人間とロボットのおはなし

20XX年。世界はコンピュータ技術が進み人間とロボットが共存するようになった。
ロボットにはロボットだとわかるよう目だつ場所にバーコードが付けられている。

間違っても人間がロボットに恋することなどないように。


少年は今日もひとりぼっちで公園にいた。
真冬だというのに、何時間も、ずっと、ひとりで公園にいた。
「寒くないの?」
暖かそうな帽子に手袋をした少女が右手にカイロを差し出して聞いた。
「うん。ぼくはロボットだから、寒くないよ。でも、ありがとう。」
少年はカイロを受け取り少しだけ嬉しそうに笑った。

「お家に帰らないの?」
「うん。家には御主人様が居てね、この時間に帰ると怒られるんだ。」
「どうして?」
「ぼくはロボットだから、感情がないから、気持ち悪いんだって。だから、いつも御主人様はぼくを殴るんだ。ぼくが、ロボットだから。」
「そうなの…。」

少女には、わからなかった。ロボットだからという理由で暴力を振るう人間の気持ちも、ロボットだからという理由で暴力を受け入れるロボットの気持ちも。

「これ、あげる。」
少女は手袋を差し出した。
「いいの?」
「うん。」
「ありがとう。あったかいや。」
少女は少しだけ、照れくさいような、そんな気持ちになった。

「明日も来ていい?」
少女が尋ねると、少年は嬉しそうに笑って頷いた。


だけど、次の日も、その次の日も少年は公園に来なかった。
1月の、雪の降る公園で少女は毎日、ずっと同じ場所で、待ち続けた。


…【児童虐待の末に殺害。51歳父親を殺人容疑で逮捕しました。殺害されたと見られる少年は日常的に虐待を受けていた模様です…】

「うそつき。」
そういって帽子をとった少女の耳には、バーコードが付けられていた。

涙はでなかった。

人間とロボットのおはなし

ロボットになりたかった少年と、人間になりたかった少女。

人間とロボットのおはなし

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-01-15

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