君ハイツモ レモンティーノ香リガスル

君ハイツモ レモンティーノ香リガスル

彼女はいつもレモンティーの香りがする。
彼女が側に来ると、ふわりと香るレモンティーの香り。
甘酸っぱく優しいその香りが僕は大好きで、けれど、いつもレモンティーの香りがするね、とはとてもじゃないが言えない。そんな事言ったら、いつも彼女の香りを嗅いでいる変態になってしまうではないか。

大学に入ってから知り合った彼女はいつもレモンティーを飲んでいる。
教室でも学食でもいつでもどこでも。

レモンティーがよっぽど好きなんだな、と感じる。
いつも飲んでいるから、だからレモンティーの香りがするのだろう。
そう僕は思っていた。
珈琲が好きな僕は珈琲の香りがするのだろうか?ふと考えて自分をクンクン嗅いでみても珈琲の香りはしないのだが…

ある日大学の帰り道が一緒になった彼女が、コートのポケットから手袋を取り出そうとした時に、何か丸い物がコツン、と転がり落ちた。

僕が拾い上げてみるとそれは丸いアルミのケースで、何か気になった僕は蓋を開けた。
すると、ふわりとレモンティーの香りがした。

「それグリーンティーの練り香水なの」

そうか、だから彼女からいつもレモンティーの香り…ではなくグリーンティーの香りがしていたのか。グリーンティー、と言うよりは僕的にはレモンティーの方がしっくりくるのだけれど。

レモンティーばかり飲んでいるからレモンティーの香りがするのだと思い込んでいた自分が可笑しくなって少し笑ってしまった。

「どうしたの?」
不思議そうに見つめる彼女に僕はやっと言える事が出来た。

「君はいつもレモンティーの香りがする」

「レモンティーじゃなくてグリーンティーなんだけどな」
笑いながらそう言う彼女からふわりとレモンティーの香りがした。

君ハイツモ レモンティーノ香リガスル

君ハイツモ レモンティーノ香リガスル

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-01-19

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted