時をかける商人

舞台は江戸末期の三重県津市。

秋晴れの津港、若い衆が船に米俵を急いで船に運び入れている。

秋晴れの津港、若い衆が船に米俵を急いで船に運び入れている。
「早く積み込まないと日が暮れてしまうぞ」 「へい」
太郎兵衛は津で採れた新米を大阪へ運ぶために伊勢中の農家からお米をかき集めた。
今年は去年からの冷害が続き、米はいつになく不作であった。
地元、津で米問屋を営む太郎兵衛は津の米を大阪に持っていき、高値で売り、
農家の皆に少しでも多くの手間賃を払ってやりたかった。
大阪では津や伊勢の倍の値段で米が取引されている。
たろべいは今年は勝負だと決め、手持ちのお金を全部はたいて、
お米を仕入れ、地元で一番大きな貨物船を手配していた。

「よし、これで最後だな、皆さん、ご苦労さんでした。
出発は明朝6時になるので、5時にこの港に来てください。」

「へい、わかりました。」

その晩、たろべいは明日に備えて早めに床に付いた。
丁度眠りかけたそのときである。
ドンドンドンと激しく戸叩く音がした。
「山下太郎兵衛はここに居るか。
津奉行所の坂上十兵衛門だ。
津港に停泊させている貨物船の米はお前のものか?」

たろべいは眠い目をこすりながら答えた。

「私が仕入れた米です。」

時をかける商人

時をかける商人

  • 小説
  • 掌編
  • 時代・歴史
  • 成人向け
更新日
登録日
2011-10-25

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