死にかけの夢

一、

 ――ぼくは夢を見ている、ぼくは夢を見ている。だっておかしいじゃないか! 自身の視覚がにわかに信じ難い。そう、夢を見ているに違いない! 心臓が今にも胸の中から飛びだして、そして、ぼく自身の胸は空っぽになってしまうのではないか。そう思われるほどに動悸が激しい。ヒウヒウと喉が鳴る音が聞こえる。
 いや、おかしい。夢にしてはおかしい。仮に夢ならば、頬に感じるこの熱気はなんだ! くたびれた運動靴の裏に感じる堅い、床の感触は? 額から頬を伝うヒヤリと冷たい汗は? おかしい。夢のあの独特な浮遊感がまるで分からない。まさか、まさか、目の前の鱗に覆われ、翼を持つ巨大で真ッ赤なトカゲ、いや、龍! そう、これは龍だ! こんなものが、現実であってたまるか。それにしたって、夢? 夢にしてはおかしい。
 龍はややうつむき加減のまま、その更に赤く、宝石みたような鋭い瞳をぼくに向けると、そこから大きく仰け反るようにして恐ろしい声で咆哮した。――あああああ! ()めて! ()めて! ぼくは訳の分からない叫びを上げて、両腕で顔を覆う。どうやら龍が重々しい足音をして此方へ向きを変えたらしい。その荒々しい息遣いが僅かに近づいた。
 夢? 夢なら、夢なら醒めてェ! ぼくはヨロヨロと二、三歩後退(あとずさ)りをして、その場へしゃがみ込んだ。恐らく、これは夢なんだ。夢ってやつはとんだ意地悪だから、きっとぎりぎりの死ぬ間際まで醒めないに違いない。そして次の瞬間ぼくはぐっしょりと汗をかいて、静か過ぎる朝の気配の中へ舞い戻るんだ。でも、万一、夢でないなら? ああ、分からない。地獄の責め苦のひとつみたいなものか知らん。
 その時、頭上を、風を切る音がした。顔を覆う腕の隙間から覗くと、宙を描く鋭い弧の先端が龍の赤く鋭い瞳へと吸い込まれるのが見えた。(やじり)は龍の眼球へ深々と刺さり、矢柄(やがら)が不格好に突き出ている。龍は地響きのような呻きを発し乱暴に首を振りまわした。そこへまた、頭上を、風を切る音がした。しかし今度は矢ではない。いや、何が通過したものか、判然としない。()()、というよりは、()()、とでもいう方がいいかもしれない。円弧のように湾曲したその気配は龍ののど元をかすめ、パラパラと数枚の龍の鱗をそぎ落とした。
 “あぶない!”うずくまるぼくの右手後方から注意喚起の声が飛ぶ。はっとして龍の頭部に目を向けると、失ったのとは反対の、やはり赤く鋭い瞳がじっとぼくを見据え、最初の咆哮の時のように一度天を仰ぎ見るように仰け反ると首を振り下ろすようにしてその大きな口から火を噴いた。火、なんてものじゃない! あれは炎だ! 炎? ――この時ぼくは一瞬のうちに、夢から醒めたように錯覚した。そしてその錯覚は寧ろぼくの()()が、まさに()()であることを意識させた。周りの景色は相変わらずで、ぼくの目により現実的に映る。炎、炎。連想される記憶が一つ。まるで不気味な薄明の、カンバスに朱色の油絵具をぬったくったような鰯雲。その空を一片切り取って鏡に映したように煌煌と輝く一つの()。――そんな光景が一瞬のうちに目の前の龍の噴く炎と重なり合い、非現実的光景の中に非現実的幻影を描き出した。
 それからアッという間に炎はぼくの目の前に到達するとぐるりと視界を明るい朱色の鰯雲で包み込んだ。ふんわりとした炎はみるみるぼくの身体に巻きついて、これでもかと乱暴に撫でまわした。――あああああ! 痛い、痛い! 無茶苦茶に暴れて炎を振り切ろうと躍起になるもまるで効果がない。寧ろ爬虫類の舌の如く素早い動きでぼくの必死の抵抗を阻止しようと腕に、足に、首に巻きついてくる。そのとき、先刻(さっき)の不可思議な()()がぼくの足元に飛び込んできた。その気配が意志を持って足元で躍り上がると、一瞬炎はその気配の周りから遠ざかって行った。その一瞬のうちにぼくは苦しい呼吸を整えようと深く息を吸い込んだ。喉が溶け出したように痛む。精一杯に叫びをあげたつもりがまるで音にならない。
 “おい、なにしてる! どこへ向かう! 死にたくないだろう?”先程の声が少し遠ざかって聞こえる、聞こえる。まだ、確かに声が聞こえる。しかし、ぼくは喉が潰れてしまったらしい。返事も出来なければ、首肯すらできない。首肯すらできない! 何と、身体までもがいうことを聞かない。身体は……ぼくの意志とは無関係に声から遠ざかるように無理に炎の中心――龍の口!――へ向かってゆっくりと突き進んでゆく。――あああああ! 厭だ! 厭だ! ぼくはそっちに行きたくない! 身体と意識は既に一つでない。だた、身体は痛みばかりを意識に無理矢理押しつける一方的な関わりになり果ててしまった。
 “おい、まだ生きている! 中だ! おうい、おうい”聞こえるたびにその声は遠ざかる。朱色と黒の不安定に入り乱れた視界がふとした瞬間にぐるりと廻って歪んだ景色が二重に意識された。同時にその片方の視界は炎に(えぐ)られ煤に汚れた赤い頬を写し、溶け出してじんわりと血のにじんだ首筋を写し、黒い炭みたようにボロボロと崩れ始めた胸を写し、そうして落下していった。ぼくの身体はやはり龍の口元を目指していた。重なる二つの視界に酔い、酷い吐き気がさらにぼくの意識に押しつけられる。――死んでくれろ! 死んでくれろ! あああああ!
 突然片方の視界が開けた。朱色のカーテンをふわりと開くように眼前の色調が一変し、そこに一人の横たわる人間の姿を写しだした。先刻までの動的な炎の気配とは対照的に静的な、ホワイトキューブみたように不気味な蒼白い気配の中の黒く沈んだような人間。真ッ黒い顔、真ッ黒い首筋、真ッ黒い胸、真ッ黒い腹、真ッ黒い腿、真ッ黒い脛、真ッ黒い踝。その所どころに、粗い(やすり)で金属メッキを剥がしたように淡紅色の抉れた肉片を覗かせている。その形から辛うじて女性であろうと判別の付けられる人間は、不可解なことに呼吸で肩を上下させ、その場から起き上がろうと腕を立てている。――あの人は、生きているらしい。ぼくの身体はその場に立ち止まり、その片方の視界によってその人間の姿を捉えていた。黒く炭化した細い指はその身体を支えきれずに花林糖みたような破片を辺りに散らばしながら崩れ落ちる。因ってその上から身体が落ちて苦しい音を立てて横たわる。すると、再び起き上がろうと腕を立てる。しかし、崩れ落ちる。仕舞いには手首から先を失い、その先に乾いた血をべったりと張り付けながら我武者羅に起き上がる努力をし、やはり崩れ落ちてそのまま動かなくなった。
 ――あの人は、あの人は一体誰だろう? ぼくはその女性に何処か親しさを感じていた。分裂した視界の落下した片方は完全な暗闇に変わっていた。不気味なホワイトキューブを写しだす視界も徐々に鮮明さを失いつつある。――あの人は、知り合い? 親戚? 分からない。この親しみはどこから来るのか知らん。
 ぼくは最後に何か大きなもの――龍だろうか?――の倒れるような音を聞いて、完全な暗闇の中に深く深く沈みこんでいった。

二、

 左頬に当たる何やらギシギシとした感触でぼくはどうやら寝惚けているなという自覚を得た。身体は不安定なクッションに横たえているみたようにどうも身動きが取れない。――ああ、起きなくちゃいけない。ボンヤリと視界が開けてくると、眼前に古ぼけた深紅の布が迫っていた。微睡みから抜け出せない意識が、これは一体どんな()()だろう、と我ながら不可解な謎掛けをしてぼくはううん、など唸った。
「お、目が覚めたかね」
 突然、眼前の布の向こう側から声がした。この声でぼくはさっぱりと目を覚まし、首を捻って辺りを見渡した。ぼくは幾らか昔風の洋間、それも恐らく、応接間の来客用のソファの上に寝ていた様だった。ソファの正面に焦茶色に木目調の洋卓があり、その先に一人がけの深紅の布張りの椅子が置かれ、さらにその先にそれらの家具と色調が揃えられた張出窓(はりだしまど)と束ねられたカーテンがある。窓硝子は格子状に仕切られ市松模様様に磨硝子がはめ込まれている。しばらくその窓から見える曇り空――一様に白っぽいがためにそう思った――を眺め、それからゆっくりと視点をもとに戻す。眼前の深紅の布はソファの背もたれのクッションであり、声の主はその向こう側にいるに違いない。僅かに顔を擡げて()()()()を覗くと、四、五十の年恰好に多少白髪交じりの背広の男が静かにぼくの方を伺っていた。
 ――さて、どうしたものだろう。ぼくは視覚、聴覚、その他ありとあらゆる感覚器官を通じて知覚し得るべき情報が、いまいち明瞭に意識し得ない。これもまた、白昼夢の続きか知らん。この古ぼけた洋間は? あの背広姿の紳士は? いや、それどころか、あの真ッ赤な龍の噴く炎の幻影は? それらは何を意味し、ぼくは何を感じるべきなのだろう。
「よろしい、目が覚めたなら、よろしい。早速、君は幾らか決断を下さなくてはいけない。これからもう一眠りするとよい。そうして、またここで目を覚ますようならば、その時は私に任せなさい。心配はいらない」
 紳士の言葉を聞いて、ぼくは身体をしっかり起こそうとした。しかし、左半身が痺れてしまってまるで言うことを聞かない。アッと声を上げてソファに倒れ込んでしまった。
「すみません、妙な具合で寝ていたんで、身体が痺れてしまったようで……」
 しどろもどろに言い訳をしながら再び顔だけを擡げると、紳士は穏やかな顔つきをしていた。
「きっと、左腕だろう。よろしい、よろしい。心配はいらない」
 その()()()()はぼくを不安にした。紳士の語り口に滲み出る不可解さ――まるで、ぼくが全てを把握しているのが道理だとでも言う様な毅然たる対応。またそうかと思えば、混乱するぼくの意識を察し、それがさも当然のこととして接する余裕綽々な態度。――も相まって、ぼくはガタガタと震え出した。何とかこの不安を抜け出そうと必死に震えを抑えながら、ふと浮かんだ疑問を口にした。
「あなたは?」
「私かね? ……ううん、いや、いや、はぐらかすつもりはないんだがね。私より、まずは君自身のことだろう」
「ぼく自身……」
 ぼくははっとした。ぼくは目の前の男やこの部屋のことは愚か、自分自身についてもまるで分からないのだ! これは、夢か幻影みたようなものだろうか。もしそうなら、まるで手に負えない。自身について自覚せざる夢中に自身を見出だせようか? いや、ことによっては、夢や幻影でないのかもしれない。それでは今実感しているこの、思う様に知覚出来ない世界は?
「すまないね、混乱させてしまったようで。しかしね、君はそんなことまで引っ括めて心配いらない。私は君がもう一度ここで目を覚ました暁には準備を万全に整えてあることを約束するよ。何にせよ、君はもうひと眠りしなくてはいけない。いいかね」
「え、いや、ぼくは……」
「よろしい、よろしい。さぞ不安だろう。しかしね、焦る必要はない。兎にも角にも君はもう一眠りしなくてはいけない」
「……でも、眠くないんです。これじゃあ、眠れやしません」
 紳士は腕を組みうん、と唸った。
「それあ、困るね。君は是が非でも眠らなくてはいけないんだ」
「ぼくは、混乱しています。非常に。ここは何です? あなたは、実在ですか?」
 ぼくの問いかけに紳士は一瞬()()()()として目を見開いた。今までの余裕綽々な態度が一変したのにぼくはひどく面喰ってしまった。――とんでもないことを聞いてしまったのだろうか知らん。しかし、直後に紳士は然も可笑しそうに肩を震わせ、それから愉快に笑い出した。
「ははは、いや、失礼。はは、これあ愉快愉快。私が実在か? うん、難しい問題だね。混乱していると言いつつ中々気の利いた事を言う。実在とは? はは、これだけで話のネタになってしまうね。いやはや、参った参った。私自身あまり気の使ったことのない主題(テーマ)だね。うん、よろしい、よろしい。考えてみよう。例えばの話だがね、目の前に机がある。無論この机は君自身の視覚に因って捉え得る存在であるという意味だ。しかし、君はその存在を疑う訳だね。この視覚は信用に値しない。或いは幻影を見ているのかも知れない。そこで、君はその机に触れてみる。そのこぶしを以って叩いて、その音を聞いてみる。或いはその香りを嗅ぎ、或いは舌を以ってしてその味を、確かめてみる訳だ。仕舞いには机そのものについて考察してみる。机とは? しかしね、君がその存在について疑っている以上、その実在を証明することはできない。君自身が君自身の主観性から逃れることは敵わない訳だからね。うん、どうだろう? 私が実在かどうかと問われてもどうしようもないことだろう」
 今度は、ぼくが()()()()とさせられる番だった。ぼくは、どちらかというとこの応接間以前の、龍と炎による妙に写実的な世界に対比してあまりにこの応接間が非現実的であることを指摘したかったのだ。しかし、よくよく考えてみるとこの目の前の紳士は、直前のぼくの夢――夢?――を知り得ないのだ。とすると、確かにぼくは随分と奇妙な問いかけをしてしまったらしい。
「……で、眠れやしないと言うのだね?」
 ぼくが、腕を組みつつうんうん言っていると、そっと気遣うような口調で紳士が尋ねた。
「ぼくは、もっと表面的なことを言っているんです。ぼくは……」
「よし、こっちへ来なさい。もういい加減身体は動くだろう。何か、温かい飲み物でも淹れようじゃないか」
 要領の得ない返事を続けていたぼくに対しきっぱりとそう宣言すると、紳士は応接間の入り口をくぐり抜けて部屋の外へと姿を消した。ぼくは大慌てでソファから起き上がり、もう一度辺りを見渡した。古めかしい応接間はやはり真紅と焦茶に統一のとれた落ち着きのある色調をして、古めかしく重々しい威厳を有している。戸の閉まる音がして、はっと我に返るとソファの下に一足の屋内履きを見つけてそれをつっかけながら紳士の後を追った。このときある事象がぼくにちぐはぐな印象を抱かせた。紳士のきっちりと決まった背広に対してぼくは幾分大きく白っぽい寝間着を着ていたのだ。
 ――ぼくは、一体何だろう? この家の主か知らん。しかしあの紳士は? ぼくは入り口に近い来客用のソファに寝ていた。ということは、客人か知らん。いや、何れにしても寝間着とはおかしい。ぼくは病人なのだろうか? 高熱を出して頭の中がすっかり空っぽになってしまったのかもしれない。いやいや、それではあの紳士の様子がいまいちおかしい。やはり、夢を見ているのか知らん。様々に考えを巡らせながら応接間を出て右手へと進む紳士の背中を追う。どうやら、この家は応接間以外の一階はほぼすべてが和室になっているようで、廊下には襖がずらりと並んでいる。それらの横をすり抜けて廊下の突当りまで来ると左手の階段を上った。この階段というのが中々窮屈なうえに傾斜がきつく、室内履きに寝間着の裾を踏ん付けて何度も転がり落ちそうになった。
 二階は、どちらかというと屋根裏といった印象の一部屋になっていて、部屋の半分が屋根の傾斜に合わせて斜めに抉れている。天井の高い方の壁には一面に本棚と戸棚が並び、その奥に小さなコンロと()()が据え付けられている。それらの隣に一つ大きな机が置かれ、机の上には資料が散らばっている。紳士は部屋の中央に置かれた洋卓を示すと、そこに座っていなさい、と言った。
「ココアで構わないかな? 紅茶も珈琲もあるが、余計に目が冴えちゃ敵わないからね」
「ええ、構いません」
 紳士は片手鍋をコンロに置き、マグカップを二つとバンホーテンの缶を戸棚から引っ張り出してくると、鍋の中に匙に数杯ココアと砂糖を入れて水でよく練り、瓶の牛乳を二本その中へ空けて火にかけた。
「この部屋は、あなたの書斎ですか?」
 自分に関して考えると、今以上に混乱してしまいそうなのを恐れて、ぼくは部屋について尋ねた。紳士は、まぁ、そんなところだろうと簡単に答えた。――なるほど、この家はどうやらこの紳士の家らしい。とすると、ぼくはやはり客人か、居候か、家族か……この紳士の対応も中々に気がかりだ。家族と言うには他人行儀な気もするが、客人が寝間着で主人が背広を決め込んでいるとなると、ぼくは随分と図々しい客人だ。これも妙だな。
「さて、これで少し落ち着きなさい」
 両手にマグカップをもった紳士が洋卓の所へやってくるとぼくの前とその反対側にそれぞれマグカップを置きつつ、ぼくの向かい側へ腰かけた。この時のマグカップを洋卓に置く音が妙に現実的に且つ印象的にぼくの耳に響いた。ココアは滑らかに口の中でほどけながら微かな甘味と独立した苦味を舌に残し少しずつぼくの身体を温めていった。
「あなたは先刻(さっき)、ぼくに眠らなくてはいけないと言いました。何故?」
 気持ち良さげに目を閉じ、音楽の後の余韻を楽しむようにココアの一口々々を確かめていた紳士はゆっくりと目を開きながら慎重にこれに答えた。
「君は……また夢を見るんだ。いいかね。その夢は君にある決断を迫ることになる。無論、君は夢を見ている訳だから、その決断の詳細を終始知ることはない。うん。そうだ。君は決断することを自覚し得ない。君は自然とその自分自身が下した決断によって目を覚ます」
「まるで要領を得ません。もう少し噛み砕いて、具体的に教えてくださいよ」
「いけない。それはいけない。君は詳細を知らないことによって正しく決断することができる訳だよ。つまるところ、決断するのは君の本質だ。夢とは即ち本質だ」
「しかし、夢は記憶整理の役割を果すのでしょう? それならば、夢とは表面的な意識にこそ深い関連があるのではないでしょうか?」
「さあてね。私に聞くのは止しなさい。まず、君は一旦眠らなくてはいけない。そして、その夢の中で君は知らず知らずの内に決断を下すことになる。それ以上の事は聞く必要がない。いや、聞いてはならない」
 紳士の頑なな態度にぼくは質問を諦めた。
「ぼくは、先刻夢を見ていたんです。不思議ですね、ぼくには寧ろ今現在の方が夢中みたように思われてなりません」
 うむ、と紳士は唸りをあげて眉間に綺麗なしわを寄せると、それは常に混乱している、と答えた。
「君が夢を見ている状態を自覚するとき、君は夢を見ているのかもしれない。しかし、必ずしも夢中にいる自身が自身の作り出す幻影である可能性について常に意識することは無意味なことだろう。目が覚めていようと眠っていようと、すべての認識は一人称だからね。私は私の」

死にかけの夢

死にかけの夢

夢と死についての諧謔的なファンタジーにしたいと考えています。 今までとは文章の趣向を変えて、すらすら読める文体を目指しています。 継続して書き続けるかは分かりません。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • ミステリー
  • 青年向け
更新日
登録日
2014-01-20

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 一、
  2. 二、