鑑賞記録-映画「かぐや姫の物語」より
2013年、高畑勲監督。アニメーション映画。スタジオジブリ制作。
あれだけ普遍的でかつ幾度も原作として作品化され尽くした著名な物語を、いまだかつてこれほどまでに“人間かぐや姫”として立ち上げることに成功した例があったろうか。悪まで原作には忠実に、けれどもそれでいて決して飲み込まれずありふれた駄作に逸れることなく、観客がはっきりとは認識しないような細部へのこだわり(まず水彩画のタッチ、でありながら抽象に逃げない細やかで紳士な眼差し、そして微妙な震え)が、奥深さを引きだし、根幹を支えている。
かぐや姫はロングショットでみれば異星人や未来人のような好奇な存在かも知れないが、ひとたびクローズアップすれば一女性として、生活者としての葛藤や紅潮や息づかいを有している。文体では想像しにくいこれらを立体化することで、時代こそ違えど彼女の人間味を感じさせてくれた。
総じて、鳥肌ものの素敵な映画体験であった。竹取りで生計を立てながら野や山や動物と暮らすような質素さとはなかなか縁遠いけれども、どうしたって「如何に生きるか」を模索せねばならない倒錯した時代に私たちはいる。月人として地球で生き抜こうと試みるかぐや姫の姿が、私たちに共鳴し、心をうつのかもしれない。
鑑賞記録-映画「かぐや姫の物語」より