出会い

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出会い系サイトで美夏さんと知り合う。
割り切った関係でお金がもらえるという話が、
信じられないようであった。
「二時間で3万円くらいが相場じゃないかな?」
と話すと、
「バイトで一生懸命働いたって、そんな額にはならないよ」
と、反応した。
初めての援交ということなの? 
たぶん演技だよね。大人を喜ばせる演出だよね? きっと。

用事があるらしく「後で連絡する」と言って一旦切れた。
「後で・・・」というセリフはいつも決まってお断りを意味する。

ケータイはこないと思った。

ぼくは閑だったので
「これから割り切って会える方を探している」
と再度伝言を入れた。彼女の事は忘れた。
間もなく、レスがついて26歳の既婚の人だった。
北十八条東8丁目で待ち合わせをする事になった。
主婦のお小遣い稼ぎなのかな?

待ち合わせ場所に向かっているクルマの中で、またケータイが鳴った。
美夏さんだった。びっくりした。約束どおりだった。
実は札幌の中心街にいてまもなく逢えるというものだった。
咄嗟に26歳の既婚の彼女を断る事に決めた。

二十四条駅で待ち合わせた。
どうなってるんだろう?
その間に、26歳の人から場所確認のケータイが鳴り、
「急用が出来たので申し訳ない」と、お断りした。

約束の午後一時に彼女がやってきた。
助手席に座った彼女は、
とっても清楚でまじめな少女のようであった。
信じられなかった。
早速新道沿いのラブホテル「Cha-Cha-Ra」に行く。
ほんとうにいいの?
部屋はリニューアルしたというスタイルで如何にもという感じだけど、
時間もないだろうから、遠くへ行くのは躊躇った。
割り切った関係の女性はいつも必ず時間がない。
逢ってる時間は短ければ短いだけ良いわけだ。
彼女も早く立ち去りたい心境だろうと予想したのだった。
割り切りって通常は約束のお金を貰うのが目的だからだ。

部屋に入って、彼女はBGMをピアノ曲に合わせた。
ラブホテルには行き慣れているように感じた。
ラブホテルでピアノ曲って初めてじゃないだろうか?
とても懐かしい響きが心地よかった。
どうしてこんな趣味なんだろう?
付き合ってる人の影を感じずにはいられなかった。
悪気はあるようには思えなかったが、
やはり普通の子じゃないんだろうなと想像するしかなかった。
おそらく性的な関係においては自由な考えなんだろうと思えた。

わたしはスポーツをやってるから筋肉質だよ、としきりに言っていた。
そんなでもないし、胸もかっこよく全てが美しかった。
瞳がとっても綺麗で表情がとても上品だった。
笑顔は少女のように屈託がなく可愛かった。
胸が痛くなるほど素敵な彼女だった。
彼女はどうして、こんな中年男と付き合う気になったのだろう?
やっぱりお金目的しかないよね・・・・・??
そうは思っても、
ぼくには彼女が天使のように思えて仕方がなかった。
結局ラブホで3時間ほど過ごして帰ることになった。

美夏さんは、12月生まれの19歳。
市内の専門学校のホテル学科の2年生だと言った。
札幌国際情報高校出身で英検2級。
フランス語もフランス人について勉強しているし、
ピアノは小さい頃からやっていたと言った。
どうしてこんな人が??
外国のホテルに勤めるのが夢のようだった。
頭もよく知的で、こんなに素敵な人が・・・
なにか訳があるのかな?
性に溺れているわけでもないし・・・

割り切りの女性のケータイは必ず非通知と決まっていた。
でも、彼女は非通知じゃなかった。
ぼくのケータイに通話の証拠が残っていた。
ケータイメールのアドレスも教えてくれた。
どうしてこんなに無防備?
ぼくを信用してくれたの?
それにしても無防備だ。

お風呂が大好きだと言った。
この日も、帰り際、きょうはお風呂に入ってないので、
ゆっくり入ってもいいかと聞かれた。
昨日の夜は外泊したのだろうか?
そして、朝の電話から午後過ぎまで、何をしていたのだろう。
誰かと逢ってたのだろうか?
よからぬ妄想があたまを過ぎった。

その事が、妙に気になった。焼もちなのだろうか?
どうして、こんな気持ちになったのだろう?
そんなことはどうだっていいじゃないか。
一回限りの割り切った関係なんだよ。

こんな割り切った関係は、時々は経験ある。
でもこんな不安な気持ちは初めてだった。

お寿司が好きだと言ったので、
帰りにお寿司屋さんに寄ろうとしたが、
生憎、時間が時間だし近くに良いお店はなかった。

しょうがなく、
22条のイタリアン「ダルセーニョ」で軽く食べたが、
どうという事はなかった。
それよりも爽やかな彼女がとても気になった。
この人って一体、誰なんだろう・・・?
地下鉄の24条駅まで送って、お小遣い3万円を渡した。
地下鉄の階段を降りていく彼女の姿が脳裏に焼きついた。
あのお金は何に使うのだろう・・・・?

別れて帰りのクルマの中で、
もう、逢えないだろうと思った。
何故か、「逢ってくれないだろう」と考えていた。
再び逢えるなんて、夢の夢だと考えていた。
今日の出来事は白日夢に違いないと、納得しようと思った。

出会い

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別れて帰りのクルマの中で、 もう、逢えないだろうと思った。 何故か、「逢ってくれないだろう」と考えていた。

  • 小説
  • 掌編
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  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-10-19

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