人生と寿命
Story:01[死神ルト]
平和な時間が過ぎると聞くが、そう思うのはごく一部である
不況というが、別に暮らしに困ってないって人もいるだろうし
お仕置きと呼ばれそれが恐ろしいことだと聞かされた上で
そのお仕置きが恐ろしいか否かは人によるだろう
とにかく、10人中10人が「この遊園地楽しい!!」なんて思わんだろう
まぁ、なんというか……俺はこの世界「つまらない」と思う人間だ
「おもしろい」なんて思う人間がいるかどうかはしらんが……
「しゅ、修之君……えっと」
人気のない体育館裏で俺の前に恥じる女子
同じクラスの亜紀だったか
「……何もないならいいかな」
えっと、あの、そのしか言わない女子
わざわざ体育館裏に呼び出しといて、まったく要件を言わず
ずっともじもじしている
「……もしもだけど、告白とかだったら断るから」
「え……?」
「……なに、図星?」
「あ……えと……」
「じゃあ帰るよ、用ないでしょ」
涙目の彼女をほっといて踵を返し彼女から離れる
カバンを肩に、手はポッケに
体育館の角を曲がったところで2人の女子に足止めされる
「……どいてくれよ」
「あんたってほんと最低だね」
「亜紀かわいそうでしょ?なんであんな態度とるの」
「生理的に無理な相手に好印象を持ってもらおうって思う?」
そういうと怒った表情で俺をにらむ2人をどけて俺の道を行く
背中に2人の視線を感じるが、俺は振り返らない
どれだけ人に嫌われようと、人から軽蔑されようと
俺は一向に構わないし気にもしない
俺はこの世界、および人生がつまらないものだから
いっそのこと……いや、自殺は自分からこの人生に終止符を打つ方法だ
正直それには手を出したくない
嫌いだった親父が取った方法だ
親父はこのつまらない人生に耐えられなかった
俺は自分からは死なない………絶対に
帰路から自分の家に帰ったとき、背中に視線を感じた
あの2人がここまで来ているはずもなく、ふと振り返る
「……気のせいか」
ただ自分の家の前の玄関から門の内側を見ただけだった
不思議に思いながらも玄関を開ける
「ただいま~」
人がいるわけじゃない……
「お帰り修之」
が…?
エプロン姿の母さんがリビングから飛び出してくる
「あれ、母さん今日仕事は?」
「ちょっと休憩できたから、ご飯作ったらまたいくけど」
「そうか…ありがとう」
親父が自殺してから母さんは一人で俺を養ってきた
親父がどんな人間だったか思い出すと
腹の底から苛立ちを思い出してしまう
リビングで料理する母さんの包丁の音を聞きながら
2階へ上がる
自分の部屋に入ると、カバンをかけ服を私服に着替える
ベッドに仰向けに寝転がり今日合ったことを思い出す
学校についたら女子二人から放課後体育館裏にいけと言われる
昼休みには本を読みながらパンを食べていると横から写真を撮られる(?)
放課後には同じクラスの亜紀から告白される
……ふむ、こんな感じだな今日の出来事は……
しょうもない……つまらない……
「修之―――!ご飯できたからお母さん仕事いってくるよ~」
「はーい!わかった」
「ちゃんとご飯食べといてね~」
「はーい!」
玄関が開いて閉じる音を聞き、今、家に一人だと考える
「家に一人か……自由なようで不自由なんだよな」
「とかって独り言できるだけでも自由だと思うね」
「!?」
どこからか女の声が聞こえベッドから跳ね起きる
「だ、だれだ!!」
「くくく、はっはっはっはっは!!」
部屋中、いや、近隣に聞こえているのではないかと思える笑い声
「だれだ!!」
「くくく、だれだろうね~~いいねぇうろたえる姿、3秒たったら後ろみな」
3秒またず後ろを見る
そこは壁だ
「なんなんだよ……」
と思い前を見る
「はろーー」
「うおぉ!?」
前を見るとほぼゼロ距離にさかさまの女がいた、驚いて壁まで下がる
「いいねぇ3秒なんて待てないか、くくく」
コウモリのようにぶら下がった状態からくるっと床に立つ
緑の髪に赤いメッシュ、スーツ姿で手には眼鏡がある
「な、だ、だれだよ!どこから入って……」
「榊原修之君だね……いい男じゃないか」
ニヤついた女の表情にいらだちを感じながらも俺は警戒心を向ける
「そんな警戒すんなや修之君、私は君に良心で近づいてるんだから」
「は?……ていうか、なに勝手に家に入ってんだよ!出てけよ!」
「まぁまぁ…修之君……喜びなよ、君はもうすぐ死ぬ」
「………は?」
突然の言葉に動揺を隠せないでいる
が、すぐに正気を取り戻す
「そんな話信用できるか、泥棒女から言われた話なんて」
「泥棒女~~?失礼なこと言うねぇ、ま、そっか、いきなり言われても信じないかな~~」
「いいから早く出て行けよ」
「くくく、まぁまぁ落ち着きなって、よっと」
机の上に座り眼鏡をかけポケットに手を入れながら俺のほうを向く
なんて態度だ
「とりあえず自己紹介でもしてあげようかな」
「いや、いらないし、はやく出てけよ」
「私の名前はルト、あなたは榊原修之」
「自分の名前ぐらいわかる……ルト?」
「ルト……あなたに死期を伝えに来た…つまり私は死神」
「………し、死神?(笑)」
「そう、死神、死の神、天界の農夫……君はもうすぐ死ぬ、だから来た」
「俺がもうすぐ死ぬって?……いつだよ」
「あら、信じてくれるの坊や」
「信じてなんかねぇよ」
「へへ、いいねぇ…そうだねぇいつ死ぬかは言えないけど……自殺じゃないよ、いやなんでしょ?自殺って」
「……事故るのかよ」
「事故るのかなぁ~~」
変な奴………
「そんな話信じない、はやく出ていけ」
「はぁ~……まぁいいか、私からすれば君に好かれようなんておもわんし……いいよ、帰ってあげる……でも、あうのは最初で最後じゃないからね」
女がニヤついたあと、指を鳴らすと黒い霧になり女は消えた
「!?……あぁ…ゆ、夢か気のせいだ……変なことあるわけない」
自分の頭を数回小突き、リビングに行って晩御飯を食べる
シャワーを浴びてから寝巻に着替えすぐに寝る
きっと疲れているんだ……
今日はいろいろありすぎた……
俺の人生に、山も谷もないだろう
人生と寿命