幻想


伸ばした黒髪の奥から深い闇が顔を出した

指を絡めていくと 冷たくやわらかい感触と
鼻をかすめていく香りがある

あなたは甘えてくる

わたしの耳たぶを噛みながら
まだ弱い、子どものように


熱を求める

あなたの、潤んだ瞳から零れ落ちる一滴の涙で
わたしの心ははどうしようもなく乱されてしまう

そういう発作のような悲しみは
あなたからわたしへ伝染する

あなたの、わたしを呼ぶ声は
わたしをわたしでなくする。


あなたを守ってあげたいという
うざったいような、そういう気持ちによって

逆に、わたしではあなたを守れないということに気がつく。


もうすぐ朝になる

夜明けの光は好き
わたしを照らしてくれるから


でも、そうでもないかもしれない。


わたしの影が映える

振り出しに戻ってしまった道に

幻想

幻想

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-01-16

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