ウロコのつばさ

キシモトチエ

 ある ふかい うみのそこに さかなの おやこが すんでいました
 おやこは きらきらひかる なないろの うろこを まとって います

 おやこが ひらひら およぐ すがたは そらに かかった にじのよう
 しんかいにすむ いきものは みんな にひきを うっとり ながめます

 さかなの ぼうやが じゅっかいめの たんじょうびを むかえた ひのこと
「きょうは すいめんまで あがって みましょう」と おかあさんが いいました
 ぼうやは
「ぼく ずっと ずっと あかるい うみを みたかったんだ!」と おおよろこび!
 おやこは まっすぐ すいめんへと むかいました
 はじめての ぼうけんに ぼうやの むねは ふくらんで ドキドキ わくわく ときめきます

 とつぜん くらい うみに しろい ひかりが ふりそそぎ おやこを あたたかく つつみます
 ぼうやは はじめて ひのひかりを あびて めが まっしろに なりました
(これが ひかり!)
 ひかりの なかで おやこの からだは しんじゅのように ぴかぴか ひかって いままでで いちばん かがやきました

 ぼうやは すいめんから かおを だして そらを みあげます
 すると ぼうやの まわりを たくさんの とびうおが とびこえて いきます
 しゅわっ しゅわっ しゅわっ
「みずべにようこそ!」と おやこを かんげい しています
 とびうおを みたことがない ぼうやは そらをとぶ さかなに びっくり!

 かいていに もどった ぼうやは
「ぼく とびうおに なって おそらを とびたい!」と おかあさんに ねだります
 おかあさんは にっこり わらって
「それなら つばさが ひつようね」と うろこを つくろい うなずきました

 それから おやこは うつくしい うろこで つばさを つくり はじめました
 ぼうやは すなに おちた うろこを ひろいあつめ おかあさんは うろこを ぬいあわせます

「できた!」と ぼうやが さけびました
 きらきら ひかる うろこで つくった つばさの かんせいです!
 おかあさんは つばさを ぼうやの かたにのせ
「あしたは さっそく みずべで とぶ れんしゅうを しましょう!」と おおきなこえで いいました
 おかあさんも なんだか たのしそうです

 あくるひ おやこは みずべに いきます
 そして ぼうやは つばさを せおい めいっぱい いきおいよく すいめんに むかって およぎます
 みずしぶきが わっと わきあがり ぼうやは あおい そらに まったのです

 ぼうやは なんども なんども れんしゅうして ずっと ずっと とおくまで とべるように なりました
 おかあさんは そのようすを みずべで じっと みまもります
 めには なみだが たまっていました
 かなしい わけでは ありません
 とっても ほこらしいのです

 ぼうやは くるひも くるひも むちゅうになって そらを とびました
 とびうおたちも みんな なかまです
 ぼうやは もう ひとりで みずべに むかいます
 おかあさんは すこし さびしげに でも えがおで ぼうやを みおくります

 ぼうやの からだは すっかり たくましく なりました
 おかあさんは もう ぼうやを ぼうやと よぶのを やめました
 むすこは ほとんど おうちに いません
 よるおそく かいていに もどってきては
「ここは くらくて きらいだ」と くちに するように なります
 おかあさんは ひとりきりで だんだん くらい きもちに なっていきました

 やがて おかあさんは びょうきに なって しまいました
 そして あるあさ むすこに こう つげます
「あの つばさを かあさんと おもって たいせつに してね」
 むすこは おおごえで なきさけびました

 むすこは おかあさんを だいて みずべに むかいます
 そして つばさを ひろげて おかあさんと いっしょに たかく たかく そらを まったのです
「かあさん ありがとう ありがとう」

 むすこの うでのなかで おかあさんは あさやけに きらきらと ひかりかがやいて おうごんのように うつくしかったのです

ウロコのつばさ

いかがでしたか?
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「青い鳥と死神の長い夢」http://slib.net/27049
「青光列車」http://slib.net/26769

ウロコのつばさ

子供は成長とともに、母のぬくもりから巣立っていくものです。 それは互いにさびしいことだけれど、でもそこに確かなものは存在すると思います。 少なくとも、親はそれを信じていてほしい。 文章は小さいお子さんにも読めるようにしましたが、 本当はもっと大きくなってから読むと、じんわりくる内容だと思います。

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