イタズラ天使とおくびょー悪魔
プロローグ
世界は幸福と不幸で満ちている。
恋が成就し幸せな者もいれば失恋し不幸な者もいる。
仕事が成功する者もいれば失敗する者も。
そして、今日が幸せなものでも明日は不幸になるかもしれない者もいればその逆もいる。
この世の中の人々はそうやって生きている…
そして日本の神奈川県に住むある少年もそうやって生きてきたのだが、ある日を境に全てが変わった。
今回はそんな少年と彼の周りで起きた不思議な出来事のお話……
第一章 平凡な日常
君達は、自分の人生を幸せだと思うかい?
僕は自分の人生を幸せだとは思わない。かといって不幸とも思わないんだ。
なんと言ったらいいか分からないけど、とにかくそんな宙ぶらりんな状態だ。
朝起きて、ご飯食べて、学校行って、帰ってきてご飯食べて、寝る。
それの繰り返し。代わり映えの無い日常を繰り返していると考えれば不幸かもしれない。
でも、学校で友達と話したり、好きな教科を勉強している時はちょっぴり幸せだと感じる。
総合的に見て、僕の人生は平凡なんだろう。
まあそれで困ることも無いし、よしとしよう。
「おいーーす」
突然背中を叩かれた。振り返らなくとも誰かは直ぐに分かった。悪友の木村悠一だ。
「遠い目してどしたん?」
相変わらずな能天気な声と笑顔を見ると自然と可笑しくなって、くすりと笑ってしまった。
「何でもねーよ」
そう言いさっき駅の自販機で買ったペットボトルの炭酸を一口飲んだ。
「もしかして恋煩いか?そんならこの恋愛王に任しとけ!」
悠一は自分の胸に手をあてながらわざとらしく偉そうに威張った。
「彼女出来たことねーくせに…そんなんじゃねえよ」
ペットボトルの蓋を閉めて歩き出した。悠一はすぐに追ってきて横に並んだ。
「なら、お宝ビデオが手に入らないのか?」
「お前じゃねーしねーよ」
「俺は大漁だぜ」
「あ、そ」
「興味無いのかぁ?」
悠一はニヤニヤしながら言ってきた。こういう場合はこいつはだいたい裏がある。しかしまあ普通に答えておこう。
「ああ」
「そっかあ…残念だったなぁ…せっかく完全新作もあるのに…」
「………う」
そ、それは…見たい…けど…こいつがただで貸してくれるとは思えない……
「興味無いなら貸さなくていいよな」
「…………いくらだ?」
「おっ、話が早いね。じゃあ購買のスペシャルメロンパンでどうだ?」
「人気ナンバーワンのやつじゃねえか」
「安いぐらいだ、手に入れんの苦労したんだぜ」
「くそっ、分かったよ」
「交渉成立」
悠一はそう言うとニカッと眩しいくらい笑顔になった。こいつに笑顔以外の表情あるのだろうか。
そんな事を話していたら学校の方からチャイムが聞こえてきた。
「やべ、遅刻!行くぞ楓!」
「おう」
イタズラ天使とおくびょー悪魔