壁
少女に向けられる壁。
近づくなという信号
私は阻まれている。
朝
「おはよ」
誰に向かってでもない、強いて言えば空に向かって呟く。
カタカタカタ…『みんなおはよー!』
ピロン。…『◻︎◻︎からの返信:おはよー!』
カタカタカタ…『◻︎◻︎への返信:おはあり♪』
電波を通じてのコミュニケーションほど楽な物はない。
「ほら!早く支度しなさいな」
お弁当を渡してくる母
それを鞄に入れ、朝食を食べる
変わらない毎日。
「いってきまーす…」
家を出て、バス停へ向かい、席に座る。
二つ停留所を通ると、隣には友達
「おはよ!」
笑顔がどこか遠く見える今日この頃。
周りから見ればきっと他愛のない会話
私は必死に叫んでいるのに。届くように。聞こえるように。
学校。雑談。足音。扉の開く音。笑い声。
最近くぐもって聞こえる。
私もその中の一人ではあるが。
教室の中はよく見るといくつかのグループに分かれていて
それぞれ小屋を作り出している。
そんな気がするだけ。
チャイムの
「おらー!席につけお前らー!」
音。
昼
窓越しの空は曇って見える
雑踏と声の再来。お昼ご飯である
椅子を持って行き、弁当を広げる
なんの変哲もない会話が続く。
やがて男子が走って出て行く。
次の授業の準備をしていると、
近くの席の女子のグループから聞こえてきた会話がこちら。
「最近……ざいよねー。」
「わか…笑顔とか、目と…とらしいっての」
ズクッと痛む心が我ながら情けなく。
席に戻ると、一緒にお昼を食べていた二人が放課後の予定で盛り上がっていた。
…気にしない。
「おい、宿題見せろよー」
前の席の男子が-さきほど出て行った奴。汗だく-
ノートを持って机の上に広げ、写している
「こら、まだ許可だしてないんですけど」
むーっとしてみる。が、あっちは気付いてない様子
「さんきゅーな!」と、戻っていく。
そういえば、もう五分前か。
私はまた静寂に身を任せた。
壁