芽衣恋

刹那的な永遠

最後に何か伝えたかった。

今日は満月の夜。紅い月が空高く煌々と世界を染め上げる。

私はこれから帰る。大好きな人を、場所を、物を、何もかも置いていってしまう。

わかっている。ひどいやつだってことくらい、自分が一番わかっている。

「だけど・・・」

口にして、すぐに後悔する。

だけど、何なのだ。何もできないのに。

ふと顔を上げると、目の前には愛しい人。

涙があふれる。こらえきれないよ。まだ、こんなに、こんなに、大好きなのに。

早く言わなきゃ。

何を?

今までありがとう。

大好きでした。

ごめんなさい。

さようなら。

違うでしょう?愛しい人に伝えるべきは、そんなことじゃないでしょう?

でも。でも。でも。

「っ・・・・・・・・・・・」

何も言えなかった。なにひとつ、言うことができなかった。

今なにか言わなきゃ後悔する。でも今は何を言っても後悔する。

ならばせめて、思いをこめて、あなたに精一杯の笑顔を送ろう。

笑って、お願い。笑って、私。

愛しい人の顔がぼやける。見えなくなる。もっと見ていたいのに。

待って、あと少しだけ。もう少しでいいから。。。



はっとしてあたりを見た。ああ、帰ってきてしまった。

私は大声で叫んだ。冷たいものが頬を伝って止まなかった。

芽衣恋

めいこいの芽衣ちゃん目線のSSを書いてみました。駄文ですがどうぞお許しを

芽衣恋

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-01-06

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted