僕の常識

僕の常識

目の前に女性の死体。窓もドアもない部屋。そこに佇む僕の手には血濡れの包丁。
……これは一体どういうことなんだ。僕は周りを見渡す。女性の死体に窓もドアもない部屋。あるのは……いや、何もない。テーブルもイスもあってもいいのに本当になにもない。あるのは、いや、いるのは僕だけ。しかも血が付いた包丁を持っている。それだけではなくご丁寧に服に返り血まで着いている。なんということだ。これでは僕が殺したみたいではないか。断固として言おう。僕は殺していない。何故なら記憶がないからだ。記憶がないから殺してない、とは限らない。なんて分かっている。少なくともそう言える根拠がある。何故なら体に異変がないからだ。と、いうのも体が覚えているという言葉があるように、僕は人を刺した感触が腕にないのだ。これは僕が僕のことを殺してないと信じられる理由のひとつになるだろう。
なら、誰がこんなことをしたのか。そもそもこの女性は誰なのか。うつ伏せで倒れているから顔が分からない。だが、この後ろ姿には見覚えがあった。まさか……と思うが十中八九そうなのだろう、と思い僕は死体に手を伸ばす。恐る恐る顔を持ち上げると眼を見開き恐怖と絶望が入り混じった顔をして絶命してる母親が生た。
僕は静かに彼女の顔を降ろすとため息をついた。僕は母親との仲は良くない。何故?と言われれば反抗期だ、と言っておこう。そういう年齢なのだ僕は。だが、困った。相手が母親となるとカッとなって刺した、という説も浮上してくるし、浮上させたがるのだマスコミといつやつは。
どうするか、悩みに悩み僕は包丁を母に突き刺した。背中から一突き刺しもう一回突き刺した。ぐちゃっと血肉が音を立てる。聞いてていい音ではないし、感触も気持ち悪い。これから牛や豚を食べる時は解体する人たちに敬意を払って食べようと思う。2回さしてわかったこととこれからしようと思ったことはそれくらいだ。あと、母を殺したのは僕ではないということ。やはり人を刺した感触は今さっきが始めてだ。さて、これからどうしたものか。そう考えると僕は急激に眠くなる。起きてから考えよう。そう思い僕は目を閉じた。

目の前には女性の死体。窓もドアもない部屋。手には血濡れの包丁。僕は首を傾げる。なんで2つも穴が増えているのだろう。さっきまでひとつだったのに。まぁ、いいや。大方、兄の恨みが具現化したのだろう。僕は勝手に決めつけ女性の死体を見つめる。双子の僕たちに性的虐待をし続けた母親。夢でくらい殺したって構わないよね。僕は微笑む。この夢が覚めないように祈りながら、そして起きたとき同じことをしないようにしないとと思いながら。

僕の常識

僕の常識

目の前に女性の死体。窓もドアもない部屋に血濡れの包丁を持ってる僕。……犯人は僕なのか? 思いつき突拍子小説。

  • 小説
  • 掌編
  • サスペンス
  • ミステリー
  • 青年向け
更新日
登録日
2014-01-24

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