私は下から一番目のオトコ

外は冷たい雨が降っています。
一人原宿駅のコーヒーショップでネットを見ていたら、ふとこの物語が浮かんできました。
悲しい、情けないオトコの話です。
よかったら、読んでください。

こんな悲しい人生もあるんです。

彼女は、約束の17:00を30分過ぎた頃にやって来ました。
軽く挨拶をして、私の腕に自分の腕を絡め、胸を押し当ててきました。
遅れたことに対する謝りの言葉は、一つもなく、
「ねえ、柔らかいでしょ。今日、ノーブラなの。見たい。」と私の耳元に甘い声で囁いてきました。

〜彼女は、何度か行った事がある風俗店の女性で私に援助交際でSEXさせてくれた女性でした。私は、そんな彼女の虜になってしまい、以前からねだられていたブランドの指輪を買うことを前提に今日、デートする約束をしていました。〜

私は何も言い返すことが出来ないままでいると襟首を大きく開き、私に服の中を見せてきました。
私の視線は、もう服の中の彼女の胸に釘付けになってしまいました。
本当にブラジャーをしていなく、彼女の乳房、そしてその先の乳首が丸見えでした。私の下半身はそれだけで、すでに固くなりパンツの中が苦しくなってきていました。
そんな私に彼女は、
「今からトイレでしてあげるからお小遣いちょうだいね。」と言って、私を公園の方へ連れて行きます。
私は、
「いいよ、後でホテルに行こう。」と足を止めようとすると
「ごめん。もう、時間ないんだ。だから、早く。気持ち良くしてあげるよ。」と言って腕を引っ張ります。

私は、何を言っているかわからず
「えっ、だって今日は俺とデートするって言ってたじゃない。約束の指輪を見に行こうよ。」と言うと彼女は、急に友達と約束が入ってしまったからの一点張りでした。

私がそれでも、先に約束したのはこっちだから、友達との約束を今からでも変えられないか聞いていると、急に態度が変わり、
「わかった。だったら、1時間だけ友達と会うから、喫茶店で待っていて。」と不機嫌そうに言いました。
「絶対に1時間だけだよ。じゃあ、後でメールする」と言って私は、彼女と別れました。
私は、仕方なく駅の近くの喫茶店で待つことにしました。
席に座るなり、彼女にメールをしましたが、全く返事は返ってきませんでした。
私は本を読みながらも、時計ばかりが気になりました。全く本の内容なんで頭に入ってきません。時計を見るとまだ10分も経っていませんでした。
何度となく時計に目をやり、約束の1時間が経ったので、メールを入れましたがやはり返ってきませんでした。
ヤキモキして、彼女に電話をしましたが10コールして留守電になるだけでした。
それから、何度も何度も電話をしましたがやがて、電話からは、
「お掛けになった電話は、電源が入っていないか、電波の届かない所にいるため、かかりません。」という機械の女性の声になってしまいました。
一人喫茶店に取り残された私は、とても悲しい気持ちでいっぱいになりました。
そして、私は何をしているんだろうと情けなくなってしまいました。

急に友達と会うからと自分との約束を放ったらかしにされ、約束の時間になっても何の連絡もない彼女を待っている。
どこまでお人好しなんだ。
本当にバカバカしくなって、私は喫茶店を出ました。
そして、彼女に「今日は帰ります。」とメールを入れ、駅へ向かいました。
とその瞬間、彼女の姿が目に飛び込んできました。
私は、ハッとして声を掛けようとした時、隣に知らない男がいることに気づき、声を押し殺していました。

彼女は、私に気づいて、少し気まずい顔をしましたが、その男性に頭を撫でられて、笑顔で男にうなだれていました。
そして、私の横を何食わぬ顔で通り過ぎて行きました。
ただただ、呆然としてしまった私は、怒りを覚えました。
自分でも今まで感じたことのないような怒りでした。
こんな仕打ちをした彼女にというよりも、自分自身に腹が立ってしまいました。
私は思わず、手に持っていた携帯電話を道路に思いっきり叩きつけていました。
「カシャーン」
その音は、彼女の耳にも届いたらしく、振り返り私を見ましたが、すぐに隣の男に視線は、移っていました。
ボロボロになった携帯を私は拾い、歩き出しました。
その日、家に帰った後も携帯は、服のポケットに入ったままでした。
この感情をおさえられないでいた私は、飲めない酒で泥酔し、情けない姿でいつの間にか寝てしまっていました。
私はボンヤリとした中、目が覚めました。そして、時計に目をやるとすでに朝の10:00を過ぎていました。
私は、焦って携帯を探していて、昨日の事を思い出しました。
携帯電話をスーツのポケットから取り出し、電源を入れましたが全く反応がありません。
私は、まず会社に連絡をしなければならないと思い、近くのコンビニまで走りました。
頭がガンガンしていましたが、走ってコンビニへ行き、店の外の公衆電話から会社に電話しました。
そして、電話口で年下の上司からこっぴどく叱られました。
私は、今日は体調が悪く出社出来そうにないので、休みをもらうようにお願いしました。
本当に今にも吐きそうなほど、気持ちが悪く、顔から血の気が引いて行くのがわかりました。
やっと、上司の小言も終わり、電話を切った瞬間、私は思いっきり道路に胃液を吐きました。
涙目になりながら、何度も繰り返し吐きました。
それに気づいた店員が私に罵声を浴びせてきましたが止めることもできませんでした。
「ちゃんと掃除して行けよ。」
バケツとモップを渡され、仕方なく掃除してやっと部屋に戻りました。
動けないまま、お昼を過ぎました。
私は、携帯電話のことを思い出しました。このままでは、明日以降も会社に迷惑をかけるので、携帯電話を買いに行くことにしました。

ボサボサの髪に虚ろな目つきの私が携帯ショップに入った時の店員の怪訝そうな顔を今でも私は忘れられません。
私は、嫌そうな顔で仕方なく対応する女性店員を相手にやっと新しい携帯を買い電源を入れましたが着信履歴も、メールも何も入っていませんでした。
私は本当に悲しくなりました。
電源を入れる前、少しは期待していました。
彼女からメールが来ているかもと。
会社の同僚が心配して、メールをしてきているかもと。
その全てが夢に消えました。

私は孤独感で涙が流れました。
どうして、こんなことになってしまったのだろうか。
この世の中で私より不幸な、そして孤独な人なんていないんじゃないかって思いました。

「私は下から一番目のオトコ」と自分自身につぶやきました。

私は下から一番目のオトコ

私は下から一番目のオトコ

  • 小説
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2014-01-08

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