闇と光。
01、始まりの終わり
‘’コンッコンッコンッカラカラカラ‘’
トンネルに響く金属音。
「ハァッハァッ。ゴクッ。ハァッハァッ。」
何かにおびえながら必死に走っているスーツ姿の男。
それを楽しそうに追いかける少年。その少年の口元は緩みきっていた。
「ハァッ。ハァッ。うわぁっ。…ドタッ。」
足がもつれ男は地に手をつき転んだ。
「あっ・・・・・・。」
足が震えて、たつことができず、目に涙をためて男は狂った少年に頭を地にこすりつけ謝る。
「ごめっごめんなさい。」
そして命乞いをする。
「頼みます。勘弁してください。私が何をしたというんですか!!何で・・・・俺・・・・・。」
しかし、少年の耳には、男の言葉など届いていない。届かない。
‘’コンッコンッコンッコンッ・・・・・・‘’
「ひゃはっ。」
少年は、男の前に立つと笑った。男は生ツバを飲み込んだ。
「・・・・・ゴクッ。かっ金か!?金が欲しいのか!?」
そう言うと、震える手で財布をとりだし、諭吉を強引に出すと、少年に差し出した。
「いひっ。」
少年はさしだされた諭吉をうばいポケットにいれた。
スーツ姿の男は助かったかのように安心して、顔がゆるんだ。
しかし、少年の殺意はそんなものでは、おさまることはなかった。
金属バッドを強く握ると、男に顔を近づけ満面の笑みで、
「まいどっ。」
というとバッドをふりあげ、勢いよく振り下ろした。
静かな町に一人の男の叫び声が響く。
‘’コンッコンッコンッカラカラカラ‘’
そして、町は何もなかったかのようにまた静まり返り、金属音だけが響く。
少年は夜の静かな町に消えていった。
02、再会?
―――――――星陵学園高等部。
そこはかつて、学力の優れた者達が集まり、全国一のレベルの高校だった・・・・・・。
そうそれはあくまで過去のこと。
今では学力の低い者達が集まる真逆の学校になってしまっていた・・・・・・・。
「おーい。席につけー。今日は転校生がきてる。入って。」
クラスがざわつく。
(ガラガラ)
「ども。」
そういって一人の男が教室に入ってきた。
"桐谷 慎也(きりたに しんや)"
黒板に白く書かれていた。
「桐谷。挨拶して。」
俺はぼーっと転校生を見ていた。整った顔立ちをしていて、爽やかな感じがした。
モテモテな人生をおくってきたような雰囲気をだしていた。
「あっとー桐谷です。よろしくお願いします。」
「きりたに・・・・・。」
俺は何か懐かしい感じがして、何かがひっかかった。
しかし、何がひっかかっているのか。何故懐かしいのかは全くわからなかった。
「ふぅ・・・・・・・・。」
ため息をつくと机に突っ伏した。
「桐谷の席はぁー。じゃあ力哉(りきや)の隣な。」
{ゲッ俺の隣・・・・・・。}
俺は顔をあげた。桐谷は俺に近づいてきた。
俺が顔をそらすと、桐谷は俺の前で立ち止まり
「よろしく。」
といって手を俺の目の前に出した。
「・・・・・・」
俺はそいつの手を見てからそいつを睨み机に突っ伏した。
「クスクス・・・・・・ザワザワ・・・・・」
俺が机に突っ伏するとクラス内は一気にざわついた。
(ガタンッ)
桐谷は無言で、俺の隣の席に座った。
「はぁ・・・・・・。」
俺はため息をつくと、机に突っ伏したまま窓の外を見た。外では体育をしていた。
{相変わらず、みんなだるそうだな。}
そう思いながら目を閉じた。
「・・・・・・・力哉。」
「??」
俺は隣の転校生に名前を呼ばれたきがしたが、転校生は静かに本を読んでいた。
「・・・・・空耳?」
俺はまた机に突っ伏して、目を閉じた。
なんだかこれから騒がしくなりそうなきがした・・・・・。
03、街で・・・。
「‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐だから、ここは‐‐‐‐‐‐‐になって、‐‐‐‐‐‐。」
全く、授業の内容は俺の頭には入ってこなかった。
「はぁ・・・・・・・。」
隣に転校生が来てから、俺の席はなんとなく居心地の悪いものになっていた。
なぜなら、常に視線を隣から感じている。
完全に見られている気がするのだが・・・・・・。
「・・・・・・・・・。」
俺は少し顔をあげ、隣にいる転校生のことを見るのだが、転校生は何もないような顔で授業を受けていた。
だが、そいつのノートはさっきから真っ白。文字一つ書いていない。
{絶対、見てるよなー。}
と思いながらも、俺はまた机に突っ伏して目を閉じる。
「んー・・・・きりたに・・・・・・・。」
俺はそうつぶやいた。
眠気が襲ってきて、そのまま眠る。
* * *
「おい!!りき!!」
「・・・・・・・・??」
俺はどこか懐かしい公園で転校生によく似た少年とブランコに乗って遊んでいた・・・・。
「どうしたんだ?大丈夫か??どっか具合悪いとか?」
「ん。大丈夫だ。」
「そうか。」
俺達は黙って、ブランコをこいでいた。
俺はそんな沈黙が辛くて、何か言わなきゃと思ったが何を言っていいかわからなかった。
「・・・・なぁりき。」
「ん?どうした?‐‐。」
「俺がどんな失敗をしても、お前は俺の味方でいてくれるか?」
「‐‐?」
「何があっても、もう会えなくなっても、お前は俺の親友でいてくれるか?」
そいつの顔を見るととても真剣な顔で俺を見つめていた。
「りき。」
「お、おぅ!!当たり前だろ!!俺とお前は親友だ!!」
俺がそういうとそいつはとても綺麗な笑顔を俺に見せた。
俺はそいつが笑ってくれて、すごく嬉しかった。
* * *
「何があっても、もう会えなくなっても・・・・・・・親友。」
俺はそうつぶやくと外を見てため息をついた。
「はぁ・・・・・・ほんとに会えなくなるんだもんなぁ・・・・・・・。つか、懐かしいな。」
そう俺はあの日から、あのときからあの少年には会えなくなった。
担任の話によるとあいつは引っ越したと言っていたが。
俺は信じられなかった。いや、信じなかった。
なぜなら、引っ越したと言っていたあいつの家からはまだあいつの声がしていたからだ・・・・・助けを呼ぶ、悲鳴のようなあいつの声が・・・・・・・。
「クソッ・・・・・・・・・・・・。」
その後どうなったかはもうわからない。
キーンコーンカーンコーン。
チャイムがなり、HRが始まる。
「‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐するように。」
と長々と担任の話が続いた。俺はずっとぼーっとしていた。
「最後に!!最近、物騒な事件が起きています。きをつけるように!!」
{何にきをつけるんだよ・・・・・・・・。}
「では、以上!!」
(ガタッガタッガタッ)
そういうとみんな立ち上がり一気に帰っていった。
「ふぅ・・・・・・・・。」
俺はさっさと片付けを済ませ、教室から出ていこうとした時。
(ドンッ)
「キャ・・・・ご、ごめんなさい。」
と小動物・・・・じゃなくて女にぶつかった。
「あ?邪魔だ・・・・・。」
俺はそういって睨むとそいつの横を通って、教室を出た。
「大丈夫?」
と転校生の声がして、俺は思わず振り返った。
「うん。大丈夫。」
転校生は俺がぶつかった女と話していた。
「・・・・・・・あ。」
俺が見ていることに気づくと、転校生は俺に近づいてきた。
「・・・・・・・・・・・。」
俺は黙って、転校生を見据える。
転校生は俺の前で立ち止まった。俺はそんな転校生を睨みながら
「んだよ・・・・・なんかもんくぁんのかぁ?」
「・・・・・・別に。」
転校生は黙って俺の目を見つめていた。
俺はさっきの女と転校生を交互に見た。
「なんだ彼女か。」
「妹だ。」
「あぁそ。」
俺はそういうとまた歩きだした。
「・・・・・・・はぁ。」
俺は家には帰らず、繁華街をブラブラしていた。
特に何をするわけでもなく歩いていると、人が群がっていた。
{なんだ?喧嘩か?・・・・}
俺は野次馬に加わった。
「・・・・・おい。どーすんだ?痛くて腕あがらねーよ。」
2、3人の連れをつれているヤンキーが一人の少年の胸ぐらをつかんでいるのが見えた。
「・・・・・・・・・・・・。」
胸ぐらを掴まれている少年は・・・・微かに笑っているように思えた。
{あの制服・・・・・・・・}
少年が着ている制服は俺と同じものだった。
「おいっ。聞いてんのか?ぁあ?」
ヤンキーが少年の顔をのぞきこんだ。
「・・るせぇ・・・・。」
「あぁ?」
「わーわー。うるせぇんだよ。ゴ・ミ。」
少年は顔をあげ、狂ったような笑い顔でそう言い放った。
俺はその少年の顔をみて驚いた。
「きりたに?・・・・・・・・」
そういうとハッと我にかえったような顔で俺を見るとヤンキーの手を振り払い。人混みをかきわけて去って行った。
{あいつ、何やってんだ・・・・・?}
俺はあいつについて行こうとしたが、見失ってしまった。
04、暴行事件。
(ガラガラガラガラ)
「・・・・・・・・・・。」
相変わらずパッとしないクラスだった。
俺は静かに机に座り突っ伏した。
{つまんねぇ・・・・・・・・。}
俺は黙って目をつむっていた。
しばらくすると、
(カラカラカラ)
と桐谷が入ってきた。瞬間女子どもが桐谷を囲みキャーキャーと騒いだ。
どうやら顔がいいおかげで女子の人気を完全に持っていっていた。
「おはよー。桐谷くん!!」
「おはよ。」
と女子に挨拶されて、爽やかな笑顔で挨拶を返していた。
{昨日のあいつは、ほんとに桐谷か・・・・・?}
俺はあれからずっと桐谷のことが気になった。
俺がずっと桐谷を見ていると、女子を連れながら俺に向かって歩いてきた。
「おはよ。力哉くん。」
{なんだ。こいつ・・・・・昨日のことはなかったことにしてんのか??それとも別人・・・・・?}
俺はそう思いながらじっと桐谷の顔を見つめてから
「・・・・・・・・・チッ」
と舌打ちをしてから机に突っ伏した。
桐谷は残念そうにしてから、俺の隣の席に座った。
俺は空を見ながら、昨日のこと考えていた。
担任が入ってきて、HRをはじめ、一時間目が始まった。
俺は今日も机に突っ伏して、授業は何も聞いていなかった。
(かさっ)
と俺の机の上に桐谷が手紙を置いてきた。
{ん?}
その手紙には
[昨日君を街で見たんだけど、いつもあそこに行くの??]
と書いてあった。
俺はそれを裏返し。
[まぁ。お前、昨日ヤンキーに絡まれてただろ?]
と書いて返した。
[あれ、僕じゃないよ。]
と返ってきた。
それから桐谷と俺は一時間目の間ずっとそんなやりとりをしていた。
[お前なんか変だ。]
[そっか]
それで俺と桐谷のやりとりは終わった。
そしてなにげなく時間はすぎ、昼休みになった。俺はいつもどおり購買からパンを買ってくると、屋上の日陰に行きのんびりと食っていた。
(ギィィ)
と屋上の扉があいた音がした。
「‐‐‐‐‐‐‐‐!!」
「‐‐‐‐‐‐‐‐!!」
{喧嘩か??}
俺はバレないように隠れながら、様子を伺った。
桐谷が二人の先輩に絡まれていた。
おれは黙ってその様子を見ていた。
桐谷が先輩に殴られていた。
「き!!・・・・・・・。」
俺は飛び出しそうになったが、殴られた桐谷の顔を見て、動けなくなってしまった。
殴られた桐谷は昨日繁華街で見たやつの顔と同じで狂ったように笑っていた。
「な、なんだこいつ。殴られたのに笑ってやがるぜ。Mか?気持ちわりぃ。」
桐谷はフラフラと笑いながら殴った先輩に近づいた。
先輩は後ずさりしていた。
「いひっ」
と笑うと先輩を殴った。
「かはっ」
殴られた先輩は飛ばされた。
「なんだこいつ!?人間じゃねぇ!!」
ともう一人の先輩が言うと走り去っていった。
「ひゃは。せーんぱい。ほら、立たないと。こんなんで気絶してもらっちゃあ困りますよー。全然つまらないじゃないですかー。」
と気絶しかけている先輩の胸ぐらをつかんだ。
「じゃ、もう一回いきますよー。ぼくは倍返しがモットーですからね。」
と言って殴ろうとしているところに
「先生!!こっちです!!」
と体育教師をつれてさっき逃げた先輩が戻ってきた。
「チッ。よかったですねー。死ななくて。」
桐谷はそういうと先輩の胸ぐらを離した。
「お前は、転校生の桐谷。どういうことだ?説明しろ。」
「せんせ。ぼくはただやられたからやり返しただけですよ?正当防衛です。」
といって桐谷は校舎のなかに入っていった。
「おい待て!!桐谷!!」
次の日、桐谷は停学処分を受けた。あの先輩達も同じく停学処分を受けていた。
俺の隣の席は空いていた。
05、ゲーセン
あいかわらず俺の隣の席は空いたままだった。
桐谷の停学期間はとっくに過ぎていたが、桐谷は学校に来なかった。
{今日はさぼろっかな。}
朝のHRが終わると鞄を持って、教室をでた。
生徒はみんな1限目の授業の準備をしていた。鞄を持って昇降口に向かっている俺はかなり目立っていた。
学校を出ると、久々にゲーセンに行った。
「あいかわらず、サボってる高校生しかいねぇ・・・・。」
と思いながらゲーセン内を歩いていると少し悪そうな連中がかたまっていた。
{やべー。絡まれたら絶対めんどくさいやつらだ}
俺はUターンして反対方向に行こうとしたら案の定つかまってしまった。
「兄ちゃん。どーしたよ?べつにここで遊んでもいいんだぜ?」
「あーいいっす。別に遊びに来たわけじゃねーし」
「おーおーそーかい。じゃあ丁度いいわ。俺達遊びたいんだけどお金なくてさ。貸してくんないかな?w」
軽くかつあげをくらっていた。どーにか面倒くさくならないうちに逃げ出そうと思いながら話していた。
その時、
「力哉・・・君?」
と俺の名前を呼んだやつがいた。
「あれ?もしかして、シンさんの知り合いっすか」
「あぁ。ちょっとな」
「シン?」
俺は顔を上げて、シンと呼ばれていたやつの顔を見た。
「あ。えっと桐谷」
「ん。そう」
桐谷だった。学校の制服はきていなかった。主に黒を基調にした私服だった。
「早くいってくださいよー。あれ?もしかして、この間言ってたシンさんの友達の組に入りたがってるっていうダチっすか?」
「こいつは違う。」
桐谷は俺に軽くかつあげしていた奴よりも地位が上の様だった。
「なんでこんなところに?学校は?」
桐谷はまるで俺の親の様に聞いてきた。
「ここ昔俺が通ってたゲーセン。で学校はサボり」
「そっか。」
「じゃ、もう行っていいか?」
「あ、うん。」
俺は桐谷の返事を聞く前にそのグループから離れ、格闘ゲームに金を入れやりながらさっき絡まれたグループを見ていた。
なにか計画を立てているようだった。グループの中央にはこの街の地図が広げられていた。
そこには×印や○印などいろいろな印がかかれていた。
俺は格闘ゲームを途中で止め、話が良く聞こえなるべく見えないような位置へ移動した・・・・・。
「シンさん。この間行ったところはもうダメっすよ。また絡まれると思います。」
「あーあの繁華街か。絡まれてもポチ(警察)が来なけりゃ大丈夫。それにあそこの夜のポチ公はすでに数人買収済み。今度こそこっちがやってやる。」
「ほんとシンさん敵にまわしちゃいけねーなwwwww」
「俺の敵は全員ブッコロス。」
俺は正直驚いていなかった。
たぶんどこかでわかっていた。桐谷が危ないやつだと。
だが、俺はまったくわかっていなかった。
桐谷の危険さを・・・・・・・・・。
本当の恐怖を・・・・・・。桐谷の真実を・・・・・・・・。
06、ほんとの桐谷。
「シンさん。あそこ、あいつらこんなところまで来やがってますよ。ちょっとしめたほうがいいんじゃないんすか?」
桐谷の隣にいたやつがゲーセンの入口の方を指さしていた。
俺も入口のほうを見ると、何人かのヤンキーがにやにやしながらこっちへ向かって来ていた。
俺でも「やばいっ」と思うほど、いかれていそうなヤンキーの集団だった。
「あーあ。じゃあちょいと朝のウォーミングアップと行くか?」
「よっしゃ。行くぞ。」
桐谷はこっちもヤバそうな集団を引き連れてヤンキーの方へゆっくりと歩いてきた。
俺も思わず立ち上がっていた。
「よぉ。この間はどーもー。どんなもんかと思ってわざわざ見に来てやったよ。」
にやにやしながらヤンキーのボスと思われるやつが桐谷の前にたちはだかった。
「あんま調子こいてんじゃねーぞ?誰の許可得てここにいるんだよ?あぁ!?」
「あっれ。ここってだれかの支配下だったか?あまりにもちっさい組織すぎて気付かなかったよ。なぁーおまえらー!!」
ボスが仲間にむかって叫ぶと仲間たちは
「しらなかったwww」「どこの組織??www」「なに?高坊でも支配下とかあんの??www」
と笑い声やら好き勝手言っていた。
桐谷は下を向いて、こぶしを握りしめていた。
そこで、それを見た桐谷の仲間が桐谷に
「シンさん。ここでやったらダメっすよ。ちゃんと買収した警官がいる地区でやんないと。」
とつぶやいているのが聞こえた。
桐谷は笑っていた。そして仲間に
「大丈夫。ここの店主とポチは買収済み。」
と笑顔で言うと、一発思いっきり相手のボスを殴りつけた。そして、さいこーの笑顔で桐谷は叫んだ。
「さぁーパティーの始まりだ!!みんな・・・・・・楽しめっ。」
「よっしゃーーー!!いえーーー!!」
一気に盛り上がり、あっちこっちで、大乱闘が始まった。
俺は面倒事が一番嫌いだったので逃げ出した。
「なんなんだ。一体。」
困惑していた。どれが本当の桐谷なのか全くわからなくなっていた。
07、
一週間ぶり俺の隣の席が埋まっていた。
桐谷はいつもより早く来ていた。
「おはよう。力哉くん。」
相変わらずさわやかな笑顔で挨拶してきた。
「・・・・・・」
俺はいつもどおり挨拶はスルーして席についた。
そして今日もいつもどおりのたるい一日が過ぎていった。
桐谷は腕時計をしていた。HRが終わると同時に慌てるように教室をでていった。
俺はそれが気になり、桐谷の後をついていった。
桐谷はいつものゲーセンへと行く道を走っていた。
がいつものゲーセンには入らずに、路地裏へ続く道へ曲がって行った。
俺もそのあとを追って曲がるとそこに桐谷がいた。
「ずっと、つけてたね。」
桐谷は怒っている様子だった。
「気のせいだろ。」
俺は苦しい嘘をついついてしまった。
「これ以上つけたら、僕は君を殺すかもしれない。」
桐谷はそういうと俺をにらんだ。
いつもの俺だったら別にびびらないはずなのに、その時の桐谷がいつもと違っていて、俺はビビって少し後ずさりしてしまった。
しかし、俺はこの時あきらめてはいけない。そんな気がした。
「これから何する気なんだよ。」
桐谷は少し考えたそぶりを見せてから答えた。
「バイト。」
嘘だ。なぜか俺は桐谷が嘘をついていることがわかった。
しかし、それ以上に聞くことはできず、俺はそっかと言うと尾行をやめて帰ってしまった。
次の日また桐谷は学校を休んだ。
それから1ヵ月桐谷は学校に来なかった。
08、ニュース。
また桐谷は何もなかったかのように学校へ来ていた。一か月ぶりに。
俺はいつもどおり席につくと机に突っ伏した。
朝のSHRが終わり一時限目が始まった。
「ねぇ。力哉くん。」
俺は寝かけていたが、声がした方を向くといつもならまっすぐ黒板をみているはずの桐谷がこっちを向いていた。
「・・・・何。」
俺は眠りモードの脳を無理やり起こして桐谷の話を聞く脳へと切り替えた。
「今やってるニュースとか知ってる?」
「知らない。」
何故わざわざそんなことを世界で一番世界に興味がない俺に聞くのか不思議に思った。
「なんかあるのか?今のニュースに」
桐谷は黒板に顔を向けるとさっきよりも声のトーンを下げた。
「今、連続殺人事件が話題になっているんだよ。そしてこのクラスのクラスメートがだんだん減ってきてるって知ってた?」
俺は教室を見渡した。
確かに減っていた、授業もろくに聞かずばか騒ぎしていた奴。ドラッグや覚せい剤をやっていると噂があった奴。たばこをやってた奴。
不良グループに入って暴力事件を起こしたことがある奴。理由は知らないがこの間まで少年院に入っていたと噂がある奴。
悪い噂があった奴らがいなくなっていた。
「お前がなにかしたのか?」
桐谷に声のトーンを落として聞いてみた。桐谷は表情を1mmも変えることなく、冷たい声で言い放った。
「僕が、みんなころした。」
俺の頭の中にコロシタと言う言葉が渦巻いた。
闇と光。