嵯峨の月/平家物語より 小督の局幻想短歌
『平家物語』で有名な高倉天皇と小督(こごう)の局の悲恋を歌に綴りました。
高倉天皇の秘密の命を受け、平の清盛に疎まれて、嵯峨野のどこかに隠遁した小督の局を、笛の名手でもあった源仲国が、琴の音を頼りに探り出し、宮中に連れ帰る場面を歌にしました。九州民謡「黒田節」の「峰の嵐か 松風か 尋ぬる人の 琴の音か 駒引き止めて 立ち寄れば 爪音高き(又は、しるき) 想夫恋」の文句に出てくるあの場面です。
月の夜 笛に応えし彼の人の
手綱引く手に 落つる涙は (仲国)
柴の戸を 開けて迎えしその人は
笛の音聴いて 我と知りぬと(仲国)
満ち欠けし 月の如くか馬上の人の
行く末想えば 心乱れて (仲国)
美貌ゆえに 疎まれ給いしか
頭上の人よ ふと顔見れば 微笑返しぬ (仲国)
花の宴で まみえし折は 再び手事を交えんと
袖擦り抜けて 宮入り給う (仲国)
(その後、再び追放されて・・・。)
尼寺に 追われし人を慰めんと
笛持ち寄れば念仏の 声艶やかに唱え給いて (仲国)
一人夜の 手事哀しや 想夫恋
過ぎにし日々の 夢の宴に (小督)
この世とは 切れて儚き琴の糸
君との日々も 夢の彼方に (小督)
浄土へは 比翼 と成りて赴かん
誓いも虚し 夕焼けの雲 (小督)
このうえは 弥陀の情けにただ縋り
枕に誘う 君のもとへと (小督)
童より 愛おしみたる艶やかな
髪惜しまずや 白き衣に (仲国)
命とも 覚えし艶なる黒髪も
君なくしては すく枯れ尾花 (小督)
☆ この有名な『平家物語』での一場面、勇壮な軍記物に一花添える一方で、小督の局の部分は、後から創作されたのではという説もあるとか、事実であってほしいと思うのは私だけでしょうか。(いずみ)
嵯峨の月/平家物語より 小督の局幻想短歌