったかもしれない」
みっちゃん「なにが?」
まいこ「このよくわからない空間のことが」
みっちゃん「さすがまいこ! 持つべきものはまいこだね!」
まいこ「えーっと」
まいこ「とある学校の教室にまいことみっちゃんという、この学校に通う女子高生が居た」
まいこ「まいことみっちゃんは、天井に明るい蛍光灯がぶらさがっている教室の真ん中で向かい合っていた」
みっちゃん「お? おおお! 学校だ! 教室だ! 見えるよ! って、まいこどうしたの? すごいよ?」
みっちゃん「影にまいこってかいてあるよ? ……あ、私も影だけだ、ふっしぎー!」
まいこ「みっちゃんにもみっちゃんってかいてあるね、影だけなのは人物の描写をしてないからかな」
まいこ「みっちゃんはショートカットの茶色の髪を持つ十六歳の女の子だ」
まいこ「まいこは背中を覆い隠すほどの黒髪をポニーテールにしている十七歳の女の子だ」
みっちゃん「おおお! まいこが見えるよ!」
みっちゃん「ハローまいこ! 調子はどう? ごきげんうるわしゅう」
みっちゃん「で、寒くないの? 何も着てないよ?」
まいこ「……ごめん服の描写し忘れたみたいだよ」
まいこ「みっちゃんは黒い革靴に、制服を着ていた」
みっちゃん「おおっ! 黒い革靴! 裸には、制服って書いてある!」
まいこ「一般的にセーラー服と呼ばれる種類の制服を着ていた」
みっちゃん「おおおお! 制服だ! ちゃんとしてる!
まいこ「これはすごいな……」
みっちゃん「すごい! すごい! どういうことこれ?」
まいこ「私にもわからないけれど、どうやら小説の地の文っぽく声に出して言うと、世界に描写されるみたいだよ」
みっちゃん「なるほど!」
みっちゃん「それより、まいこ寒そうだね」
まいこ「あ、私の描写忘れてたね」
みっちゃん「うん! まかせて! えーっと」
まいこ「まいこも同じ制h」
みっちゃん「みっちゃんは、まいこの声を遮った」
みっちゃん「そして、早口で続けた」
みっちゃん「まいこは甲冑を着ていた。全身銀色の西洋風の甲冑を着たナイトスタイルだった」
まいこ「重っ」
みっちゃん「すごい! まいこ甲冑着てるよ、ナイトっぽくてすごくいい!」
まいこ「ちょ、みっちゃん、すっごい重い」
みっちゃん「左手には鍋の蓋ほどの丸い盾を持ち」
みっちゃん「右手には一メートルの鋼でできた銀色のサーベルを持っていた」
みっちゃん「武器も持たせてみたよ、どう? 気に入った? 名は"聖騎士まいこ"」
聖騎士まいこ「…………」
まいこ「聖騎士まいこ改め、"まいこ"は左手に持っていた盾の角でみっちゃんの頭を軽く小突いた」
みっちゃん「痛ーっ」
みっちゃん「ひどいよまいこ」
まいこ「自業自得」
みっちゃん「ごめんごめん! ちゃんとしたのにするから睨まないで」
みっちゃん「まいこはとある国のお姫様だった」
まいこ「あの、ちょっとまって。それはおかしい」
みっちゃん「まいこが何か言っていたが、みっちゃんには届かない」
みっちゃん「まいこは上品そうな、レースがあしらわれた純白のドレスを着ていた」
みっちゃん「トレードマークの黒いポニーテールを解き、背中をおおいつくすほどの黒髪の上に、金ぴかの王冠をかぶっていた」
みっちゃん「名前は"まいこ姫"だった」
みっちゃん王子「まいこ姫は、みっちゃん改め、黒いタキシードスーツを着こなす"みっちゃん王子"に教室に呼び出されていた」
まいこ姫「…………!!」
みっちゃん王子「おおっ!!」
みっちゃん王子「まいこ姫よ! 今日も今日とてお美しい!」
まいこ姫「……おい」
みっちゃん王子「どしたのお姫様?」
まいこ姫「まいこ姫は、みっちゃん王子の右頬を左手で思い切り平手打ちをした」
みっちゃん王子「ふべっ」
まいこ姫「みっちゃん王子改め、"みっちゃん"はビンタされた衝撃で王子ではなくなって、普通のセーラー服の女子高生になった」
みっちゃん「うーひどい! せっかくかっこよかったのに戻ったじゃん!」
まいこ「"まいこ姫"改め、まいこはみっちゃんと同じセーラー服を着ている、ポニーテールの女子高校生だ」
みっちゃん「あーまいこ可愛かったのに、しかも髪も戻した……」
まいこ「ありがとう、いい体験できたよ。でもね、私この服装が好きなんだよ、結構ね」
みっちゃん「うー」
みっちゃん「それで、結局ここはどこなのかなー?」
まいこ「さぁ?」
みっちゃん「えー家に帰ってみたいドラマあるんだけど、これじゃ帰れないじゃん」
まいこ「テレビの描写をすれば?」
みっちゃん「私はリアルタイムで見たい派なんだよー」
まいこ「それなら」
まいこ「こういう場合、小説とかフィクションの世界なら夢オチのパターンだよね」
みっちゃん「夢オチ?」
まいこ「そう、実はこれは夢で、フィクションだったのです私は目覚めますーとか」
みっちゃん「なるほどなるほど! じゃあさっそく」
みっちゃん「これは実は、夢だったのだ。そしてみっちゃんは夢から醒めて現実に舞い戻る」
まいこ「…………!?」
まいこ「消えた……」
まいこ「夢オチにすれば帰れるのかな」
まいこ「…………」
まいこ「……………………」
まいこ「この教室にはまいこだけがいる。みっちゃんはさっき起きて現実に帰ってしまった」
まいこ「…………」
まいこ「まいこはあたりを見回したが、どこからどうみてもどこにも人は見当たらない」
まいこ「…………」
まいこ「よし」
まいこ「…………」
まいこ「まいこはトレードマークの黒いポニーテールを解き、背中をおおいつくすほどの黒髪の上に、金ぴかの王冠をかぶっていた」
まいこ「ふふ」
まいこ「まいこは嬉しそうに、一度ふわっと右回転した。ドレスの裾が軽快に空を舞った。それはそれは幸せなお姫様だった」
まいこ「ふふふ、かわいい」
まいこ「ふ、ふふふふ……」
まいこ「ふふっふふふひひっ……」
まいこ「……………………」
まいこ「なにしてんだろ、帰ろ」
まいこ「これは実は、夢だったのだ。――そしてまいこは夢から醒めて現実に舞い戻る」
「後編」誰かがそう言った
「ふあぁっ……」
午後五時四十八分、夕方の教室に女の子あくびの音が響いた。
「おはようまいこ!」
「……ん、みっちゃん」
セーラー服姿の黒髪のポニーテールの女の子がまいこで、同じくセーラー服姿のショートカットの茶髪の女の子がみっちゃんだ。
「ああ、私寝てたんだ。ごめんね、勉強中だったのに」
まいこの机の向かい側にもう一つの机があり、そこに座っているみっちゃんに
まいこが寝起きでぼんやりと謝罪した。
「いやいやいやいいよ! 私も寝てたし、それに」
そして一旦言葉を切る
「いいもの見られたしねー!」
みっちゃんはにこにこと笑みを浮かべそういった。
「いいもの……?」
まだ意識が明瞭になっていない頭を動かし、まいこはしばし考え答える。
「……ん、寝顔?」
「ぴんぽんぴんぽんぴんぽーん! 大当たりぃ!
それじゃあ正解者の方にはこれでーす!」
みっちゃんがかなりのハイテンションでそう言った。
そしてポケットからハンカチを取り出し、ぼんやりとしているまいこの口にあてて、よだれを拭きとった。
「きれいな顔が台無しだよ、お姫様!」
ポケットにハンカチをしまいながら、優しく微笑んだ。
「っ……! ちょ、それぐらい自分でできるよ」
まいこは少し恥ずかしそうに言ったあと
「でも、ありがとう」
そう礼を返す。
「え? まいこどうしたの? つっこまないの? 今すっごくボケたんだよ?私」
みっちゃんは驚いた顔でそう言った。
そんな顔は見ていないまいこは何かに気がついた様子で、
「え? ……見える! わかる!」
と、早口でまくしたてる。
「…………」
しばし黙りこむと、
「まいこは銀色の甲冑をきていた」
突拍子もなくそう言った。
「…………」
なにもおこらない、そして
「戻ってきたんだ私」
そうぼそっと言うと、
「どうみっちゃん。私何も説明も、描写もしてないけれど、見える? 今手を振ってるんだけれど」
早口で、すごく真剣そうに手を全力で振りながらみっちゃんに問う。
「見えてるよー、ねえ急にどうしたの? 大丈夫!? 起きてる!?」
やや心配そうな声で答えた。
それが耳に入っていないかのようにまいこは、
「なんだ夢だったんだ……よかった」
安心した顔で言った。
そしてみっちゃんは、首をかしげる。
「夢?」
「うんそう、ひどい夢なんだよ。なんでも、まいこは何々した~とかいう描写を言わないとろくに動くこともできない、めんどくさい夢でね」
まいこはさっき見た不思議な夢の話をした。
それを聞いたみっちゃんは、
「あ、まいこが起きる15分ぐらい前に起きたけど。私が寝てたときにその似たような夢をみたよ!」
と嬉しそうに言った
「え?」
「へ?」
二人して首をかしげた。
「なにそれこわい」
まいこが実直な感想を漏らす。
「あ! どこかで見たことがあるよ! 仲の良い人同士とか、兄弟、家族同士で同じ夢を見る不思議なことが実際にあるんだってー! 私達超仲いいし、なにかイメージの共有でもしてたんじゃないかなぁ?」
みっちゃんが知ってる素振りで言った。
「イメージの共有、か、それってつまり」
まいこが言った。
次に、
「「心が通じあってる証拠?」」
まいことみっちゃんが同時に同じことを言った。
そして顔を見合わせ、
「「ぷっ……ははっははは……!!」」
まいことみっちゃんが同時に笑い出した。
「ふっふへへへ!! 不思議なこともあるんだね!」
みっちゃんが嬉しそうに笑顔でそう言った。
「ふ……ふふ、そうだね、ふふ」
それにまいこがにこやかに返事をした。あとに、
「なんだろ、寝ぼけてるのかな…あははは」
みっちゃんの、
「あー! 時間やばいよ!」
という声で、まいこが時計を見ると、時計の針が2つとも一番下に重なっていた。
「六時三十分か。門が閉まる前に帰ろう」
まいこが言って、二人とも帰る準備をし始めた
そして教室の外のすっかり暗くなってしまった廊下を、みっちゃんとまいこは話しながら歩く
「結局勉強できなかったじゃん!」
「そうだね、でも試験は月曜日からだからまだ日はあるよ」
「おお! じゃあ明日は土曜日だし、今日はまいこの家に泊まろうかなー、徹夜で勉強会、どう!?」
「いいよ」
「それじゃ決定! 今日はお勉強会だー! お菓子いっぱい買っていくぞ!」
「……太るよみっちゃん」
そんなことを言い合いながら、みっちゃんとまいこは階段を下って行った。
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「ふあぁっ……」
午後五時四十八分、夕方の教室に女の子あくびの音が響いた。
「おはようまいこ!」
「……ん、みっちゃん」
セーラー服姿の黒髪のポニーテールの女の子がまいこで、同じくセーラー服姿のショートカットの茶髪の女の子がみっちゃんだ。
「ああ、私寝てたんだ。ごめんね、勉強中だったのに」
まいこの机の向かい側にもう一つの机があり、そこに座っているみっちゃんに、まいこが寝起きでぼんやりと謝罪した。
「いやいやいやいいよ! 私も寝てたし、それに」
そして一旦言葉を切る
「いいもの見られたしねー!」
みっちゃんはにこにこと笑みを浮かべそういった。
「…寝顔でしょ」
まだ意識が明瞭になっていない頭だが、まいこは一瞬で答えを言った。
「すごぉお! 一発で当てたね! それじゃあ正解者の方にはこれでーす!」
みっちゃんがかなりのハイテンションでそう言い、ポケットからハンカチを取り出し、ぼんやりとしているまいこの口にあてようとしたが、手遅れだった。
まいこは自分の水色のハンカチで口を拭いていたのだ。
「?」
きょとんとしてるみっちゃんにまいこは、
「もしかしてだけど、『きれいな顔が台無しだよ、お姫様』って言おうとした?」
と微笑みながら言い、さらにきょとんとするみっちゃんを尻目に、ポケットにハンカチをしまう。
それから、すぐにはっとして、
「…何これ、正夢?」
いつものように冷静に言ったあと、
「…怖っ」
そうひとりごちた。
7.「 」