エゴイズム 第5話
ちょっと遠い未来。
その未来では超能力を使える人が少しいる。
ただ、まだ超能力者を知る人はまだ少ない。
そんななか、超能力を悪用する者もいる。
人知を超えた力に警察は、なされるがまま。
警察の権威がなくなりつつあるために、自衛隊が台頭。
自衛隊附属中学校、高等学校が続々開校される。
しかし自衛隊でも超能力者による犯罪に手を焼いている。
業を煮やした政府は賞金首制度を半ば強引に公布し施行した。
この制度により市民、軍人という隔たりはなくなりつつある。
このような混乱している時、上文(かみふみ)ハイツの永治幸平(ながやこうへい)たちは行動を起こすのであった。
4月14日 総務省からの贈り物
部屋に戻ると神津真帆がいた。
「ぎゃー! 女だー!」
「幸平君、その小学生みたいな発言やめなさい!!」
「あ、真帆さんか。すみません、人がいるなんて思わなくて驚いちゃいました」
「あのさ、何度も言うようだけど、さん付けしなくていいんだよ?」
「いや、年上の方には敬語を使うのは僕のポリシーです。正直、真帆さんなんて下の名前で呼んでいるのも結構妥協しているんですよ?」
「私は、さん付けされててなんか背中がムズムズするんだけどね」
「我慢してください。ところで、なんで僕の部屋にいるんです?会議とかなら誰も使ってない部屋でしますよね?合鍵も渡しましたっけ?」
「あれ、将さんから聞いてなかった?君の成績が悪いから教育学部の私が実習として幸平君のお勉強を見ることになったのよ」
「ええ?!そんなの聞いてませんよ?!僕の悠悠自適な素敵ライ」
ガチャッ!
ドンッ!
「いってっ!!!!」
「ああごめん、幸平」
将さんが勢いよくドアを開けて入ってきた。勢いが良すぎて幸平にぶつかった。
「さっき言い忘れてたんだが、お前、成績悪くなってきたから真帆に勉強見てもらうために部屋一緒にしてもらうからな。よろしくー」
バタン!
「はい、聞いたね」
「そんなー・・・」
「ま、いいじゃないの!こんなナイスバデーのお姉さんと同棲できるんだからさ!!」
「自分で言うことじゃない・・・。しかも同棲って・・・」
「はいはい、突っ立ってないではやく靴脱ぎなさいよ」
「ここ僕の部屋―!!!!!」
*
コンコン
「開けていいですよー」
「マフィン作ったんだけど一緒にどう?」
『え、なんか焦げ臭いと思ったらマフィンなの。いやでも拒否したら真帆さんのことだから殺されるかも・・・』
「いやね、殺さないわよ」
「え・・・あ!能力で!!」
「そうそう。もう君の心はバレバレよっ」
体をクネクネさせている。
「で、どうするの?」
にっこりとほほ笑む真帆だが目を見るとまったくもって笑っていなかった。
「陪食させていただきますぅ!!」
*
コンコン
「はーい」
真帆さんが出てくれた。来客はまた将さんのようだ。
「あれ、ノックだなんて珍しい」
「いやぁ、さすがに幸平にぶつけしまったからな。親しき仲にも礼儀ありってことで反省してるんだ。ほい、要件の届け物だ。これを幸平に渡してくれ」
「あ、どうも」
立方体に近い直方体が中にありそう小包を渡された。振ってみると何も音がしない。送り主を見ると総務省と書いてある。
「なんです、これ?」
「俺らの後ろ盾、総務省から黒いコートを着た人に渡してくれって通達がきた。中身は俺も知らん。あれじゃねぇの?スピーカーとかはいってんじゃねぇの?英語のリスニングがんばりなさいみたいな激励の意味で」
「そんな、総務省がわざわざするわけないじゃないですか!」
「「はははははは」」
「どうかしたんですか?」
幸平が来た。
「天下の総務省様がこれを君にだって」
「今、開けていいんですかね?」
「いいんじゃねぇの?俺はちょっと用事があって忙しいから自分の部屋に戻るぜ」
*
「あ、開けますよ……?」
「なんでそんな緊張してるのよ、こっちも緊張するじゃない」
「えぇ、だって総務省からなんですよね?なんか緊張するじゃないですか」
「なに言ってるの。男の子でしょ?もっと堂々としなさいよ。真帆お姉さんがついているんだし」
「はぁ、そうですか」
小包を丁寧に開けるとそこから立方体に近い直方体の形をした箱が出てきた。
中身を見ると黒と黄緑の時計と箇条書きのメモがでてきた。
『・これは総務省が某研究所に依頼し作成してもらった時計型物質転送装置、「ウォッチ」です
・試験運用のために永冶幸平氏に実地テストをしてもらい後でレポートを作成させていただきます
・この時計は上文ハイツの皆様にお渡したVWシステム反映用仮面の補助装置でもあります
・側面のスイッチを押すと文字盤が出てくるので文字盤を
「やばい、このメモ長い……」
「この小説の作者が書くのだるくなったから幸平に飽きさせるなんてひどい作者ね」
「え、小説?このメモ、小説なんですか?」
「なんでもないわ。ただの独り言。まぁ、説明書を読むのがだるいのなら習うより慣れろってことでじゃんじゃんつかっ
ていけばいいんじゃない?実地テストってことなんだし誤作動みたいなのがあればレポートにかけばいいしさ」
「あー、レポート……。書くの嫌だなぁ」
「大学生になったら嫌となるほど書くんだから練習だと思ったら?」
「頑張ります……」
「よろしい。あ、そうだ話変わるけどお腹すいてない?」
時計の針は8時を過ぎていた。
「お腹すきました! あ、でも今日、買い出しに言ってないので冷蔵庫の中、食材あんまり入ってないと思います」
「うーん、じゃあ、近くのファミレスで食べよう。私、ちょっと出かける準備するからちょっと待っててね」
「はーい」
ウォッチをかちゃかちゃいじり仮面と黒いコートを物質転送できるように認識させた。
これで真帆に黒コートを預かってもらったり仮面がなくて活動できないなんていうことはまずなくなるだろう。
このとき、幸平はウォッチを外すときは音声認証で手間がかかるということをまだ知らない。
「さて行きましょうか」
「はーい」
エゴイズム 第5話