北の海の魔女17.0,18.0,19.0,20.0
17.0
†††17.0
何を作ればよいかわからなかったので女の子はとりあえず、ありあわせの食材からベーコン、目玉焼き、サラダ、オレンジのジュースを作りました。
それらを作っている途中で掃除を終えたらしいアリスが戻ってきました。しかし手伝おうとはせず、ただ横で女の子の手元を、
「はあ~」
「へえ~」
「うわ~、すごい!」
などと言って目を輝かせているだけでした。
アリスはなに一つ手を出さなかったのですが、女の子はアリスがあまりに感心しているのでとても気をよくしました。
そうこうしているうちに料理は終わり、お皿に入れようとしたときです。女の子がお皿を三セットずつ取るのを見てアリスは、
「これはあたしたちの分じゃないのよ」
と言いました。
「え、どういうこと?」
女の子は聞き返しました。
「さっき言ったでしょ。これはあたしたちの分じゃないの、魔女の分よ」
「じゃあ、わたしたちの分は?」
「こっちよ」
アリスは女の子を手招きして別の部屋に案内しました。
†††
18.0
†††18.0
「あっちの部屋は魔女の食事を作るための部屋なの。あたしたちのは、ここよ」
アリスは隣の部屋のドアを指さしました。
「入りましょうか」
アリスがドアを開けました。
中はパンの貯蔵庫でした。パンを乗せた背の高い棚が部屋の奥までずうっと続いています。
いったいいくつあるのでしょうか。
「これ全部わたしたちがたべていいの?」
女の子は目をかがやかせていいました。彼女は元の村ではお腹いっぱいになるまで食べたことはありませんでした。
しかし女の子のそんな問いかけにアリスは首をふります。
「ううん、だめよ。あたしたちが一日に食べていいのは、」
アリスは近くの棚のパンをナイフで少し切り取りました。
「これだけよ」
女の子はがっかりしました。彼女の小さな手で包めてしまうくらいだったからです。
でも女の子はすぐに笑顔で、
「大丈夫。村ではもっと少ない日もあったわ。大丈夫よ」
と言い切りました。
アリスは近寄ってきて女の子に耳打ちして言いました。
「そう、大丈夫よ。なんとかしてあげるわ」
†††
19.0
†††19.0
「魔女に朝食を持っていくわね」
アリスはそう言って女の子の作った料理をお盆にのせました。
「わたしは?」
「もう部屋に戻っても大丈夫よ。休んでて。しばらくしたらまた仕事だから」
と、アリスは少し悲しげに笑って、台所から出ていきました。
20.0
†††20.0
なんだかんだと仕事をしているうちに一日が終わろうとしていました。ただし、おなかはぺこぺこです。なんせお昼にパンひとかけらしか食べていないのですから。
「・・・・・・うぅ、おなかすいたなぁ」
女の子はベッドに寝転がって空腹に鳴りやまないお腹をかかえて懸命に眠ろうとしていました。ですがお腹が空きすぎてどうしようもありません。
こんな日はいつもお兄さんがお話を聞かせてくれていたものです。自分は妹よりも少ない量しか食べていなかったのに。
「おにいちゃん、おにいちゃん・・・・・・、会いたいよう・・・・・・」
女の子は無性にお兄さんに会いたくなってしまいました。
†††
北の海の魔女17.0,18.0,19.0,20.0