深海の蜘蛛
深海に広がっていたのは、何もかも絡め取る蜘蛛の巣だった――。
蜘蛛は巣を作る
雨が降っていた――。
深い海の底にいると気分が高揚する。何もかも放り出して自由になれるから
ずっと底にある財宝を取ることもしないでただただ潜る
気分は最高、笑みが止まらない それでもやはり
「こら西崎、何を寝とるんじゃ」
――現実は深海にあるのだ。
西崎 優 15歳 男子の場合
「ちゃんと先生の話聞きんしゃい」
「・・・はい」
最悪だ。すごく深いところまで潜れたのに、気分は底辺まで真っ逆様だ。
眠たくなるような爺さん先生の話なんて耳に入ってこない
大体なんで、なんで僕だけ注意されたのかが理解不能だ。不公平だ。不平等だ。理解に苦しむ。
そんなことを思っていても仕方がないことぐらい分かってるが、思わずにはいられないというのが人間だ
それでも、睡魔という悪魔には勝てなくて、再び寝入って怒られてしまうものなのだ
***
「あとで職員室来いな、いいな?」
「今日は用事があるのでやめていただけますか・・・」
さりげなく逃げたい
「なんじゃ、家の用事か?」
「はい、そうなんです。母に早く帰って来いって・・・・」
「なら、先生が連絡しちょるわい」
「えっ」
それは困る。非常に困る。これはあれか、あれなのか?
「・・・・・・・・・・自分で連絡するので結構です」
諦めが肝心という事なのだ。
どうせあの爺さん先生は会議で遅れるのだ、毎回毎回。
普通の生徒ならここで友達を犠牲にして一緒に騒いで待つのだろう
そう、普通の生徒なら
誰も居ない教室。テスト一週間前は部活が無いからとても静かな校舎。
この時、学校には僕しか居なかった
だから僕はまた、深海に潜るのだ
いつもと違ったのは、視界の端に見えた細い透明な糸の存在―――――。
蜘蛛の思考と夢
未定
深海の蜘蛛