ビンビンに勃起したタイムトラベラー
この作品は「ぱらいぞ」という4コマ漫画のひとつに出てくる、ビンビンに勃起したタイムトラベラーを見て思いつきで書いた小説です。
ハジマリ
その日はいつもより寒い夜だった。
近くのコンビニでクリスマスケーキを買い、白い息を吐いて速足で帰る途中だった。
風が顔に当たると痛いので俯き加減に歩いていると、少し先にある街灯から伸びる人影が足元に当たった。
影を追うように顔を上げると、そこには全裸の青年がいた。
「今日は西暦何年の何月何日ですか」
まるで未来からタイムスリップしてきたような質問だ。
もしかしてタイムトラベラーなのかと一瞬考えたが、ビンビンに勃起している性器を見て、ただの変態だと確信した。
私は携帯電話を取り出して、警察に通報した。
青年は私の様子を見ると慌てて逃げ出したが、駆けつけた警官に逮捕された。
一週間後、南極大陸で大爆発が起きた。
この爆発で世界の人口は約一億人までに減少した。
もしかすると、ビンビンに勃起した青年はこれを防ぐためにタイムスリップしてきたのだろうか。
あの時、私が警察に通報しなければ、お母さんお父さん、妹や友達を失うことは無かったのだろうか。
あの青年は本物のタイムトラベラーで、あの爆発を防ぐ何らかの方法を知っていたのだろうか。
私は少しだけ後悔して、タイムマシンの開発に取り掛かった。
人間、死ぬ気になって頑張れば、タイムマシンを開発することくらい容易い。
このまま何もせずに人類が滅亡するくらいなら、僅かな可能性を信じてみようと思った。
しかし、爆発による大気の汚染は深刻で、私がタイムマシンの設計図を完成させたころには、世界の人口は約二千万人まで縮小した。
私はタイムマシンの製造を息子に任せて、休むことにした。
オチ
昨年のクリスマス、十年間ベッドで寝たきりだった母は最期にケーキを食べて、満足そうな顔のまま息を引き取った。
僕は母が完成させた設計図を元に、タイムマシンを作っている。
知識がゼロの状態から作らなければいけなかったので、母が生きてるうちに完成させることが出来なかった。
そして、母の死から一年。ようやくタイムマシンが完成した。
これで母の言ったとおりに西暦2013年の十二月二十五日にタイムスリップして、少女だったころの母から携帯電話を取り上げる。
そうすれば、全裸の男は警察に捕まることなく任務を遂行でき、大爆発は未然に防げる。
さっそく母の作戦を実行に移すことにした。
テストプレイなんて出来るはずもなく、一発本番である。
僕はタイムマシンに乗り込み、タイマーを合わせてからレバーを強く引いた。
タイムスリップは思ったよりも辛く、長いものだった。
五十時間、という言い方は適切ではないが、そのくらいに感じた。
激しい頭痛と眩暈がした。タイムマシンは吐瀉物でまみれた。
虹色に輝く光のトンネルを抜けると、激しい光に包まれて目の前が真っ白になった。
そして、気が付くと僕は見知らぬ路地にいた。タイムスリップは成功した。
どうやら物質は転送できなかったようで、衣服やタイムマシンは時空の彼方に飛ばされてしまったようだ。
成功した、といっても目的の日時に到着しているかは不明なので、こっちに歩いてきてるあの女性に話を聞こう。
僕は長い間研究室に閉じこもってタイムマシンを作っていたので、若い女性は初めて見る。とても可憐だった。
なぜか急に心の奥からムラムラした気持ちが込み上げ、尿を排泄する器官が膨張しだした。とてもムズムズするが、気にしている場合じゃない。
僕は女性に声をかけた。
「今日は西暦何年の何月何日ですか」
ビンビンに勃起したタイムトラベラー
南極が大爆発した原因は考えてません。