ゲーム版一寸法師

現代に現れた一寸法師です。



ナレーター・・アニメ系の声が望ましい
一寸法師・・・またの名をスクナヒコノ命。小さい頃の声と大きくなってからの声を分けたほうがいい
姫子・・・二十歳、父の会社の秘書
   巌・・・四十歳、会社員
  昭子・・・・三十四歳専業主婦
  千夏・・・三十歳昭子と同じマンションに住んでいる専業主婦
万田銀次・・・五十五歳金融業会社会長
清久郁三・・・六十歳・炭素工業社長
大国主の命・・・50代のホームレス
秀二・・・20代後半、ホームレスの若者
主婦1・・・
主婦2・・・
主婦3・・・
理事1・・・
理事2・・・
幹部1・・・
幹部2・・・
組員1・・・
結婚式場の司会・・・
そば屋の出前・
   【あらすじ】   
子供のいない中年夫婦。ある朝近所のツキノミヤ神社に夫婦でお参りした。奥さんが子供を授かるように一生懸命祈っているが、後ろで夫がゲーム機で子育てゲームに夢中になっている。奥さんが夫を突っつくとゲーム機が地面に落ちて、中から赤ちゃんが転げ出た。名前を法師とつけて家に連れ帰って育てる。そのうち、ちょっとした事故で3cmしかない法師は風呂の排水溝から近くの川へ流出する。着いたところは大きな電器店の駐車場、店の携帯売り場の携帯ストラップで遊んでいると綺麗な女にストラップごとレジに持って行かれる。女の家は豪邸で女の父はハゲタカファンドの会長で会社の乗っ取りなどで財をなした。法師はパソコンの中で大きくなって、ハゲタカファンドから大金を奪って女の父を殺して女と結婚する。女と結婚式をやっている最中、法師の父がマンションの部屋でゲーム機を手に取ってゲーム終了ボタンを押してしまう。すると法師も一瞬にして消滅してしまった。






ナレーター・「ここは埼玉県のとある神社の境内。夜明け前、一組の中年の夫婦がお参りに来ている」
巌「ハー、ハックション!」
   SEゲーム機のピコピコ音がしている
昭子「なにゲームなんかやってんの。神社に
来たんだからちゃんとお参りしてよね」
巌「わかったよ。でも土曜の朝の六時なんだぜ。だれもいないし、ゲームでもしなけりゃ間がもたないよ」
昭子「わたしだってこんなに朝早く起きたくないの。こうやって神様におすがりしなくちゃならない理由、忘れちゃったの」
巌「いえ、わかってます。反省します。でもね、今ほら、赤ちゃんのおしめを替えているところなんだよ。すぐ終わるからさあ」
   SEまたピコピコ音がしている
ナレーター:「神社には賽銭箱の前の一組の夫婦以外誰もいない。あれー、奥さんは熱心にお祈りしているけれど旦那のほうは後でゲームをしてますね。なんのゲームなんでしょうか。えーっと何々、【半年で赤ちゃんから大人へ】って画面に書いてありますね。あ、子育てゲームなんですね。
昭 子「あんた、いいかげんにしてよ」
SEバシッと妻が夫をたたく音
巌「痛っ、おい乱暴するなよ。ゲーム機がこ       われるじゃないか。イッテーなあー、ゲーム機は落ち葉んなかで画面もトンデルぜ」
巌「あれれ、これなんだ」
   SEオギャア、オギャアと赤ん坊の泣く声
巌「なんかへんなものがゲーム機からでてき
たぞ」
   SEオギャア、オギャアと赤ん坊の泣く声
巌「お、これ生きてるよ」
昭 子「うわあ、かわいい赤ちゃん」
ナレーター:「巌の手の中には小さな3cmほどの赤ちゃん。さっきまで巌がゲーム機の中で育てていた赤ちゃんが泣いています。昭子、そっと巌から赤ちゃんを受け取り」
昭 子「この子はきっと神様が私達にくださったのよ。さあ、おうちにかえりまちょうね、おーヨチヨチ」


  SE赤ちゃんの泣き声がする
ナレーター:「ここは巌、昭子夫妻のマンショ
ンのダイニング。テーブルの上
に小皿があってその中にパフ
が一枚敷かれてその上に小さ
な赤ちゃんが泣いています。昭
子がスプーンにミルクをすく
って少しずつ飲ませています」
昭 子「オー、ヨチヨチ。お腹チュイテマチ
ュネ」
   SE赤ん坊の泣く声
巌  「おい、これどうするつもりだよ」
昭 子「どうするって?」
巌「わけのわかんないもの持って来
ちゃってだいじょうぶかよ」
昭 子「何言ってんの、もともとは
私たちがゲーム機の中で育てきた
赤ちゃんでしょ。神様が気をきか
せてくれたのよ。私育てるわ。」
巌「近所の人になんて言うんだよ。
ゲーム機の中から一寸法師が出て
きましたって言うのかよ」
昭 子「あ、それいいわね。名前は
ホウシにしましょう」
巌「おい、冗談だろ、勘弁してくれ
よ」
昭 子「何言ってんのよ。もともと
あんたの持ち物が役にたたないか
ら、こういうことになったんでし
ょ。」
巌「ああ、そういう話になるんです
か。わかりましたよ。私が悪うご
ざんした。ふん」
ナレーター:「巌、ふてくされて一人で朝食の
準備を始める」
   SEパンをトースターにいれる音、ジュースをコップに注ぐ音。
昭 子「結婚して10年。ちゃんと
協力してくれたことあったっけ。
休日なら体も疲れてないからと思
って期待していると。接待だとか
同窓会だとか怪しいこと言って家
から逃げ出しちゃうし。今だって、
もう一ヶ月もごぶさたでしょ。私
はねあんたのそのフニャチンに1
0年もがまんしてきたんですから
ね。」
   SEオギャア、オギャアと赤ん坊の泣く声
巌「おい、フニャってなんだよ。い
くら夫婦だって、言って好いこと
と悪いことがあるだろ。」
昭 子「客観的事実じゃない」   
巌「おい、客観的事実ってなんだよ。
その客観の中には他の誰かの持ち
物と比較してるっていう意識がは
いってんだろ。どいつのと比べて言って
るんだよ」
   SEチーンというトーストの焼き上が
る音。



   SE公園の中の砂場やすべり台であそぶ子供達の声がしている
ナレーター:「ほうし君の公園デビューですよ。
砂場、すべり台、鉄棒などがあ
る比較的小さな公園。3,4組
の親子がいる。マンションの隣
の住人、千夏は入り口近くのベ
ンチに座ってすべり台で遊ん
でいる息子を見ている。ちかづ
いてくる昭子に気がついて」
千 夏「あら、昭子さん、今日はど
うしたの」
昭 子「公園デビューよ。息子を連
れてきたの。ほら、見て法師っていうの」
ナレーター:「昭子、両手の中のほうしを千夏にみせる」
千 夏「ワーオ、これ何、生きてるの」
昭 子「ほら、千夏おばさんにごあ
いさつしなさい」
法 師「こんにちは、ぼく法師って
言います」
千 夏「キャー、しゃべったわ。信じられな
い」
ナレーター:「千夏の騒ぎを聞きつけて他の
主婦たちもやってくる」
主婦1「どしたん、どしたん」
主婦2「痴漢?」
千 夏「神様はこんな事もできるのね、ほら」
法師「こんにちは、ぼくの名前は法師っていいます」
主婦3「ビ、ビックリしたなあ、もう」
千 夏「昭子さんが妊娠しているようには見
えなかったからびっくりしたわ。でも、顔、
形はもう中学生ぐらいかな。」      
昭 子「一ヶ月位前にツキノミヤ神社の神様
に授かったの」
ナレーター:「法師は昭子の手の上から千夏の
手の平の上に渡って行く。それ
を主婦達がのぞき込む」
主婦1「なんかこの子男前やなあー。食べて
しまいたいってゆう感じや」
主婦2「あんたやめなさいよ、この子ほんと
に怖がっているわ。」
主婦3「本当に綺麗な顔しているわ。売れっ
子のホストか映画俳優にでもなれそう」



   SEドアがあいて閉まる音
巌「ただいまあー」
巌「お、法師はテーブルの上でお風呂か。
湯加減はどうだい」
法 師「うん、いいよ、父さん」
巌「きょうは学童どうだった。少しは慣れたか」
法 師「うん」
   SEテーブルにお皿を並べる音
昭 子「最初の二、三回は大歓迎されたの。
でも、それ以上行くと面白がってひどいイ
タズラする子も出てきたの。」
巌「いたずらって?」
昭 子「わたしがちょっと先生と話しをして
いるすきに法師の服を全部脱がせてしまっ
たり、七夕の短冊といっしょに吊されたり
して大変だったの。もうああいう所へ行く
の考えちゃうわ」
巌「大変だったな。よくがんばった」
法 師 「平気さ。別に」
法 師「お父さん、お父さんはどの位生きら
れるの?」
巌「え、なんだって。どの位生きられるか?
どの位だろうね。お母さんがあんまりいじ
めなけりゃ70まではいきられるかも」
法 師「へぇー、じゃあ僕はどの位生きられ
るのかな」
巌「法師か、法師はどうだろ。まあ、ぼく
らよりは長生きすることは間違いないだろ
う。」
法 師「へぇー、そうなんだあ」



ナレーター:「数日後、同じマンションのダイ
ニングで昭子は晩ご飯の用
意をしている。法師はテーブ
ルの上の皿の中でお風呂に
入っている」
   SE昭子の鼻歌がきこえる。
昭子「さあ、おいしいロールキャベツができ
たわ。今日はごちそうよ」
SEドアが開いて閉まる音。
巌「ただいまあ」
昭 子「おかえりなさい。外は寒かったでし
ょ」
巌「来月はもう年末だよ。もうひとがんばり
さ。お、今日はなんだかご機嫌うるわしい
ようで。宝くじにでも当たったのかな」
昭 子「そうよ、当たったのよ。」
巌「え、ほんとかよ」
昭 子「今日、産婦人科へ行ったら、妊娠3
ヶ月ですって。とうとう子供が生まれるの
よ。うれしくって。」
昭 子「法師、このお腹の中に弟がいるのよ。」                   
巌「やった!でかした。これでおれも少しは
役にたてたっていうことかな」
昭 子「そうよ、空砲ばっかりじゃなかった
ってことね」
   SEトントン、ドアをノックする音
昭 子「はーい、あら、千夏さん」
千 夏「ちょっと、いいかしら」
昭子「何かしら」
千夏「ちょっといいにくい事なんだけれど、
法師くんのことなんだけれど」
昭子「え、法師のこと」
千夏「うん、なんかねこの階の奥さん達、法
師君の事、気味悪がっているのよ。法師君
って時々姿が見えなくなるでしょ。小さい
からしょうがないんだけど。昨日の昼過ぎ
どこにいたと思う。私の家のベランダの干
してあった洗濯物の中。わたしのパンティ
の中で昼寝してたの。なんでこんな所にい
るのって聴いたら、猫に追いかけられたん
でって言ってたわ」
昭 子「え、ウソー」
千 夏「ホントよ。法師君って全然身長が伸
びないで3cmのままでしょ。でも、顔つ
きはもう高校生っていってもおかしくない
わ。2,3日前、若林さんの奥さんがシャ
ワーを浴びようと思って浴室に入ったら、
天井に法師くんが張り付いていて奥さんを
見下ろしていたって。大きな声を出したら
どこかへ消えちゃったって。もう、お年頃
なのよ。」
昭 子「困っちゃうな、もう。わかった。 法
師に話しを聴いてみるわ。ごめんなさいね」
千 夏「まあ、子供を持つと色々なことがあ
るのよ。がんばって」
   SEドアのしまる音
SE昭子のフゥーという溜息



   SEドアのあいてしまる音
昭 子「よいしょっと」
   SEスーパーで買ってきた買い物袋を
床に降ろす音
昭 子「ただいまあー、あれ、法師どこにい
るの」
   SEゲーム機のピコピコ音がしている
昭 子「まあ、何してるの」
法 師「ゲームだよ、面白いよ」
昭 子「いけません」
法 師「どうして」
昭 子「法師がゲーム機の中へ帰っちゃうんじゃないかって心配だから、さ、ゲーム機をちょうだい」
法師「うん」
ナレーター:「昭子は法師が遊んでいたゲーム機をとりあげそのまま戸棚にしまいます」
法 師「ねえ、ぼくって本当にお母さんの子
供?」
昭 子「なんでそんなことを聞くの?」
法 師「みんな僕のことをバケモノって言っ
てるよ」
昭 子「また、学童へ行ってきたのね。あそ
こへはもう行かない方がいいわ。あなたは
身長がまだ小さいけれど、生まれて半年し
か経っていないのだから当然よ。その代わ
りこんなにお話できるし、いろんな事がわ
かるし動けるし、すごいわ」
法 師「本当の子供ができるんだし、バケモ
ノは元のゲーム機に戻せばいいんだって」
昭 子「酷いわ。学童に文句をいいにいかな
きゃ」
法 師「学童じゃないよ。近所のおばさん達
だよ。ここの廊下で立ち話をしているのを
聞いたのさ」
昭 子「まあ、なんてことを」



SE赤ちゃん用のオモチャの音がする
昭 子「さあってと、アナター、食器洗ってね。私お風呂に入るから」
巌「ハイー、了解」
昭 子「いいかげんにゲームやめて早く洗ってね」
巌「ハイ、ハイー」
昭 子「返事だけは調子いいんだから。あれ、法師はどこにいったのかしら」
SE風呂場のドアがあいて閉まる音
SE湯船に昭子がはいるチャポンという音
昭 子「あーあ、いい湯だわ。あら、赤ちゃんが動いた」
SE昭子が湯船から出る音
SEシャワーの音
ナレーター:「おっと、法師が風呂場の天井の角にはりついてお母さんのふくらんだお腹のあたりをみていますねー。やっぱり、気になるのかな」
昭 子「う、蹴ったわ。今、体を洗って出ますからねー」
   SEシャワーの音
   SE風呂の栓をぬいてお湯が抜け出る音
   SE昭子、風呂場から出て行く音
ナレーター:「お母さんがお風呂から出て法師も天井から降りてきました。あ、すべった、すべった。法師が風呂の排水口に落ちていく」
   SEヒュー、ポチャンという音
ナレーター:「法師はあやまって足を滑らせ、風呂の排水口に落ちて、そこから近くの川の中に流されてしまいました」



ナレーター:「法師が川の中を流されていると
お約束通り目の前に大きなお
椀がプカプカ流れてきました。
法師はそれに乗り込むと法師
を乗せたお椀は暗い川の上を
流れていきました」



ナレーター:「法師がお椀の中で目を覚ます。
お椀は橋のたもとにひっかか
って止まっている。すると大き
な顔がお椀の中を覗き込む
法師「君は誰」
若者「へー、しゃべったり、動いたりするんだ。おれは秀二っていうんだ」
ナレーター:若者はお椀を拾い上げて川岸の土の上に置いた。
秀二「君は誰」
法師「法師、一寸法師」
秀二「うまくできてるんだね。お腹すいてな
い。チョコレート持ってるけど、食べる?」
法師「ありがとう。秀二さん」
ナレーター:「秀二、法師の食べている様子をじっと見つめている」
秀二「お伽噺によるとこれから一寸法師は京
の都に上って鬼退治をするんだろ、でもこ
こは荒川だしな、君は一体どこへいくんだ
い」
法師「わからない。でも、家に戻るのはいやだし、お椀に乗って行けるところまでいくさ」
秀二「そういうのっていいね。前に進んでいくっていうの」
法師「秀二さんはここで何してるの」
秀二「上野でホームレスやってたらヤクザに拾われて、狭いアパートに押し込められて生活保護費ピンハネされた。それでいやになって逃げ出してきたのさ」
法師「そう、大変だったね。でも、秀二さんっていい人だよね。ぼく、わかるよ」
秀二「はは、まだおれも27歳だからね。いずれ故郷に帰って父さんや母さんのめんどう見なきゃいけないんだよね」
法師「故郷っていい言葉。でも、どこでも故郷になるんじゃないの。じゃ、そろそろ出発するね」
秀二「(明るく)ああ、おれも近所のスーパーへ行って試食コーナーで腹ごしらえするよ。元気でね」
ナレーター:「秀二、法師の入ったお椀を流れにもどしてやる。法師、秀二に手をふってこたえる。お椀はまた荒川を流れていく」

〇荒川の川岸の大きな電器量販店の駐車場

ナレーター:「法師の乗ったお椀は大きな電器量販店の駐車場の近くの川岸に着く。川岸をよじ登ると大きな家電量販店の駐車場。新年大売り出しの旗差物がたくさん風に揺れている。法師、車にひかれないように店内に入る」



SE はでなBGMが鳴っている
ナレーター:法師は携帯のストラップにつかまってあたりを見回している。若くて綺麗な女がきて法師がつかまっているストラップを見る。
姫子「あ、これ、可愛い」
ナレーター:女は法師ごとストラップをレジ
へ持って行って買って自分の
バッグに入れる。



ナレーター:「女の家はすごい豪邸。歳は20
代前半。女は自分の部屋に入っ
てバッグの中からストラップ
と法師を机の上に出す」
法 師「ぼく法師っていいます」
姫子「あ、しゃべった!」
法 師「しゃべるだけじゃなくて、動けるよ」
SEタップダンスを踊っているよう
な音
姫子「へー、すごいね。こんにちは、わたし
姫子っていうの。あなたはどこから来たの
かな?」
法 師「ぼくはホンダのアシモの弟分だよ。
非売品だけどあのときはたまたまストラッ
プ売り場で遊んでいたのさ。レジの人はな
んにも知らなかったからもうかったね」
姫 子「えー、超ラッキー。法師君はずっと
姫子の所にいてね」
法 師「うん、もちろんいるよ」



   SEタイプを打つ音や電話がかかって
くる音
姫 子「この会社はね、お父さんの会社なの。
わたし、ここでお父さんの秘書やってるの
よ。この会社は表向きは株や債券の売買や
ってるんだけど、裏では会社の乗っ取りな
んかやってる。だから、時々恐そうな人が
来るからイヤなの」
法 師「だいじょうぶだよ、ぼくがついてる
から」
姫 子「ありがとう」
   SEドアの開いて閉まる音
万田銀次「おい、姫子。あと2時間後に炭素
工業の清久社長が、その後に丸広組がく
るから、来たら理事長室に通してくれ」
姫 子「わかった。ところで、ねえこれ可
愛いでしょ。ホンダのアシモの次世代機だ
って」
法 師「こんにちは、ぼく法師っていいます」
万田銀次「ほー、二本足でちゃんと動くじゃ
ないか、ホンダもやるな。じゃ、わしはち
ょっと出てくるからな」
姫 子「どこへ行くの」
万 田「コーヒータイム」
   SE歩いて部屋を出て行く音
姫 子「どうせ女の人のところへいくんだわ。
あら、法師。危ないわよ、パソコンであそ
ぶの。あら、消えちゃったわ」
ナレーター:「法師がパソコンの画面をすべり台がわりにしてすべっていると突然画面の中に入ってしまいました」
姫 子「あら、どうしたの、どこへ行ったの。
あー、パソコンの中で手を振ってる。パソ
コンの中で自由に動けるんだ。へー、面白
い。あ、また画面から消えちゃった。どこ
に行ったの」
   SEパソコンのキーを打つ音。数人の男達が部屋の中で株やFXの売り買いをしている
社員1「おい、ハナタレ銀行を1500円で
20万株の売りだ」
社員2「了解。注文だしました。すいません、ちょっとトイレ行ってきます」
ナレーター:「社員がトイレに行ったパソコンの中に法師が顔を出しています。何するんでしょう、株の売り注文の数字をいじっています。1500円の0を二つ消しました。え、そんなことしていいのですか。あ、すぐに取引成立したようですね」
社員2「ふー、さて、どうなってるかな。え、
そんなー」
ナレーター:「3億円で売れるはずが法師のいたずらのせいで300万円になってしまったようです」



そば屋の出前「へい、おまち、上カツ丼五つと特上カツ丼一つですね。毎度ありー」
理事1「あ、ご苦労さん。代金は入り口の受付でもらってね」
ナレーター:「万田の会社の理事五人と万田が理事室に集まって何事か相談をしています」
万田「世界の炭素工業といってもさすが
に今回の暴落にはこたえたろう。社長の清
久が社内留保金の30億もってきて10%
でまわしてくれと言ってきた。さあ、これ
を手掛かりにあの会社をどうするかだ」
理 事1「会長、中国の帝国公司がひどく
炭素工業をほしがっていますねん。手数料
は売買代金の10%でどうかと言ってきて
ます」
理 事2「会長、あそこの取締役のほとん
どをこちらに抱き込んでいます。あとは役員会で清久の解任動議を出せば、清久を追放できます。」
万田銀次「今のところ順調やな。清久さえ追
放できればあとはこっちのもんや。みんな
気張ってや」
理事全員「へい」
万田「う、なんかおかしいな」
ナレーター:「万田、部屋の周囲をキョロキョ
ロ見回している」
理事1「どうかしましたか、会長」
万 田「いや、だれかに見られているような気がしたもんでな、なに気のせいさ」
ナレーター:「部屋の隅のテーブルの上にパソコンが置かれていて、その中から法師が会議の様子をじっと眺めていた」



姫 子「あら、どこに行ってきたの。心配し
たわ」
法 師「どうやらパソコンの内部ならどこで
も行けるようです。パソコンの中に入って
いる情報なら全部みることができるよ。こ
れから楽しみです」
姫 子「でも、私にはどこにいくのかちゃん
と言ってよ」 
法 師「わかった」 
姫 子「ちょっと待って法師、そのままパソ
コンの画面の中にいてね。そうやってこの
カーソルでホラ、バッグスペースキーでも
ちあげてと。ワアー、面白い。法師をドラ
ッグして色んなとこに置ける」
法 師「姫子さん、カーソルでつつかないで。くすぐったいよ」
姫 子「わかった、わかった。じゃあ、こんどは法師を大きくしてみようかな。法師は今、3cmだから5倍にしてみよ。よし、と。ワアー大きくなった。じゃ、ねえ今度は60倍にしてみたら、どうなるかな、えいっと」
ナレーター:「姫子がキーを押したとたん、1m80cmの大きな法師が画面から飛び出してきました」
姫 子「キャー、」
   SEドサッという音
法 師「ほらほら、姫子こんなとこに寝ちゃだめだよ。おきなよ」
ナレーター:「法師、倒れた姫子をやさしくだきあげる。姫子、法師に抱かれたまま」
姫 子「ワーオ、びっくりしたあー。でも、法師ってとってもイケメンなのね」
法 師「ありがとう、姫子。これから、姫子
って呼んでいいだろう」
ナレーター:「姫子、巨大化した法師を見てウ
ットリ」
法 師「姫子、おれは何歳ぐらいに見える?」
姫 子「うーんと、わたしと同じぐらい、20歳ってところかな」
法 師「だれが見てもお似合いのカップルに見えるよね」
姫 子「そうよ。絶対そうよ」
法 師「姫子、ちょっと買い物に行ってくる
よ」
姫 子「え、じゃあわたしも」
法 師「そう、でも銀座じゃないぜ、新宿の
歌舞伎町だよ」
姫 子「新宿の歌舞伎町でなにを買うの」
法 師「中国人からおれの戸籍と運転免許証
を買うんだよ」
姫 子「おもしろそ」



   SE雑踏の音、呼び込みの声、ゲーム
機の音、パチンコ台の音
姫 子「ねえ、どこでああいう人と知りあったの」
法 師「おれに戸籍を売った中国人のことかい。インターネットで調べたのさ」
   SEドンと人にぶつかる音
法 師「いてっ、気をつけろ」
大国主「すんません」
ナレーター:「歌舞伎町の雑踏の中で法師は大きなずだ袋をかついだ五十代のホームレスにぶつかられる」
大国主「あ、あんたはスクナヒコノ命、わし
じゃ、ほれ、大国主ノ命じゃ」
法師「え、誰。思い出せないんだけど」
大国主「なんじゃ、忘れてしまったのか。ま、無理もない、千六百年も前のことだからな。ほれ、わしとあんたでこの国をつくったんじゃ。出雲の国をな。最初は良かったんじゃが、後から大和の神々がやってきてわしらを追っ払った。どうじゃ、想い出したか、スクナヒコノ命、またの名を一寸法師」
法師「え、ちょっと待ってくれよ。おれにはなんのことだかわからないんだよ」
大国主「前はもうちょっと小さかったが、お前の顔は忘れはしない。なんせわしの相棒だったからの。わしは今、全国を流れ歩いて、長い眠りについている地方の神々をおこして話をしているのじゃ。もう一度国を作り直そうってな」
黒服「おい、じいさん」
ナレーター:「大国主の後にソープランドの黒服とソープ嬢らしい女がたっている」
大国主「イテッ、そんなに強く掴まなくても逃げませんよ」
黒服「あんたのしょっている袋の中身がみたいんだよ」
ソープ嬢「こいつだよ。昨日お店の裏をウロウロしていたのは」
大国主「袋の中は空き缶だけですよ」
黒服「まあ、とにかく見せてもらうよ」
   SEガラガラと空き缶が転がる音
ソープ嬢「あ、あたいのブラだ。このホームムレスのエロじじい、もう信じらんない!」
黒服「おい、これはどういうことだよ、じいさん。ちょっと、警察までつきあってもらおうか」
法 師「まあ、まあ、お兄さん。こいつはちょっと知り合いなもんで、ここはひとつおんびんに。これでおさめていただけませんか」
黒服「急になんだよ、これって万札じゃん。お、すげーな。二十枚ぐらいあるぞ。ま、こんなホームレス、交番に連れて行ってもおまわりさんが迷惑するだけだからな。じゃここはそっちにまかすよ」
ソープ嬢「なによ、警察につれていくんじゃなかったの。ねえ、どうすんのよ」
黒服「うるせー。ブラジャーは戻ったんだろ。それでいいじゃないか」
ソープ嬢「あ、じじいがいなくなった。ちくしょー」



万 田「おい、姫子いるのか。お茶をたのむ
ぞ」
万 田「すいません。秘書のくせに時々消えちゃうものですから」
清 久「まあ、いいじゃないですか。それより、本題にはいりましょう」
ナレーター:「炭素工業の社長、清久郁三と万田銀次が理事長室で向き合って座っている」
万 田「それじゃあ、この30億を1年間預
からせてもろうて33億にしてお返しすれ
ばいいんですな」
清 久「ああ、それでお願いします」
万 田「社長、この金は内部留保金って聞き
ましたけど、会社のほうはだいじょうぶで
っしゃろな」
清 久「炭素工業は私が30年前に作った会
社です。だれにも私は指図を受けません。
大丈夫です」
万 田「それじゃあ、ここにサインをおねが
いします」
   SEサインをする音



ナレーター:「同じ理事長室で一時間後、
丸広組の幹部二人と万田が話し合っている」
幹部1「さっき玄関ですれ違ったのは炭素工
業の清久じゃないの。けっこうあんたんと
こ商売繁盛しておりますなあ」
万 田「それでどういうご用件でっしゃろ」
幹部2「その炭素工業の話さ、中国の帝国公司が炭素工業をほしがっていて手数料は売買代金の10%っていう話に俺たちも一口くわえてもらいたいのさ。5%でいいよ、俺たちは」
万 田「そんなガセネタどこで拾ってきたん
ですか。わたしは知らんです」
幹部1「万田さん、あんたは気がついていな
いだけのことなんですよ。あんたと我々は
もう実質的にパートナーになっているんで
す。あんたとこの理事が炭素工業の取締役
に言うことをきいてもらうためにうちの若
いモンを使ったんですよ。だから、わしら
には情報が筒抜けということですよ」
万 田「急にこられて、もうけの半分よこせ
なんて随分とかってな話でんがな」
幹部2「こら、万田!ぐちゃぐちゃ抜かして
ると痛い目に遭うぞ」
幹部1「万田さん、今はどこでも苦しいんで
すよ。苦しい時はお互い様。あのリーマン
ショックの時もあんたのとこが苦しいって
ゆうから私は10億貸してあげたじゃない
ですか。今は私の所も苦しい。そういう友
達がいのないことを言うのなら10億引き
上げざるをえませんね」
万 田「わ、わかった。5%でいい」
幹部1「やっぱりわかってくれましたね。パ
ートナーはそうでなきゃ」



   SE茶碗が床に落ちて転がる音
万 田「バ、バカヤロウ!テメーラのせいで
もうけが半分になったんだぞ」
理事1「し、しかし、ちんぴらを使えといったのは会長のご指示ですので」
万 田「ちんぴらを使ってもいいがなんで情報までわたすんだ。相手は暴力団なんだぞ。もういい、明日の段取りはだいじょうぶだろうな」
理事2「は、午後1時から炭素工業の臨時役員会が開かれましてそこで清久社長の解任動議がだされます。理由は内部留保金の30億を無断で個人的に流用したということです」
万 田「うまくいくんだろうな」
理事1「はい、だいじょうぶです。清久を除いた全員一致で解任動議が可決されます」
万 田「よし、今日はこれでお終いにしよう。みんな帰っていいぞ」
理事12「はい、失礼します」
ナレーター:「社員は帰ったので万田も帰ろうとして理事長室から出てくる。社内では社員が一人残ってパソコンを打っている」
   SEパソコンのキーを打つ音
万 田「よー、ごくろうさん。 うん、君は
みかけない顔だなあ、誰だっけ」
ナレーター:「法師パソコンからゆっくり立ち
上がる」
法 師「いやだなあー、一度会っているじゃないですか、秘書室で。よく見てくださいよ」
万 田「え、まさかあの一寸法師か。そんな
はずはないだろう」
法 師「当たりだよ。あの一寸法師さ。でか
くなったのでびっくりしてるのかな。一寸
法師はでかくなって当たり前。そうならな
きゃストーリーにならないだろ。」
万 田「その一寸法師がここでなにをしてい
るんだ。」
法 師「あんたの遺言書を書いてるのさ。も
うできあがったよ。見るかい。ほら」
万 田「なんだこれは。破産したので自殺し
ます。なんの冗談だ。おれは破産なんかし
ていないぞ」
法 師「それが今破産したのさ。あんたの金
は全部俺がいただいた。だからあんたの金
は今財布にあるだけ。残っているのは借金
だけさ」
万 田「き、きさま!いったい何者なんだ」
法 師「まだわかってないなあ。おれは一寸
法師、おまえは一寸法師に退治される鬼な
んだよ。心配するな姫子はおれが面倒見る
よ。」
万 田「ふざけんな。なめたことばかりいいやがって」
   SEドスン、ドスンという音。スチール机がガタガタいう音
ナレーター:「万田、一寸法師にとびかかっていく。一寸法師はもみあいになるが、うまくベランダのほうに万田を誘導していく」
法 師「お仲間が地獄で待ってるってさ。じゃ、お祝いの電気ショックだ」
   SEバチバチという音
万 田「ギャー」
ナレーター:「電気ショックでのけぞった万田の体を十階のベランダから突き落とす」
   SEドサッという音
   SE救急車のサイレンの音



   SE静かなクラッシックの音楽が流れ
ている
ナレーター:「姫子机に向かってほおづえをついている。その後ろに法師が立っている」
法 師「お父さんの事、お気の毒です。」
姫 子「お父さんがいつかはこうなることは
わかっていたわ。でも、お母さんは私が小
学生の頃に死んじゃったし、兄弟もいない
から本当にひとりぼっちになっちゃった。
これから、どうしよう」
法 師「だいじょうぶだよ。ぼくがついてい
るよ」
姫 子「ありがとう、でも、この家も抵当に
入っているから、明日から住むところがな
くなっちゃうから、ホームレスになるのか
な」
法 師「六本木ヒルズに僕の部屋があるから
よかったらそこに住まないかい」
姫 子「うれしい、ほんと」
法 師「ついでに結婚しちゃえば、ヒルズに
ずーっと住めるよ」
姫 子「それって最高!いいわあ」



   SE電話が鳴る。それに組の者が応対
している
ナレーター:「ここは丸広組の事務所。十数人の組員がたむろしている」
組員1「兄貴、死んだ万田の娘の婚約者っていうのが来てるんですが」
幹部1「ほう、まあちょうどいい。こっちから出向いていこうと思っていたんだ」
   SEドアが開いて閉まる音。コツコツと歩いてくる音
幹部1「ようこそ、あんたが万田会長の後を
継いだんだって」
法師「そうだよ」
幹部1「若いねー、二十二、三ってところか
な。立派な後継者ができて万田会長もよろ
こんでいるだろう。で、ご用件は」
法師「事業を引き継いだんで丸広組とのこと
も調べさせてもらったよ。だいぶ非合法的
なことをやってるね。覚醒剤、売春、企業
乗っ取り、新しいところじゃ貧困ビジネス。
ホームレス千人集めて一人あたり月に十五
万生活保護費からピンハネしてるね。一年
で十八億、荒稼ぎだね。もうここいらで十
分でしょう。この組は解散したほうがいい」
幹部1「いきなりやってきて、解散しろ、ですか。あんたもいい度胸しているね。(笑い)ヤクザが非合法ビジネスやらなくて何やるの。だいたい、貧困ビジネスだっておたくの万田会長がもちかけてきたんだぜ。そっちがそう言うこと言うなら、貸した百億返してもらおうか」
法師「十億じゃなかったっけ」
幹部2「世の中には利子っていうものがあるんだよ。貸したお金も増えていくの、坊っちゃん」
男全員「あっはっはっは」
法師「金は返さないよ」
幹部1「ということになると、お宅の会社をいただく事になるけどね」
法師「会社も渡さないよ」
幹部2「じゃあ、どうしようっていうの」
法師「君たちには神のさばきを与える」
幹部2「お前、ちょっとおかしいんじゃないの」
法師「君達が全員死ねばいいんでしょ。そうすれば金を返す相手がいなくなる」
幹部1「(笑い)あんた正気か。この部屋には十人以上の人間がいるんだぜ。そして全員ヤクザもんだ。あんた一人でどうするっていうの」
組員1「おい、こら、ヤクザをなめてるのか。おとなしく会社を渡すんだ」
法師「今日は歩行者天国の日だよね」
組員1「テメー、わけのわからない事ばかりいいやがって」
幹部1「どうもわかってないようだから、ちょっと教育してやれ」
全員「へい」
法師「時間です」
幹部1「ギャー」
幹部2「おい、兄貴が黒こげになったぞ」
組員1「あいつの手から火花が出た」
組員「うわー」
   SEバーンという拳銃の音
幹部2「チャカはだめだ。同士討ちになる、ヤッパでやれ」
組員「ギャー」
法師「捕まえてごらん」
組員1「ヤッパが素通りする、ヤッパがきかない。ギャー」
幹部2「半数以上やられたぞ、化け物だ、こいつは」
幹部2「近寄るな、ギャー」
   SEパトカーと救急車の音。
警官「はい、事件現場は新宿区の暴力団丸広組事務所。死亡者十五名。全員丸広組組員です。日本刀をもって死んでいるものもいてどうやら抗争事件のようです。ただ、全員黒こげになっていてまだ死因がはっきりしません。以上です」



   SE BGMでしずかなピアノ曲が流れている
法 師「結婚、それともヒルズに住むことど
っちが最高なんだい」
姫 子「結婚のほう。結婚てしたことないか
らわかんないけど、お母さん死んでからず
ーっと一人という感じだったから家族を持
ちたいわ」
法 師「結婚すれば家族を持てるよ。名字も
変える必要はないよ。おれは万田法師にな
るよ。実在する万田家のあるじさ」
姫 子「パソコンの中に消えて戻って来なかったら」
法 師「そんなことあるわけないだろ」
姫 子「結婚式どうする。教会であげるのそ
れともどこかのホテル?」
法 師「神前結婚でいいんじゃないか。子供
ができたらまたお祝いにいくんだから。 
ヒルズに住んでいることが本当に生きてい
ることを実感させる。おれの成長はここで
止まるんだ。これ以上歳をとる必要はな
い。」
姫 子「だめよ。わたしといっしょに歳をと
っていってよ。そうしないと私だけがお婆
ちゃんになる。」
法 師「ハハ、それもそうだな」



   SE軽いポップス調のBGMが流れて
いる
ナレーター:「ホテルの大広間で結婚式がおこ
なわれています。新郎は一寸法
師、新婦は姫子。100人ぐら
いの参列者がいます」
   SE出席者達のざわめきが聞こえる
司 会「式はとどこおりなく進んでおります
が、ここでお知らせしなければならないこ
とがあります。ご存じの方も多いとは思い
ますが、新婦のお父様、銀次様は2ヶ月前、
お亡くなりになっております。ここにあら
ためてご冥福を祈り、お二人の幸せを天国
から見守っていただきたいと思います。で
は次に新郎より会場のみなさまへ御挨拶が
ございます」
法 師「えー、ご来場のみなさん、本日は私どもの結婚式に来ていただき、天国にいる万田銀地ともども御礼申し上げます・・・」
ナレーター:「式は順調に進んでいき、後ろの
スクリーンが開き二人が付き
合っていたころの写真やビデ
オが流れ始める」。



   SE赤ちゃん用のガラガラの鳴る音
   SEかすかな鼾の音が聞こえてくる
巌「やーっと寝てくれましたねー。ママは隣の部屋で鼾かいてねてますよー。これが結婚生活っていうものなんですよー」
ナレーター:「巌、ぐちを寝ている赤ちゃんに言いながら、ちらかっているベビーフードを戸棚にしまおうとしてそこにあるゲーム機に気が付く」
巌「あれ、ゲーム機付けっぱなしだ。なんか結婚式みたいのが写ってるな。ママが新しいソフトでもいれたのかな。とにかくこれはゲームオーバーにしなくちゃ」
   SEバチッという音

ナレーター:「と巌はスイッチをオフにした」



   SE会場のざわざわしている音
法 師「今、ここにおいて亡き父、銀次の遺
志を受け継いでハゲタカファンドを世界的
な企業にしていくことを皆さんの前で誓い
ます」
   SEパチパチと会場内から拍手の音
SEバチッという音がする
姫 子「キャー、法師が消えた」
SE会場内がどよめく
ナレーター:「法師の写真がスクリーンに映っていたが、突然、ゲームオーバーの文字が大きく映し出されるとすぐに暗転した。と同時に法師の姿が消えてしまった」



       終

ゲーム版一寸法師

ゲーム版一寸法師

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-01-06

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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